My Fortnight's Dairy

ようこそ私の日記に。ダイビングや旅行を中心に思いついた事柄をつれづれに書き綴ります

2010年11月

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「深海のYrr」の著者フランク・シェッツィングの最新作だが、なんと文庫本600ページで四冊にわたる超!長い小説だ。

読み終わるのに2ヶ月もかかってしまった。

シェッツィングの5年前に読んだ「深海のYrr」は、
未知なる深海を舞台に、膨大な科学知識と壮烈な大スペクタクルで
未知の海の世界の謎解きに心躍らされた興奮が今でも忘れられない。

この一作で著者の本が好きになり、その後日本で発刊された

「黒のトイフェル」(「深海のYrr」より前の作品)2009年2月
「砂漠のゲシュペンスト」2009年9月

と2作読んだが、どれも「深海のYrr」のような興奮は味あえずひどくがっかりしてしまった。

一作のみがパッと花開く作者は多いが、彼もその口かと思っていたところに今回の「Limit」が発刊された。


まず、「Limit」一巻目の裏表紙に書かれている本書の要旨を紹介すると

「2025年、化石燃料は終焉を迎え、アメリカと中国は新燃料ヘリウム3の採掘競争を月面で繰り広げていた。

そんな折、大富豪オルレイは投資家たちを招き、
自ら建造した宇宙エレベーターで月面のホテルに向かう。

一方、上海では探偵のジェリコが瑶瑶という若い女性の捜索を依頼されるが、殺し屋ケニー辛も彼女を追っていた。

そしてカナダでは石油会社の幹部の暗殺未遂事件が起きていた。」

とある。

抜群のスケールとリアリティで近未来の月と地球を舞台にした巨大な陰謀を描いた小説であるが何せ、ページが多すぎる。

著者のドイツではハードカバーで特に分厚い本が好まれると聞いたことがあるが、何か無理やりページを増やしているようにも思える。


1巻目にいきなり多くの人物が出てきて、登場人物の細かな紹介と物語の背景説明で終わり動きが無くだらけてしまう。

3巻以降になると、ようやく話が動き出し、アクションシーンも動きが早くスケールが大きく一気に読めるようになる。

舞台となる宇宙ステーションや月面の様子など科学的な知識に基づいた細かな描写で近未来に実現するであろう様子が目に浮かぶようで楽しめる。


「深海のYrr」と同じく、今回の作品でも、未来を鋭く見つめ、
科学にまつわる新技術・新エネルギーの開発・利用と宇宙の環境の両立などの奥の深い問題を提起している。


今回の小説の技術的変革の背景として、地球上の化石燃料の枯渇化とその代替としての新エネルギーとしての月面のヘリウム3採掘における国際政治、企業間の争いがテーマとなっている。


新エネルギー候補のヘリウム3とは

ヘリウム3の原子核は、陽子2個と中性子1個からなり、通常のヘリウム原子より軽い安定同位体である。

ヘリウムは地球に殆ど無ないが、空気の無い月の砂、岩石に大量に含まれている。

太陽は地球の33万倍もの体積を持っており、その中心部は温度1500万℃、圧力は大気圧の約2500億倍にもなり、この高温・高圧の中で、水素の原子がくっついてヘリウムになるという核融合が起きている。

太陽の核融合で出来たヘリウム3は、太陽風(太陽から流れてくる粒子の流れ)に乗って月へ届くが、月には空気ないためヘリウム3は月の表面の砂(レゴリス)に吸着、蓄積される。

月ができてから45億年の間に、太陽からのヘリウム3は月の表面の砂にずっと吸着され続けてきていると考えられている。

さて、このヘリウム3と、水素の一種である重水素で核融合さすと、ヘリウム4(普通のヘリウム)と陽子になり、この陽子が膨大なエネルギーを発生させる。

核融合は、原子力(核分裂)に比べて発生できるエネルギーが大きく、また放射能が少ないという特徴があり新エネルギーと期待されるわけである。

月に豊富(10万とか100万トンと云われている)にあるヘリウム3を使えば、 
計算では、現在の世界で使われている電力の数千年分のエネルギーが得られるとされている。

月で採掘されたヘリウム3をロケットで地球に搬送していては採算が合わないので、
この小説で書かれているもうひとつの技術革新が宇宙エレベーターだ。

地球の遠心力を使ったこの宇宙エレベーターはアメリカ始め各国が実用化を目指して開発を進めているものだが、かなり実現性が高いものであるという。

日本でも多くの機関で研究が進められており、一般社団法人
宇宙エレベーター協会が情報収集・発信に尽力している。

このような背景の中で

NASAは、2024年までに月面に恒久基地を建設する計画だが、こうした計画を立てているのは米国だけではない。

中国、インド、欧州宇宙機関(ESA)、それにロシアの民間企業などが、2020年以降に有人の月面基地を建設する構想を持っている。


必ずやってくる化石燃料の枯渇による新エネルギーへの変換。

大国や豊かな国だけが新エネルギーを手にし、その他の大多数の人類にはいったいどんな世界が待っているのであろうか。


LIMIT1~4 フランク・シェッツィング著 ハヤカワ文庫

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昨日の土曜日朝5時に起き、Cカード取得したショップ主催の白浜の近くの田辺に日帰ダイビングに行ってきました。

