My Fortnight's Dairy

ようこそ私の日記に。ダイビングや旅行を中心に思いついた事柄をつれづれに書き綴ります

2010年03月

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先日東京へ出かた時、飛行機の中で読もうと気軽に持ち出した本でした。

題名からして、ダン・ブラウンばりの、私の好きな古代文明、サスペンス、アクションものと、気軽に読み始めた。

が、内容は想像と違って、忌まわしい歴史的事実に驚愕するとともに宗教が持つ非情なまでの残酷さについて改めて考えさせられるテーマを扱っている。

著者の帚木蓬生はデビュ作「白い夏の墓標」次作「カシスの舞い」とヨーロッパを舞台に、医学をテーマにして、
市井の男女が謎に挑み解決していくさまを、緻密で高質なタッチで描写し、当時鮮烈なイメージを植え付けられたのを記憶している。


それからは、帚木氏の作品を全てではないが、本屋で気がついたとき購入して読んでいた。

本書は文庫本になって、気づき購入していたものである。


本書のあらすじは

歴史学者・須貝彰が南仏トゥルーズ市立図書館で古い2枚の羊皮紙を偶然発見したことから始まる。

13世紀、南ランスのアリエージュ県トゥルーズ地方で、キリスト教宗派カタリ派がローマカトリック派から異端とされ、
パコー大司教の指揮のもとでカラリ派を殲滅すべく大虐殺が行われた。

この古文書はカタリ派大虐殺を、弾圧された側から記した中世の貴重な資料の一部だった。


須貝はパリの学会で古文書発見の発表し、センセーションを引き起こした。
が、発表後に不可解な事件が次々と起こる。

運命的に出会った精神科医クリスチーヌ・サンドルとともに、須貝は、
後世に密かに伝え、隠された、“人間の大罪”を記した残りの古文書を探し始める。

その古文書は、当時パコー大司教とカタリ派の聖職者の通訳をしたドミニコ会修道士レイモン・マルティが秘かに審問の様子を羊皮紙に書きとめたものだ。

この古文書をめぐり次々と殺人事件も起きるが・・・・。


著者は精神科の医師であるためか、相変わらず、人間への視点がものすごくやさしく、
人物描写はきめ細かく感情が表現されると共に、風景も南仏のピレネー山脈の山々があたかも目前にあるがが如くすがすがしく描いている。

本著のカバーに「人間の原罪を問う歴史ミステリ」とあるように、
カタリ派に関する古文書をめぐる歴史ミステリの体裁をとりつつ、
異端を認めないローマカトリックの欺瞞や残酷さをまざまざと描き、人を救うはずの信仰が恐ろしい悲劇を生み出す現実を、
日ごろ信仰とは無縁に近い日本人にも突きつけてくる考え深い本である。


古文書に関しては著者のフィクションであるが、カタリ派虐殺は歴史的事実である。

しかし、カタリ派に関して断片的な知識しかなかったので、この際少し調べてみた。


カタリ派とは、11~13世紀、南仏を中心に信仰を集めたキリスト教の一宗派である。

福音書を尊重し、非暴力、菜食、禁欲を守り、カトリックが「神がすべてを創った」と考えるのに対して、カタリ派は「神は精神を作った」と考え、物質的な世界は悪であると考えた。

人間は転生するという信仰を持ち、死後はすみやかに天国に行くと信じられていた。

一方、1000年以上たったローマカトリック教会は組織的には形骸化し、聖職者の汚職や堕落がひどく、
人々は清廉なカタリ派に親近感を持ち、瞬く間に広がっていった。

カタリ派の拡大に危機感を抱いた当時のローマ法王は、
フランス王フィリップ2世にカタリ派の討伐を命じ、
フランスの領土拡大への思惑もからみ、アルビジョワ十字軍が編成された。

1209~1229年の間に、十字軍によりカタリ派のみならず、無差別に何十万ものもの人が財産を奪われ、家を焼かれ、惨殺された。

時の法王インノチェント3世の命令は「皆殺しにせよ」で、ヨーロッパで最初のジェノサイドが法王の命令で実行された。

だが、カタリ派は絶滅にはいたらず、さらにローマ法王の指示で、
ドミニコ会による宗教裁判が行われ信者たちを拷問、投獄、火刑と非業の限りをつくした。

信者たちは誇り高く、勇気と信念を燃やして、モンセギュールという、天高くそそり立つ岩の上の砦に立てこもって抵抗を続けた。

約一万の騎馬兵、フランス軍の攻囲が約一年にも及び、1224年春陥落した。

改宗すれば命を助けるというのに、誰一人信念を変ることなく、火あぶりになるのを選んだ。

信者200人が裸にされ揃って丘の麓まで歩かされ、杭に縛られ、周りに堆く高く積まれた柴木に火が付けられ火刑にされた。

その後、信者の活動は下火になり、1321年最後の「完徳者」が捕らえらカタリ派は絶滅させられた。


モンセギュールはじめ、多くの信者が虐殺されたが、改宗したのは、たったの一人か二人という。

思想信条や宗教弾圧の歴史の中でこれほど棄教者が出なかった集団は稀であり奇跡とまでいわれている。


カタリの信念がそこまで固かったのはなぜか?
慈愛を説く宗教がここまで残酷になるのはなぜか?


