
今回のダイビングはトゥバタハリーフ:フィリピン・スールー海のど真ん中にあり、一年のうち3ヶ月しかダイビングが出来ない閉ざされた場所なのだ。
関西からフィリピン・マニラへ、国内線でマニラからパラワン島の中央部のプエルト・プリンセサへとび、そこからクルーズ船で10時間の距離にあるのが今回のダイビング地だ。
ダイビングを始めて約6年経つが、この間ダイビングで年4,5回、それも行く先々のメジャーでない色々な航空会社を利用して海外に出かけてきた。
だが、これと言ったトラブルに会うことなく、勿論空港やホテルに忘れ物をしたようなことは2,3度あったが、
今回始めて旅行全体工程を根本から覆す恐れがあった航空機の遅延トラブルに遭遇してしまった。
関西空港 9:55分発のフィリピンエアーが最終的に5時間も出発が遅れてしまったのだ。
よくある話といえばそれっきりだが、今回のツアーはクルーズ船に乗るため、
乗船時間に間に合わなければツアーそのものがそこで終わってしまうのだ。
搭乗時間が遅れるとの情報に、マニラで国内線への乗り継ぎ時間が3時間あったため、初めはそんなに心配しなかったが、
出発予定時間が11時、12時と変更されとうとう2時までになってしまい、これではダメだと地上係員に交渉するが、
マニラでのホテルと往復の車は手配するが新しいプエルト・プリンセサへのチケット手配はこちらではわからないとのこと。
翌日の8時のフライトが手配できればクルース船に乗船できるので、ツアーを手配してくれた旅行会社に状況を説明して、何とか航空会社と交渉してもらい、
その結果空席がありチケットが確保出来そうだとの情報を貰ったのが2時頃だった。
それからは、今日中にマニラに着ければいいと気を大きく持って待っていたら、意外と早く3時ごろには出発することが出来た。
今回のトラブルのおかげで、大きな荷物を持ちながらの一人旅にはトラブル対応が意外と難しいという経験とマニラステイとなってしまったため、
久しぶりのあのマニラの交通渋滞と運転手の神業的テクニックを見せて貰った。
東日本大震災への災害発生と私の今回のトラブルは全く規模が違うが、
国も個人も不具合発生への緊急対応策を常に頭の中に入れておかなければいけないことを痛感した。
さて、前置きが長くなったが、今回のダイビングツアーでは、
6船中泊、1日がホテルの宿泊で、ダイビングは初日1本、最終日2本、中日は4本/日で合計19本も潜りました。
朝6時45分に一本目、9時45分、12時45分に2,3本目そして夕刻3時45分に4本目のダイビング。
朝食は一本終了後、昼食は2本終了後摂ります。
タイトなスケジュールですが、ダイビングの合間は、狭い船内では何もすること無く退屈するのではないかと心配しましたが、
あにはからず、食べて、飲んで、眠って、読んでのグータラな生活の連続で、人間は堕落した環境には直ぐ順応し、意外とこれが快く感じるようになり、
体の馴れと共に後半は1日4本のダイビングにも余り疲れも感じませんでした。
天候も我々に味方してくれ、前の週のツアーは荒れて船酔いや潜れないポイントなどもあったようだが、
今回は全日快晴で、流れも弱く、水面は鏡のようなベタ凪でした。
おかげで、トゥバタハリールの北、南の2つの環礁の人気ポイントを潜ることが出来たが、
流れが弱かった分、ダイビング自体は楽でしたが、大型の回遊魚の大きな群れに遭遇することは少なかった。
又、潜った各ポイントもロップ・オフの壁際を緩やかな流れに乗って流すスタイルが主流でポント毎の変化が少く物足りなくも感じた。
とはいえ、9ヶ月も人を寄せ付けず守られてきた自然は見事で、ドロップ・オフの壁面の至る所に、
群青色の海の中、色とりどりのウミウチワが大きく枝を広げ、重なり合い、その中をハナダイなどが色鮮やかに舞っている光景は忘れがたいほど美しく見事だ。
又、環礁の浅瀬では、明るい日差しが射すなか、
ソフトコーラルと白い砂地が広がり無数の熱帯魚が乱舞し、心癒されるダイビングが出来た。
だが、何よりも、1週間、世界の情報から隔絶され、只、只、ダイビングをし、そしてサンデッキで寝そべる時間を過ごせたのが極上の幸せであったと思います。
この長閑な波ひとつ無いスールー海に浮かぶ船上で身を焦がすような強い日射の下で日光浴しながら、
66年前、ここから南400kmのスールー諸島での日本軍全滅の話を思い起こすと胸が痛む。
1945年4月から6月、太平洋戦争の末期、日本軍と連合軍との間で、スールー諸島をめぐっての戦闘をスールー諸島の戦いというが、
日本軍は連合軍と地元モロ族ゲリラと戦い6000人の内生き残ったのは100人程度という文字通り全滅するという悲惨な戦いであった。
太平洋の南方諸島にダイビングに行くと、いつも当時の日本軍部の無謀さと犠牲となった多くの人々の無念さが思い起こされていたたまれなくなる。