
最近読んだ本で面白かったものは? と聞かれれば勿論この「深海のYrr」を一番に上げる。
雑誌を除けば月10冊程度の単行本を購入するが、私が読む小説の分野はかなり限定されていて、翻訳本でアクション、サスペンス、スリラーが主でそれに経済、サイエンス、歴史ものが続く。
ダイビングを始めてからは、深海、深層流、海洋、海底火山などの海に関するキーワードに強く反応して、条件反射的にこれらに関する小説は購入してしまう。
「深海のYrr」もそのひとつで、手に取り深く見ずすぐ購入したが、何しろ文庫本3冊合計1500ページにもわたる大作あるため、1ヶ月ばかり部屋の隅に積んどかれていたが、最近、休日をつかって読破しました。
一言で、この本は超弩級の大作である。
ドイツの作者「フランク・シェツィング」が4年もかけてリサーチした分野は「地球科学」「海洋生物」「生態学」「海洋大循環」「プレートテクニクス」「遺伝子学」「石油資源産業」「海洋科学技術」そして「地球外知的文明」など幅広く、本文中にこの膨大な知識がぎっしりと詰め込まれており、又、小説の構成の重み、物語のスケール、どれをとっても破格だ。
物語は、世界中で次々と起こる海難事故、猛毒を発するエビやカニの海洋生物、人間に牙を向けるグジラやシャチ、そして海底にも異変が及び、異常発生したゴカイがメタンハイドレートを崩壊させため、大規模な海底の地滑が起こり、これにより発生した大津波がヨーロッパの都市を壊滅させる。
パニック・サスペンスの序曲としてこれほど連続で大掛かりな仕掛けを施したものは少ない。
一体次に何が起こるのか、まさに手に汗握る展開だ。
キャラクター造型も見事。
物語は、世界中で次々と起こる海難事故、猛毒を発するエビやカニの海洋生物、人間に牙を向けるグジラやシャチ、そして海底にも異変が及び、異常発生したゴカイがメタンハイドレートを崩壊させため、大規模な海底の地滑が起こり、これにより発生した大津波がヨーロッパの都市を壊滅させる。
パニック・サスペンスの序曲としてこれほど連続で大掛かりな仕掛けを施したものは少ない。
一体次に何が起こるのか、まさに手に汗握る展開だ。
キャラクター造型も見事。
主人公の一人、いかにもヨーロッパの趣味人を思わせるノルウェー工科大学の海洋生物学者シグル・ヨハンソンが新種のゴカイが、海底のメタンハイドレード層を掘り続けて、崩壊させていることを見つける。
一方、カナダ西岸では、ホエールウォッチングの船やタグボートがクジラやオルカの群れに襲われるという事件が頻発し、イヌイットの出自を持つことに折り合いをつけられずに悩む生物学者レオン・アナワクが調査を開始する。
このふたりの魅力的な主人公を軸に、さまざまな登場人物が交錯します。
北ヨーロッパ諸国の都市が壊滅するにいたって、ヨハンソン、アナワクら優秀な頭脳が世界中から集められ、母なる海になにが起きているのか、原因を探り始める。
そして彼らは、異変を起こした海洋生物たちが「ある共通の物質」を持っていることを突き止め、そこからひとつの仮説を導き出します。
その仮説とは、人類にとって未知の領域である「深海」への扉を開くものでした――。
世の中には、侵略モノ、地球滅亡モノ、エイリアンモノをテーマにした小説に登場するモンスターは数々あるが、今回創造されたモンスターは知的でパワフルで神秘的で凄い。
このふたりの魅力的な主人公を軸に、さまざまな登場人物が交錯します。
北ヨーロッパ諸国の都市が壊滅するにいたって、ヨハンソン、アナワクら優秀な頭脳が世界中から集められ、母なる海になにが起きているのか、原因を探り始める。
そして彼らは、異変を起こした海洋生物たちが「ある共通の物質」を持っていることを突き止め、そこからひとつの仮説を導き出します。
その仮説とは、人類にとって未知の領域である「深海」への扉を開くものでした――。
世の中には、侵略モノ、地球滅亡モノ、エイリアンモノをテーマにした小説に登場するモンスターは数々あるが、今回創造されたモンスターは知的でパワフルで神秘的で凄い。
たんなる大災害モノに終わらず、深海の神秘と恐怖を縦横に堪能させてくれる。
そしてなによりもこの小説の面白さは、未知なる深海を魅力的に描いたことである。
海は地球の70%以上を占めているにもかかわらず、私たちは海のことをほとんど知りません。
深海というと海の特別な場所という気がしますが、そうではありません。海の平均水深は約3800ンメートルですし、90%以上の海域で、海底までの水深は200メートル以深の深海です。
この地球上の身近な広大な部分は、宇宙空間よりも解明が進んでいないといわれる未知の領域です。
今回の小説でも大きな脇役として登場している、深海をゆっくり流れている深層海流についてもよく分かっていません。
地球上でただ2箇所、北大西洋のグリーランド沖と南極のウェッデル海で、塩分濃度が高く冷えた海水ができます。するとその重さにより海水が沈み込み、水深数千メートルに達します。これが深層流の始まりです。
深層流はその後、海底の地形に沿って世界中の深海をめぐります。その流れの速度は遅く、毎秒数ミリメートルから数センチメートルで、沈み込んでから湧き上がるまで約2000年もかかる深層部分は深層大循環といわれている。
この深層海流は低緯度(赤道付近)から高緯度(北、南極付近)に熱を運び、地球の気候を穏やかにする役割をしているが、最近、極部の温度が上昇し、氷が溶け、海水の塩分濃度の低下と温度上昇で、深層海流の沈み込みが弱くなっているとの事。
長い時間をかけ、地球の気候を穏やかにしてきたシステムを、我々のエゴのため近い将来の地球を壊し始めている温暖化の問題の根深さと怖さを改めて思い知らされる有意義な小説でもありました。
皆さんにも未知の深海にふれ、深刻化する海洋汚染を考える意味において、是非ご一読お勧めします。
今回の小説でも大きな脇役として登場している、深海をゆっくり流れている深層海流についてもよく分かっていません。
地球上でただ2箇所、北大西洋のグリーランド沖と南極のウェッデル海で、塩分濃度が高く冷えた海水ができます。するとその重さにより海水が沈み込み、水深数千メートルに達します。これが深層流の始まりです。
深層流はその後、海底の地形に沿って世界中の深海をめぐります。その流れの速度は遅く、毎秒数ミリメートルから数センチメートルで、沈み込んでから湧き上がるまで約2000年もかかる深層部分は深層大循環といわれている。
この深層海流は低緯度(赤道付近)から高緯度(北、南極付近)に熱を運び、地球の気候を穏やかにする役割をしているが、最近、極部の温度が上昇し、氷が溶け、海水の塩分濃度の低下と温度上昇で、深層海流の沈み込みが弱くなっているとの事。
長い時間をかけ、地球の気候を穏やかにしてきたシステムを、我々のエゴのため近い将来の地球を壊し始めている温暖化の問題の根深さと怖さを改めて思い知らされる有意義な小説でもありました。
皆さんにも未知の深海にふれ、深刻化する海洋汚染を考える意味において、是非ご一読お勧めします。