大きな疑問と宿題を与えられた感じだ。


聖灰の暗号(上、下) 著 帚木蓬生 新潮文庫 上514円、下552円

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気候変動に関する国連の政府間パネル(IPCC)の第4次評価報告書(2007年)において温暖化の危険性を明言して久しい。


この報告書では「大気や海洋の平均温度の上昇、拡大する雪氷の
融解、平均海面水位の上昇など観測結果から明らかなように、
気候システムの温暖化は疑いもない」。

1750年来の人間の経済活動による温室効果ガスの増加が地球温暖化をもたらしたと明言している。

さらに、報告書は、二酸化炭素濃度が近年急増し、
この50年間の温暖化の傾向は過去100年のほぼ2倍と指摘、21世紀末には地球の気温は最悪の場合6.4度上昇すると警告した。

そして、猛暑や暖冬、干ばつ、氷河の融解、海面の上昇、浸水、生物多様性の破壊など、温暖化により異常気象が増大し、人間の存在の基盤そのものが崩壊されると警告している。


国連環境計画事務局長は、IPCCの新報告を受けて、人類は温室効果ガス削減策を一致して行動に移すべきときであり、
それ以外の対応は「無責任」と述べている。


しかし、今日になっても、日本では温暖化に対する懐疑論が盛んだ。

「温暖化は起きていない」「南極の氷が融けても海面上昇はしない」等人目を引くセンセーショナルな題目を付けた書籍で「懐疑論」を展開して50万部以上発売した本もあるというのも驚きだ。

日本のメディアと聴衆者の幼稚さのおかげか、一旦メディアに取り上げられると、真偽を抜きにして、爆発的な人気が出る構図は書籍も行列が出来るラーメン屋も一緒だ。

これら「懐疑論」の論者の論点は、温暖化の傾向に反する極小的な一部のデータ、現象をとらまえ、反論し、全体を科学的根拠示さず否定をする。

中には意図的な誤読やデータの捏造、論点すり替えなどを駆使し、自己利益のため人目を引こうとするものもある。


(各懐疑論に対しては東北大学 明日香壽川氏らが「地球温暖化問題懐疑論へのコメントVer. 3.02009年5月」にて98ページにもわたる懇切丁寧な説明で具体的に反論している)

http://www.cneas.tohoku.ac.jp/labs/china/asuka/


しかし、ここへきて、IPCC側にも重大な問題が発生している。

所謂「クライメートゲート」事件と呼ばれる情報漏洩問題だ。

09年11月、英イーストアングリア大学にある「気候研究所」(ORU)のサーバーに外部から何者かが侵入し,IPCCのメンバーのメールやプログラムがインターネット上に公開された。

その中には,温暖化人為説を根拠づけるためにデータ捏造を示唆するメールもあり,地球温暖化問題を根底から揺るぎかねない問題へと発展してしまった。


温暖化問題は、アル・ゴア氏の「私たちの選択」にあるように、今は皆が一枚岩のようになって「実践」する段階だというのに、本当に情けない。


このような背景の中で本著「温暖化のホンネ」が発刊され、大変興味深く読んだ。

本著は鼎談形式で、論者は地球温暖化「懐疑」論者で「環境問題はなぜウソがまかり通るのか」の著者中部大学教授武田邦彦氏と、

国立環境研究所温暖化リスク評価研究室長で地球温暖化科学を専門とする江守正多氏ならびに、アル・ゴア氏著「私たちの選択」の訳者で環境ジャーナリストの枝廣淳子氏である。


三者は温暖化に関する、地球の気温上昇、気温上昇にCO2の関与、IPCCの予測の確かさなどについてお互いに認め、
科学知識の情報をどうやって一般の人に伝え、理解してもらうか「情報リテラシー」について、
情報を流そうとするメディアのあり方を含めその重要性を指摘している。

しかし、温暖化の影響に関しては武田氏の意見には驚き、怒りさえ覚える。

IPCCの第4次報告(100年後に温度上昇2~6.4℃を予想)はたいしたことない、温暖化の被害が出ても日本への影響は少ない、それから対策すればよい。

30年後には温度は上昇しているだろうが、今は、対策は必要ない、
CO2をどんどん出せば良い、なぜなら人類は発展して自ら対応策を考えるであろうから。

などと平気で無責任なことを言い切る。

で、その根拠は氏の歴史観と科学技術歴史観によるとのこと。

いい加減にしてほしい、氏はただ温暖化活動が全体的な運動になって行くことを嫌い、奇を狙い根拠もなく反対しているように思える。

貴重な地球の未来を手玉にとり、手遅れになったらどのように責任が取れるのだろうか。

反対意見も結構だが、邪魔はしてくれるなといいたい。


地球の気象システムは複雑で、相反するように見える事も多々あるが、

要は温暖化理論を大きくとらまえ、江守氏は

「『人為起源温暖化説』の主要な根拠は,『近年の気温上昇が異常であるから』ではなく,『近年の気温上昇が人為起源温室効果ガスの影響を勘定に入れないと量的に説明できないから』なのですから」と説明している。