朝早くてつらいが、ショップに集合した後はすべてお任せで、
行き帰り車の後部座席にごろりとしているだけで着いてしまう極楽ツアーだ。

今回、日帰りで2本しか潜らない中途半端なダイビングに参加した目的はナイトロックスのSPを取得するためだ。


ダイビングショップで通常Cカードを取得すると
「オープンウオーターダイバー(Open Water Diver)」として認定されるが、これは潜水可能深度などが制限された基礎的なダイビングに限定される。

ダイビングにおけるスキルと知識を深めるために各ショップは
Spcial Program(SP)の受講を勧めている。

私の場合でも「ボートダイビング」、「ナイトダイビング」、「デープダイビング」、「ナビゲーション」、「ストレス&レスキュー」や「エンリッチドエア ナイトロクス」などの11のSPを受講している。

このSPは講義と海洋実習が対となっており取得に時間がかかることと、費用も一つのSPで2,3万円もかかるため受講せず現場の実践でスキルアップを図る人も多い。


さて、何故急にナイトロックスSPの受講ダイビングに参加することになった理由は


来年初め、マンタ、ザトウクジラ、ハンマーヘッド、ジンベイザメ・・・などの超大物に遭遇できるメキシコの絶海の孤島クルージングを申し込んだのだが、
このクルーズは1日4本、最高24本ものダイビングをする。

このハードなダイビングをこなすためにはナイトロックスを使用した方がいいと聞き、私のナイトロックスSPの受講記録を調べたら、
講義と海洋実習1回(SP取得のためには2回の海洋実習が必要)の受講で中断していた。


2年前の夏、マーシャル諸島のビキニ環礁ダイビングを計画し、ナイトロックスのSPを取得すべく講義を受講し始めた。

が、色々調べていくうちどうもここはテクニカルダイビング分野であるとわかり、計画が頓挫し、ナイトロックスの受講もそのまま中断していたのだ。
(詳細は2008年7月21日の私のブログ参照ください)


ということで、話が長くなったが、ナイトロックスSP取得のために残された海洋実習を受けるため今回のダイビングの参加となったわけである。


さて、このナイトロックスだが、ナイトロックス(Nitox)とは、Nitrogen(窒素)とOxygen(酸素)からできた造語で、
窒素と酸素の混合体という意味だが、ダイビングでナイトロックスという場合は、
酸素濃度21%の空気よりも酸素の割合を多くしたガスという意味で使われる。

エンリッチド・エアまたはエンリッチド・エア・ナイトロックスなどと呼ばれることもある。

一般的に使われるのは酸素濃度が32%または36%のナイトロックスですが、
テクニカルダイビングの場合17%といった通常より低濃度のものや50%・80%といった高濃度のものが使用されることもある。

このナイトロックスを使用すると減圧症の発症リスクを低減できるなどのメリットがあるが酸素中毒に注意する必要がるというディメリットがある。

そのため、ナイトロックスSP受講者でないとナイトロックスのタンクは借りることが出来ない。


酸素中毒に関し、呼吸する酸素分圧が1.6気圧(地上の1気圧では、酸素分圧は0.21気圧)を超えると神経系(急性)酸素中毒の危険性が大きくなることが医学的にわかっている。

そのため、ダイビングでは酸素分圧が1.4気圧を超えないようにする必要がある。

32%のナイトロックスで潜る場合、何メートルまで潜ると1.4気圧に達するか計算してみると

1.4気圧÷0.32気圧=4.375

つまり、水面の4.375倍の気圧がかかる深度=33.75mで1.4気圧になる。
33mが限界深度となる。
(通常の空気であれば1.4気圧÷0.21気圧=6.666 つまり56.6m)


しかし、ナイトロックスを使用すると、窒素濃度が低い分それだけ減圧不要限界の窒素量に達するまでの時間が長くなる。

例えば、空気だと水深18mに無減圧で潜れるのは56分だが、32%のナイトロックスを使うと96分潜れるようなメリットがある。


深く潜るためには、空気では56mが深度の限界ということになるが、酸素濃度の低い、
例えば酸素濃度17%、窒素濃度83%のナイトロックスでは70mまで潜れることになる。

しかし、窒素酔という問題があり、個人差があるが、深度30~40mくらいであらわれる。

これを防ぐため、窒素の一部をヘリウム置き換えたトライミックスガスが使用される。


私どもレジャーダイビングではそんなに深く潜ることもないが、
いずれにしても今回ナイトロックスSPを無事取得することが出来、
更に一歩楽しいダイビングにつながればいいなと思う。

