
今朝(28日)の日経新聞に
「米下院、温暖化対策法案を可決 根強い懐疑論、成立は難題」
米下院が26日、温暖化ガスの削減目標を盛り込んだ温暖化対策法案を可決した。
環境対策と雇用創出の両立を目指すオバマ政権にとっては「勝利」だが、7票差という小差での可決は、温暖化対策に懐疑的な米企業・社会の実情を映す。
上院での審議は難航が予想され、ポスト京都議定書の国際交渉にも影響を与えそうだ。
「企業や国民に負担を迫る悪法」(共和党のベイナー下院院内総務)との見方は根強い。」
とあった。
京都議定書から離脱したブッシュ前政権からの転換を図り、「クリーンエネルギー」先進国を目指すオバマ政権にとって、
大きな前進となったが、企業よりの議員からの反対も多く予断が許さない状況だという。
最近読んだ、トーマス・フリードマン著の「グリーン革命」は、
単なる環境問題やグリーン革命の技術論ではなく、
アメリカ社会を復興させるために、なぜグリーン革命が必要なのかを説き、アメリカの政治論、政策論に焦点をあて、
オバマ大統領が進める「グリーン・ニューディール政策」も大いに参考にされ、
かつ、全米で既に100万部突破する大ベストセラーとなって、多くの人に感銘を与え、
世界のエネルギーをがぶ飲みするアメリカ式生活様式に警告を与えたというのに、
アメリカはまだ「グリーン」を進めるに戸惑い、躊躇があるというのだろか。
「グリーン革命」の原題は「熱く、フラットで、込み合った」世界であり、
著者は地球温暖化と、世界各国でミドルクラスの急激な勃興と、急速な人口増加が一気に重なり、
私たちの地球は不安定になり、これら三つの動きが重なり合って、以下の五つの深刻な問題が引き起こされていると論じている。
1.供給が細りつつあるエネルギーや天然資源への需要の増大。
2.産油国とその独裁者への莫大な富の集中。
3.破壊的な天候異変。
4.電力を持つものと持たざるものを二分するエネルギーにおける貧富の格差。
5.生物多様性の破壊だ。
世界の総人口は、1995年の30億人から現在は60億人2050年には90億人に増加すると推定され、さまざまな課題が生ずるが、このことよりもはるかに重大なのは、フラット化によりアメリカ的な生活を望むミドルクラスの急激な増加である。
著者は大変分かりやすい説明をしてくれている。
アメリカをエネルギーの一ユニットと考え、
つまり、一人当たりの収入が一万五000ドル以上で、コンシューマリズムの傾向を強めている三億五000万人の集団を一“アメリカム”とすると
長年世界にはたった二アメリカムしかなかった。
・・・一つは北米、もう一つはヨーロッパで、アジア、中南米、中東では、アメリカ風の生活を営む地域は、それぞれ孤立した点として存在するだけだった。
現在は、アメリカムが地球のあらゆる地域で形をなしつつある。
中国は一アメリカムを生み出し、つぎの一アメリカムを胎内に抱いていて、2030年にはそれが生まれる予定だ。
インドも一アメリカムで、やはり2030年にはもう一アメリカム増える。
シンガポール、マレーシヤ、ベトナム、タイ、インドネシア、台湾、オーストラリア、ニュージランド、香港、韓国、日本が一アメリカムをなし、
南米の一部と中東を足すと一アメリカムになる。
だから、いま二アメリカムの世界は、2030年には七、八アメリカムの世界になる。
アメリカの国民一人当たりのエネルギー消費の平均は、一日あたり23万カロリーに相当するという。
これは平均的なアメリカ人は、人間が生物として必要とするだけのもの100人分を消費している。他の先進国の平均的な国民は50人分を消費する。
それに引き換え、中国やインドの現在の国民はアメリカの九分の一ないし三十分の一である。
アメリカがこのままでいいはずがない。
クリーンなエネルギーに転換するとともに、がぶ飲み消費生活スタイルをまず変えなければならない。
そのため、何より重要なのが、これを指導する政治家である。
まず、アメリカが立ち上がり、決断し、実行しなければならない。
アメリカの動性が世界に影響するのだ。
著者はアメリカ国民に、グリーンは巨大なチャンスであり、義務でもある。
グリーンを再定義することは、アメリカを再発見し、再生し、再建することに他ならない。
つまりアメリカを根本的に造り替えることを求めている。
そして、私たちは、過去から借りた時間や財産を食いつぶして長い間生きてきた。
これからは、自分の国、自分の星のため、せっせと働かなければならない。
残された時間は少なく、賭けられているものはあまりにも大きく、これほど困難なプロジェクトはない。
その報いも又、とてつもなく大きい。
と結んでいる。
「グリーン革命」 上下 トーマス・フリードマン著
日本経済新聞出版社刊 各1900円