温暖化のホンネ「脅威論」と「懐疑論を超えて 
技術評論社刊 1380円

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3年ほど前、地球破壊をもたらし、人類の未来を脅かす温暖化問題について記述した「不都合な真実」を読み、
地球の危機的な現実を知った読者は多いに違いない。

私も其内の一人だが(2008年1月14日ブログ参照)、この「不都合な真実」の著者アル・ゴア氏により、
われわれ人類が直面した最大の危機である地球温暖化に対して、
われわれは何ができるのか、 そして、何をしなくてはならないのかを、わかりやすい図版、写真、グラフなどを用いて、地球温暖化を止める解決策を唱えた「私たちの選択」が出版された。



前作の「不都合な真実」がわれわれの社会に及ぼした影響はとてつもなく大きい。

この3年間に、人々の意識は高まり、さまざまな取り組みが始まり、「温暖化問題」は国内・国際政治の主要な議題に位置づけられるようになった。

しかし、『不都合な真実』は、言ってみれば「問題提起編」であった。

今回発刊された、「私たちの選択」はその問題解決編である。


本書の帯に書の内容紹介として

温暖化対策は「選択」から解決のための「実践」の段階と言われています。

ノーベル平和賞受賞者のアル・ゴア氏が「今、あなたが何をすべきか」を示してくれました。

地球規模で、百年単位の課題も「あなたの今日の選択」が問題であり、「あなたの今日の実践」が解決策となります。

私たちの生き方を見直すきっかけになるでしょう。
(参議院議員・小池百合子)

とある。

本書は序章+18章の構成で

・私たちのエネルギー源
・生きているシステム
・私たちのエネルギーの使い方
・乗り越えるべき障害
・遠くへ早く行く

などに大きく分けて、温暖化問題の解決策について説明している。

著者は本書の紹介スピーチの中で温暖化問題を

「どんな危機も、同様にチャンスももたらすと言われています。

気候危機は未来の子孫にとって、私たちがこれまでに向き合ってきたどんな困難よりも手強いものとなるでしょう。

けれどもこの危機は、積極的に世の中を変える最大のチャンスももたらしているのです。

人類の歴史における新時代を始めるチャンスを与えてくれています。
地球の生態系を救うには、効果的で協力的な地球全体の対策がなければいけないと、ようやく私たちは気づきました。

その過程において、より公平で、思いやりがあり、実りある世界を築くことができるのです。」

とこの問題解決を通じて、より公平な社会を構築していけると、前向きにとらまえています。


しかし、最近の世界の動きを見ると、自国の偏狭な利益を公然と、あくまでも追求することを優先する一部の国に、全世界の解決への運動が阻害されるようなこと起きていることは、由々しきことだ。

特に昨年末開催された、気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)でブラウン英首相は

「未来への歩みが数カ国によって人質に取られた」と述べたという。

これは一部の国(中国が)自国の偏狭な利益を優先させることに固執し、拒否権を発動したため、
法的拘束力のある政治合意を採択できなかったことであり、記憶に新しい。

ご承知の如く、世界のCO2排出量のうち、米国と中国が2割ずつを占めている。
日本は、GDPでは世界の8%を占めていますが、CO2では4%に過ぎません。

全世界に大量に温暖化ガス吐き出す大国中国が、自国のみの利益を優先させ、世界各国の取組みまで阻害することは、自分勝手で、横暴であり、由々しきことである。
早く大人になってほしいものです。



さて、本書の内容に戻ると、

温暖化ガスの問題はエネルギー問題であり、温暖化ガスを発生させにくい種々のエネルギー源に関し、その取組みと課題などについて詳しく記述されているが、

印象に残ったのは、「気候の危機の解決に向けて私たちが直面している課題の1つは、私たちの「考え方」・・個人としての考え方、そして集団としての考え方・・にあること力説していることだ。


米国はエネルギーをがぶ飲みしている(CO2排出量を国民一人当たりで計算すると、米国が19.8トンと断トツ。
日本は9.8トンで米国のほぼ半分で、9.9トンのドイツ、9.5トンの英国と同じレベルにある)。

かつその使用効率は大変悪い。
発電量の65%が生かされず捨てられている。

また、資源の無駄も多い。

米国民は、毎年販売される1000億個のアルミ缶のうち半分以上が生かされず捨てられている。

これはわずか10年間に「世界中のすべての民間航空機の25倍の航空機を作ることを出来る量」のアルミ缶を捨てていることだという。

個人、団体が少し考え方を変えるだけで、温暖化ガス削減に大きく貢献できると述べている。

どうやら、ゴア氏の解決策は、日本が得意としてきたことであり、
日本流の「もったいない」「バチがあたる」という省エネ・誠実文化が実は最先端の生き方のようです。


「私たちの選択」アル・ゴア氏著 ランダムハウス講談社刊 3200円 

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