My Fortnight's Dairy

ようこそ私の日記に。ダイビングや旅行を中心に思いついた事柄をつれづれに書き綴ります

2010年09月

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前回のブログに書いたように、世界の深海には熱水噴出による鉱床やその他の資源が多く眠っているのが分ってきた。

日本の領海でも沖縄および小笠原の近傍で数多くの熱水鉱床が発見されており大いに期待されている。

が、現在起きている沖縄の尖閣諸島問題も中国が勝手に領有権を主張し、
小笠原の沖ノ鳥島は「岩」であり日本のEEZ(排他的経済水域)は認められないと言い張るのも、

(自分は南シナ海の赤瓜礁(ベトナムが統治していたが1988年中国が武力により略奪した)の岩周辺に人工建造物を作り、EEZの存在を既成事実化しているのに)

更には、最近では周辺国の思惑を無視して、台湾やチベット問題に使う「核心的利益」という表現を南シナ海にも用い始め、
権益確保の姿勢を鮮明にしようとしているのも、

中国が、新しく発見された海底の金属、エネルギー資源を我が物にしようとするためである。

本当に傍若無人の気をつけなければいけない隣人だ。


さて、前置きが長くなったが、今回読んだ本のテーマは、

今話題にした海底熱水鉱床と違った、近発見された、
ロストシティーと呼ばれる、地球生命の進化の起源の場所ではないかと注目されている、高さ30mにも及ぶ白い新しいタイプの熱水噴出孔がテーマだ。


ここで簡単に本の内容を紹介すると


フランス・アルプスの氷河で、100年前のものと思われる氷付けの遺体が発見され、
近くの湖に沈んでいた飛行機からその遺体は武器商人の親族と推測された。

一方、大西洋で発生した海藻の異常繁殖が世界的に拡大し、地球が壊滅的な被害を受ける恐れがあり、
研究者達が原因を調査するため、大西洋中央海嶺にあるロストシティーに向うが、拉致されてしまう。

一味はロストシティーで密かに発見された酵素を使って、身の毛もよだつ人体実験をしていたのだ。

両方の事件は裏で武器商人一族に結びついており、この陰謀をあばくため、一族の本拠地に乗り込み首領と対決する。

そこで、一味の人体実験の目的、海藻の異常繁殖の真実、そして最終目的が何かを聞かされる・・・・・。


内容は快適なノリの良いアクション物で超人的な主人公たちが、車、飛行機、ヘリコプター、そして潜水艇まで駆使して悪者と戦う、
勧善懲悪のいつものストーリーである。

単なるアクションものと言ってしまえばそれまでですが、

10年ほど前に新しく発見され、原始地球での生命の誕生を促した可能性のある場所と示唆されているロストシティーをテーマとして、

そこで発見された酵素を使った不老薬の開発と世界制覇の陰謀を図るというストーリーに仕立ててる斬新性とアイディアには感心させられる。


さて、このロストシティー(失われた海底都市)とはどんなものかと、「日経サイエンス 2010年3月号」では

「2000年12月,大西洋中央海嶺から西に15kmほどの地点にあるアトランティス山塊の頂上の近で、まったく新しいタイプの熱水噴出孔が見つかった。

20階建てのビルに相当する白い柱が林立するその噴出孔は「ロストシティー」と名付けられたが
そのユニークさはそれまで知られていた熱水噴出孔と比べるとよくわかる。

ブラックスモーカーと呼ばれる今までのものは、
噴出孔からは強酸性で400℃以上の熱水が噴き出ていて、
その周りには1mを超えるチューブワームやカニなど,生き物がひしめいていた。

一方,新発見のロストシティーは強アルカリ性で,温度は90℃まで。
何よりも大事なのは,ここでは生物の力を借りずにメタンやプロパンなどの有機物が作られていること。

そして,エネルギーに富んだ水素ガスが噴き出ていることだ。

さらにロストシティーには,太陽エネルギーにも,それを利用した光合成の産物である酸素にも頼らない微生物たちが独自の生態系を作っていた。

最初の生命が誕生した場所は,このロストシティーのような環境だった可能性があると大いに注目を集めている。」

とある。

更に、深海底の熱水噴出孔と、そこに生息する生物の発見は、
地球の生命誕生の謎を解くカギを提供しただけでなく、
宇宙生命の発見につながるかもしれないという。

宇宙生物学者は、同様の環境ならば宇宙でも生命を発見できると推測する。

その条件をほとんど満たしそうなのが、木星の四大衛星の一つエウロパ。

惑星探査機ガリレオの木星探査で、エウロパの厚い氷殻の下に塩水の海があるかもしれなく、そして、木星や他の衛星との引力の影響で常にその水は温かいという。

そうなれば将来の探査で、熱水噴出孔や生物を発見できるかもしれない。


単なる冒険小説が地球プレートテクトニクス、生命の起源、はたまた宇宙生命の発見と誘ってくれるとは・・・。

まさに、読書の楽しさ、面白さだ。


失われた深海都市に迫れ(上・下)
クライブ・カッスラー&ポール・ケンプレコス著 
土屋晃訳 新潮文庫 各590円

日経サイエンス 2010年3月号 日経サイエンス社刊 1400円

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今朝(9/11)の日経WEBニュースで「中国、ガス田交渉を延期 衝突漁船の船長拘置に抗議」なる記事が掲載されていた。

