
最近やたらと「モラトリアム」という言葉が新聞紙上をにぎわしている。
「モラトリアム」Moratoriumには次の意味がある。
1 支払猶予。
法令により、金銭債務の支払いを一定期間猶予させること。
戦争・天災・恐慌などの非常事態に際して信用制度の崩壊を防ぎ、
経済的混乱を避ける目的で行われる。
2 製造・使用・実施などの一時停止。核実験や原子力発電所設置
などにいう。
3 肉体的には成人しているが、社会的義務や責任を課せられない
猶予の期間。また、そこにとどまっている心理状態。
勿論、現在飛び交っている「モラトリアム」は1項の支払猶予を意味している。
「モラトリアム」という言葉に対して、
私は、政府が並々ならない状況に際し、種々対策を講じたが、万策尽きて、壊滅的な混乱を回避するために、
やむなく強権を発動するもので、
その発動自体が社会機構の危機的な状況をイメージするのだが。
私が子供のころ、親が子供と遊びながら、怖がらせるとき、
私の母親は「お化けだゾ!」という言葉の変わりに「モラトリアムだゾ!」という言葉をよく使っていた。
また、都合悪くなると「モラトリアム発動」という言葉もよく発していた。
母親は自分の経験から、
「モラトリアム」は恐ろしく、怖いもの、そして一方的なものとして体験していたので、このような言葉を使ったのではないかと思う。
子供のとき「モラトリアム」の意味は分からなかったが、何か怖いものという意識を持ったことは事実である。
ならば、客観的に、もう少し「モラトリアム」の意味調べてみよう。
Wikipediaによると
「国家が法令によって民間や国家の債務の支払いを一定期間強制的に猶予させる措置をいう。「支払猶予」と訳され、その目的は信用秩序の維持である。
歴史上、日本では1923年(大正12)の関東大震災のときに震災地に限定して30日間、
1927年(昭和2)の金融恐慌では全国的に3週間の支払猶予令が出された。
またアメリカでは、大不況の1933年に国内的なモラトリアムが実施された。
国際的モラトリアムとしては、1931年に政府間債務に対して行われた「フーバー・モラトリアム」がある。
しかしながらモラトリアムは、今日の民主主義の時代には考えられない措置であるから、まさに歴史上の事柄といえる。
やはり、歴史的に見ても非常時だけの措置なのだ。
それが、最近、民主党に政権が交代したドサクサに紛れ、変なオジサンが出てきてしまった。
庶民の味方、「白馬童子」を気取っているのか、単なるパーフォマンスなのか、いとも気楽に「モラトリアム」を口にし、嘘か本気か、実行しようとしている。
確かに、昨今の経済危機に端を発した長引く不況で、中小企業・零細企業は体力を疲弊しており、年末の「年越え資金調達」もままならぬ状況だとか。
また、耐震強度偽装事件で国が建て替えの支援対象としたマンション契約者は、生活再建に向け「二重ローン」を強いられ、苦しんでいるのも事実です。
一方、貸し手側から見ると中小企業や個人の債務を一定期間返済猶予するということは、貸し手である金融機関にとって、その間、収益が悪化することを意味する。
国内の中小企業向け融資や住宅ローンの残高は300兆円近くある。
金融機関の融資全体の約7割だ。
特に地域経済に密着した地方の中小金融機関ではその比率が高い。
金融機関の儲け(利幅)が仮に1%だとすると、モラトリアム制度の新設により全体では年間3兆円(300兆円×1%)もの減収につながることになる。
この負担は誰がするのだろうか、銀行だろうか、国の負担として、更なる借金を次世代に残すのだろうか。
返済猶予により収益機会が失われるだけでなく、融資が焦げ付き、損失となる可能性もある。
金融機関の業績が悪化し破綻するようなことになれば、影響は預金者や景気全般にも波及する。
猶予の制度化が、新規融資の手控えにつながる恐れさえある。
既存の貸付契約について、国が銀行に対し、強制的に猶予に応じさせることが可能かどうか不明であり、
返済猶予の対象企業をどう線引きするのか、猶予後に倒産などで回収不能となった場合の損失どうするのか、
制度を設計する上でも難題は山積している。
なぜ、このオジサンは突飛に「ムラトリアム」と言い出したのだろうか。
個別に本当に困っている人を、政府が救い上げ援助する方法はないのだろうか。
多分個別に政府が対応すると、手続き、審査などに多大の労力を必要とするため、一律「猶予」とする、安易で愚策な方法を言い出したのであろう。
久々の「権力」で有頂天になって、実力を示そうと躍起になっているのだろうか。
鳩山さんはなぜこのオジサンを閣僚にしたのだろうか、早く手を打たないと・・・
「鳩山政権は企業経営に介入する」「国家統制色が強い」とのメッセージを発し、国内外からの不信を招きかねない。
写真は昭和2年の昭和金融恐慌の様子(Wikipediaより)