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来年3月まで、本四高速が音頭をとり瀬戸内海エリアにおける24もの美術館がネットワークを作り、
参観者を増やそうとする計画が実施中である。

この計画に乗っかり、なんとかこの期間中に、これらの美術館を訪問してみようと先月決めたのだが・・・。

先月は、高速道路、本四連絡橋の料金が安くなる週末を利用してやっと2回行くことができた。


第一回目は 四国鳴門の「大塚国際美術館」
第二回目が 倉敷の「大原美術館」「児島虎次郎記念館」「倉敷市立美術館」である。


まず始めに、大塚国際美術館であるが、
神戸の自宅から近く何度か近くを通ることがあったが、今回まで、
豪壮な門構えと大塚製薬の企業色がプンプンしているのではないかと敬遠していた。


訪問してみて驚かされた、システィーナ・ホール、スクロヴェーニ礼拝堂や、ポンペイの壁画、最後の晩餐、ゲルニカなど
1,000点を越す世界の有名作品が原寸で真近で見られるのだ。

ここのコンセプトは世界の名画を写真に撮り、
原寸大で陶器の板(陶板)に焼き付けて展示する「世界初の陶板名画美術館」である。

「陶板名画は約2000年以上にわたってそのままの色と姿で残るので、これからの文化財の記録保存のあり方に大いに貢献する」
とパンフレットに謳っている。


美術館は地下3階~地上2階まで5フロアーもあり、私立では国内最大の美術館建築。

地下3階(小高い丘の上に建てられているため)から長いエスカレーターを登りきったところにエントランスがあり、
着くなりいきなり目にするのがヴァティカンのシスティーナ礼拝堂が再現された大空間「システィーナ・ホール」である。

ここには、今まで写真や映画でしか見たことがない
ミケランジェロの壁画「最後の審判」と天井画「天地創造」が高さ15m位はあると思われる空間に実物大で再現されている。
こんな身近に、じっくり対面できるとは本当に感激です。

この美術館の展示作品を紹介しようとしたらきりがない、
何しろ世界25カ国以上の美術館の一度は写真などで見たことがあるような名品を複製といえ、実物大で展示されているのだから。


ひとつ挙げるとしたら、歴史好きの私としてはポンペイで発見された「アレキサンダー・モザイク」である。

これは紀元前333年にマケドニアのアレキサンダー大王が
ペルシャのアケメネス朝最後の王ダリウス3世を撃ち破ったイッススの戦いを描いたモザイク画で戦いの様子が兵士一人ひとり細かく描写されている。

歴史の教科書でよく見かける絵であるが、こんなところで実物大のものに対面できたことは本当に感激であった。


一度は訪れてみるべき美術館である。


次に訪問したのは大原美術館である。

ここは近代工業の黎明期を駆け抜けた大原孫三郎(1880~1943年)が築き上げた白壁や格子窓の屋敷や蔵が軒を並べる「美観地区」の中心部にある。
 
荘厳なギリシャ風建築の本館玄関を入ると迎えてくれるのが児島虎次郎作「和服を着たベルギーの少女」だ。
     
孫三郎の西洋美術品収集の命を受け留学した児島が、
フランスのサロン・ナショナルニ出品して入選した作品である。
西洋美術を収集し、日本文化との融合を図ろうとする意気込みを感じさせられる。

大原美術館の代名詞のようになっているエル・グレコ「受胎告知」は、
パリの画廊で売りに出ているものを児島が偶然見出したが、
非常に高価ではあったため、大原に写真を送り、強く購入を勧め、購入されたという。

その他トゥールーズ=ロートレック「マルトX夫人の像」、ゴーギャン「かぐわしき大地」などの名品が児島によって購入され、日本に運ばれた。
     
1929年、児島が享年47歳で他界し、これを大いに悲しんだ大原は、
児島の功績を記念する意味をもって、その翌年に大原美術館を開館した。
     
日本初の西洋美術館であった大原美術館はニューヨーク近代美術館創立の翌年、
国立西洋美術館(東京)に30年近く先駆ける早さだった。

     

倉敷紡績2代目経営者の孫三郎は、繊維産業の隆盛を背景に美術館のほか、
近代的な病院や労働科学研究所など7つの研究所を開設している。


社会的良心と企業業績の拡大の両立を果たした、孫三郎の偉業や人となりは
城山三郎の「わしの眼には十年先が見える:大原孫三郎の生涯」に詳しく述べられている。

それによると
「余がこの資産を与へられたのは、予の為にあらず、世界の為である。余に与へられしにはあらず、世界に与へられたのである。 
余は其世界に与へられたか金を以て、神の御心に依り働くものである。」

どっかの国の私利私欲に汲々する強欲金融経営者に聞かせたいものだ。


「わしの眼には十年先が見える:大原孫三郎の生涯」
     城山三郎   新潮文庫刊 552円
「大塚国際美術館 100選」 2000円
「大原美術館名作選」  2000円

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