これによると、「中国外務省は11日未明、今月中旬に予定していた日本との東シナ海のガス田開発を巡る条約締結交渉の延期を決めた」と発表した。

沖縄県の尖閣諸島付近で海上保安庁の巡視船に衝突した中国漁船の船長が逮捕され、10日に那覇地検石垣支部が10日間の拘置を認めたことへの対抗措置とある。

中国の国内世論硬化に配慮した形で、じわじわと強硬姿勢を表明したものである。

この際、いいチャンスであるから、東シナ海ガス田開発や尖閣諸島の領土問題をじっくり話し合えばいいものを、

中国側としては、強硬姿勢を貫くことで、「中国脅威論を拡大させ、日本に日米同盟強化や離島防衛の口実与えてしまう」との懸念がある中、
事件の解決が長引けば強硬な世論が増幅しかねないという難しい対応のなかでの苦肉の策なのであろう。

元々、尖閣諸島に関して日本政府は
尖閣諸島の領有状況を調査し、いずれの国にも属していないことを確認したうえで沖縄県に1895年1月14日編入し、
その後一貫して尖閣諸島を領有している。

国際的にも日本の領土と認められ、日本人の入植も行われた。

状況が変わったのは
1969年および70年に行なわれた国連による海洋調査で、
推定1095億バレルという、イラクの埋蔵量に匹敵する大量の石油埋蔵量の可能性が報告され、
周辺海域に石油があることがほぼ確実であると判明してからだ。

1971年6月に台湾、12月に中国が相次いで領有権を主張してきた。
その根拠は、尖閣諸島が中国側の大陸棚に接続しているとの主張にくわえ、
古文書に尖閣諸島を目印として航海に役立てていたという記述が見られるということだ。

本当に中国は独断で傲慢で怖い。

さらに、中国の中では
「沖縄は戦後日本の支配から脱した後、まだ帰属先の策定が行われてない」と主張して、沖縄侵攻の布石としようとする意見さえあるという。


広い国土を持つ中国がちっぽけな島に身勝手な意見を押し通そうとするのは、
世界で陸上資源の枯渇が懸念される中、海底資源に注目し始めているからである。


先月(8/15)日経新聞の囲み記事 「今を読み解く 海底鉱物資源に熱い視線」によると、
世界では、今静かに海の分割が進んでいるという。

わが国も含め、約50の国が、国連海洋法条約に従い大陸棚延長申請を提出しており、
それらを単純に足し合わせると(未加入のアメリカ、未申請のカナダを含める)人類の共通遺産とされてきた海底の約半分が沿岸国の管轄下に置かれる可能性が出てきた。

各国がこのように大陸棚延伸に熱心なのは、21世紀に入って陸上資源の枯渇が現実味を帯びてきて、海底の鉱物資源確保を目指しているからだ。

この記事の中で紹介されていた「日本近海に大鉱床が眠る」「海底鉱物資源」という本を読んでみると、なかなか興味深いことがわかってきた。

現在有望と考えられる海底鉱物資源は
マンガン団塊、コバルトリッチ、マンガンクラフトおよび海底熱水性鉱床などであるが
その推定資源量は陸上埋蔵量の10~100倍もあると見積もるデーターもあるという。

日本の排他的経済水域は世界第6位を誇り、この広大な領海の海底には、レアメタルを始めとする鉱物資源が眠っていることが分かってきた。

その資源は、海底熱水鉱床」と呼ばれ、海底深く、
熱水を吹上ている場所であり、熱水に溶けた金属が蓄積し、
銅、亜鉛、鉛、金、銀を始めレアメタルなどの金属資源が豊富に含まれている。

この海底熱水鉱床は1960年台の地球科学における画期的な理論「プレートテクトニクス」の証しとして、海底温泉を探す過程で発見された。

プレートテクトニクスによると、中央海嶺では、地球内部から熱いマグマが上昇して新たに海洋プレートが生成されている、
上昇したマグマは海水により冷却されるにつれて、
ひび割れを起こし、また断層も発達して、そこから海水が浸入してマグマに温められて熱水として海底に噴出するはずである。

海底温泉を見つけることは、プレートテクトニクスの正しさを証明することにつながる。

1966年アラビア半島とアフリカに挟まれた紅海の中央海嶺で
銅、亜鉛、マンガンなどを多量に伴う熱水鉱床を見つけるという世紀の大発見がなされた。

その後、プレートテクトニクス理論にもとづき、
世界各地の中央海嶺や島弧で同様の鉱床があるであろうと予測することは当然で、次々と各地で発見され現在まで、
全海洋で350箇所以上、日本近海では10数箇所が発見されている。

その殆どが伊豆七島・硫黄島海嶺と沖縄トラフ沿いにある。


資源欲の強い中国が尖閣諸島や沖縄を我が物に、などの妄想が出てくるのもわからなくもない。


「日本近海に大鉱床が眠る」 飯塚幸吉 技術評論社 1480円
「海底鉱物資源」  臼井朗 オーム社 2000円

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