
東日本大震災から2週間を過ぎたが、亡くなった方の数は1万人を超え、1万6千を超える人がまだ行方不明である。
福島第一原子力発電所の事故もタービン室に溜まった水から高濃度の放射性物質が検出されるなど、次々と新しい問題が発生し全く予断が許されない状況にある。
しかし、被災された多くの方々の避難所にはやっと必要な生活物資も届き始め、落ち着きと明るさが見え始めたのは何よりである。
それにしても被災に会われた人々の冷静で不屈と忍耐力そして何よりも規律正しいモラルと団結力には頭が下がる思いだ。
28日の新聞にはわが身を犠牲にして「津波、逃げて」と懸命に放送し続けて9000人の人を救った南三陸町職員の記事が掲載されていた。
まれに見る災害の大きさにもまして、被災者たちの勇気ある秩序正しい行動が全世界の人々に感動を呼び起こし、かってない規模の各国からの救援隊の派遣や、義援金、ボランティア等の行動が起こされている。
日本は勿論、全世界の人々が今、自分が何を出来るかを真剣に考え、チャリティー活動や募金そして多くの暖かいメッセージを寄越してくれている。
有難いことだ。
だが、いい人ばかりではない。この災害で一儲け企む輩も居る。
リーマンショクで名を馳せた傲慢で強欲な金融界の人間だ。
市場に流れ込んだ投機資金により大地震発生後、急激な株安・円高が進んだ。
最近の為替や原油市場にしても、実際に外国通貨や原油を必要とする人々よりただ差益だけを目的とした投機関連の人々が何十倍もの資金を投入して市場を我が物のように操作しようとしている。
3月15日の日経平均株価は、前日比1015円安の大暴落となった。
地震の発生以降の株価下落は累計で1800円を超えた。
そして円高だ。
3月17日の外国為替市場で、円相場が一時1ドル=76円台まで急伸し、戦後最高値を記録した。
大地震で大きな損害を被った日本経済の先行きは危ぶまれ、円安となるはずにもかかわらず急激な円高となった。
なぜ急激な円高がきたのか。
阪神大震災のときも円高になった。
国内復興に資金が必要な日本企業が海外資産を処分して円資金を確保している。
などの解説がされるが
阪神大震災の時は、実は直後には円高にならず、
数日間は円安に動いている。
しかし、シンガポールのトレーダーがデリバティブ取引で損失を出し、女王陛下の銀行とまで言われた老舗ベアリングス証券を2月末に破綻に追い込むという事件が発生した。
その後から円高が起こり、4月中旬には79円75銭の史上最高値の記録することになった。
円の需要が増えたと言う説にも、これから保険の支払いで資金が必要とされる国内の生損保関係は一様にそうした取引の存在を否定している。
それでは、なぜ急激な円高が進んだのか。
ヘッジファンドを中心とした投機資金が、日本の市場が閑散な早朝を狙い、「ストップ狩」を仕掛けるべく、円買いに走ったというのだ。
ストップ狩りとは通常、ヘッジファンドなど巨額の資金を操る投機筋が利益を上げようとする一つの手法を指す言葉で、マーケットに出ているストップロス注文を「狩り」に行くのがストップ狩りだ。
FX取引で外貨を持っている人はストップロスという設定をしていることが多い。
これは、自分で設定した為替水準まで達すると、損失をそれ以上拡大させないために、自動的に手じまいを行う仕組みだ。
今回はヘッジファンドなどの大量の売り注文によって円高がみるみる進み、大量のストップロス注文が発生し、それがさらに下げを加速させた。
そうやってパニック的な1日で3円以上の円高が進んだ。
最初仕掛けたヘッジファンドはそれを買い戻して利益を確定させたのだ。
ひどい話だ。世界中の殆どの人が「日本がんばれ」とエールを送ってくれている中で、強欲な金融界の人だけが、震災でふらふらとなった日本経済と国民を後ろからとび蹴りを加えるみたいなものだ。
為替投資はどうも好きになれない。
長年製造業界に身をおき、製品の品質や生産性、歩留まり向上などに一技術者として力を注いできたが、
1%以下の歩留まり向上でも、計画から設備改善まで1年以上かけて実行することもあったが(昔は為替の変動も少なく、これらの積み重ねが製造技術の向上となり海外との競争力がアップしていった)、
今では完成した暁の1%の向上など為替の変動が一瞬にて霧散してしまう。
誰もが、もうコツコツと製造技術の向上を図ろうとしなくなる。
人のお金を集め、物を作るでもなくサービスをするでもなく、
ただ差益だけに狂走し、周りの関係者の混迷を省みることなく、
ただ強欲にわが利益のみを追求しているヘッジファンドなどが大きな顔が出来るような世の中はやはり異常だと思うのだが・・・。
今回の震災で図らずも世界に日本の物作りの実力を認識させることになったが、
復興に当たっては次世代にも通用する物作りを中心とした社会が構築できればいいのだが。