
年末を控えて、最近、未来を予測する雑誌などが多く出版されているが、
100年予測・・世界最強のインテリジェンス企業が示す未来覇権地図と銘打ったチョット長丁場の世界予測をした本を見つけました。
この本は、各国政府、軍機関、多国籍企業、ヘッジファンドなどを顧客に抱え、
「影のCIA」と呼ばれるインテリジェンス企業ストラトフォーのCEOジョージ・フリードマンが書いた長期未来予測である。
著者は「(未来を予測するに)水晶玉などを持っていない、その代わり、不完全かもしれないが、過去を理解し未来を予測する上で、
これまで確かに役立ってきた手法を持っている」とまえがきに述べている。
ここでいう手法が「地政学」である。
「一国の地理を把握すれば、その国の外交政策が理解できる」と、かのナポレオンはこう言ったとか。
地理的条件から、国際政治の戦略を考える学問が地政学である。
地政学では国家の性格や国家間の関係が、「地理」に大きく左右されると想定するもので、その地理がそこに住む個人や地域社会に大きく影響を及ぼすのだ。
それでは、この地政学を考慮した、著者の未来予測は
主要項目はこうだ
・21世紀はアメリカの時代になる。
・中国は内部分裂で世界的国家になることはない
・ロシアは再びアメリカとの冷戦に突入、しかし旧ソ連と同様に自壊
・日本、トルコ、ポーランドが新たな覇権国として台頭する
・海洋、そして宇宙を制する者が覇者となる
・2050年頃に勃発する世界戦争は宇宙戦争である
・21世紀後半のアメリカの脅威は隣国メキシコである
とある。
中国では人口の大半が沿岸部住んでおり、地域により大きな格差があり、政治的な安定は、大きな成長が維持出来るかにおおいに依存する。
急激な経済成長が永久に続くことは、経済の基本原則を無視することであり、2020年代にはこれまでのような成長に破綻をきし、
不景気が社会不安を起こし内部分裂を始めると著者は予測している。
日本に関しては、島国で、人口が多く、経済規模が大きな日本は、今後も強くあり、
2020年頃からアジア進出を目論むだろうと予想している。
平和主義を掲げる日本だが、増長するアメリカが日本の産業の原材料確保を脅かしたとき、軍事的に積極的な国家にガラッと変身するという。
日本の現在の平和主義は永遠の原理ではなく順応性のあるツールに過ぎないと指摘している。
「日本が大きな社会変革を経ても基本的価値観を失わずにいられるのは、文化の連続性と社会的規律を併せ持つからである。
短期間のうちに、しかも秩序正しいやり方で、頻繁に方向転換できる国はそうない。
日本にはそれが可能であり、現に実行してきた。
日本は地理的に隔離されているため、国家の分裂を招くような社会的、文化的影響力から守られている。
その上日本には、実力本位で登用された有能なエリート支配層があり、その支配層に進んで従おうとする、非常に統制の取れた国民がいる。
日本はこの強みを持つがために、予測不能とまでいかなくても、他国であれば混乱に陥るような政策転換を、なんなく実行することができる。」
と日本を分析している。
又、トルコに関しては、トルコはアラブ世界、イラン、ヨーロッパ、旧ソ連圏、そして何よりも地中海に容易に出ることが出来る戦略的にも重要な地理的な有利さ生かし、
今後大きく発展して2020年代には世界の十指に入る経済規模の国となっている。
2040年代にはエネルギー不足&少子高齢化による労働力不足に悩む日本は、地域覇権国を目指す以外に道はなくなり、軍国色が強まる。
日米は利害関係で対立、アメリカは同じく日本を警戒する韓国&中国と手を組む。
これに対し日本は大国に成長したトルコと同盟を結び対抗する。
さらに、本書では2050年代のアメリカと日本との宇宙戦争、その結末は・・・・大変興味深い未来が記述されている。
日本が21世紀の主要国家のひとつであり続けるという話はなんだか嬉しい内容であるが、著者は100年後の地球温暖化の影響については触れていない。
地政学より温暖化の影響を予測するのは無理な事なのかもしれないが、あくまでも我々が住む地球が健全であることが大前提での予測のはずだ。
話が変わるが、それにしても先日閉幕したCOP15にはがっかりだ。
傲慢で、独善的で、自分のことしか考えない中国にあそこまで牛耳られるてしまうとは。
中国は、高い経済成長を維持しないと社会不安を起こす恐れがあるため、経済成長に負担をかけるような策は容認できず、
世界協調を破綻さすような賭けに出たのであろうが、
賭けて失うものものが,余りにも大きく、貴重で掛け替えのない地球であることを心にしっかりととめてほしいものだ。
100年予測 ジョージ・フリードマン著 早川書房 1800円