
先日、新聞の折り込みチラシにバスツアーの広告が入っていて、なんとなく眺めていたら、表題のバスツアーを見つけた。
そのツアーは、私にとっては思い出深い「丹後」で、11月になり解禁された蟹の「かにづくし料理」、そして最近特にずぼらになった私とってありがたい「自宅の最寄駅から出発」とあった。
早速、電話したら空席があると言うことなので即予約してしまったのだ。
自宅近くのJRの駅を7時出発とかなり早かったのだが、大型バスに48人の乗客と満席で、7割以上が女性陣(オバチャン達)であった。
目的地は京都府の丹後半島西側にある「夕日ヶ浦温泉」だ。
「美しい夕日」と「やさしい美人湯」そして「産地直送の生きのいい松葉ガニ」が売りの場所だ。
私は、夕日ヶ浦温泉は始めてであるが、その少し北側にある
「間人(たいざ)」には大変思い出がある。
40年以上前になるが、大学卒業後育った東京を離れ、
神戸にある企業に就職したのだが、ここでは全国から集まる
新入社員用に二人一部屋の独身寮があり、
私と同期の100人を超す新入社員の殆どは寮に入っていた。
不思議なことに、寮の生活では段々グループ化していき、
最終的には十名弱の親密な仲間が出来、寮の中でも、
休みの日でも何時も集まって馬鹿騒ぎをしていた。
当時は週休二日制ではなく、土曜日は午前中まで勤務の「半ドン」であた。
この休みの日の遊びではまったのが海水浴であった。
東京から来た私には当時の山陰や瀬戸内海の海は自然そのもので広い砂浜と青く澄み渡った海は本当に素晴らしく、眩しく感じた。
海水浴への足は私が学生時代から使っていた中古のトヨタと
友人が購入したホンダの2台で、
土曜日の夕刻に寮を出発して、夜運転して、着いた浜辺で、車の中の仮眠かキャンプをして夜をあかし、翌日の午前中は海で遊び、夜遅く神戸に帰ってくるパターンだ。
ある年には、7月の初めの休みから9月の最後の休みの全てを関西エリアの海水浴に行くほどであった。
中でも仲間のお気に入りは丹後半島の間人(たいざ)であった。
40年以上前と云えども、鳥取や山陰の有名ポイントは人も多く、車の駐車も苦労した。
が、間人は浜辺近くには人家も少なく、海水浴客も殆ど来ておらず、車も何処でも止められる便利さだ。
何よりも海が素晴らしかった。
夜間着いて一泳ぎすると、夜光虫の輝く素晴らしい光景が迎えてくれ、運転の疲れなど吹き飛んでしまう。
平泳ぎのひとかき、ひとかきに漆黒の闇の中、夜光虫がキラキラと光り輝き、
両手全体がクッキリと浮かび上がる様や手から落ちる雫、
一つ一つが光の玉になり落ちる様は、
本当に言葉に言い尽くせない素晴らしさだった。
この感動が忘れられず何度も間人を訪れるようになり、
私が若い頃の思い出の場所となった。
海外でダイビングするようになり、間人での感動を再び味わおうと
積極的にナイトダイビングに参加するが、夜光虫はポツン、ポツンと光る程度で、未だかって間人の光煌く様は経験していない。
さて、思い出話が長くなったが、肝心のバスツアーの内容は
「かにづくし料理」と銘打つほど全てがかにであった。
「ゆで姿がに(一杯)」「かに刺し(片身)」「焼がに(半身)」
「かにすき(半身)」「かに雑炊」「かに入り茶碗蒸し」
と全部で2.5杯のかにオンパレードだ。
おまけに「甘えび食べ放題」として山一杯の甘えびが
大きなボールにドンとテーブルに置かれている。
最初は丁寧に蟹の身をほぐして食べていたが、とても食べきれず、
最後の方は、殆ど大きく取れる身だけを食べるという贅沢さであったが、それでも、もう勘弁と言うほど満腹となった。
甘えびに至っては初めの5,6匹を食べたが殆どが残ってしまった。
しかも、今回のツアーは参加グループ単位でホテルの宿泊ルームでユッタリと楽しく食事が出来たことも嬉しい。
食事後、美人湯と言われる、海の見える露天風呂温泉で寛ぎ、そして、紅葉が始まった皿そばで有名な出石を一時間ばかり散策して、神戸に帰ってきたのは夜の8時頃であった。
さらにツアーにはお土産として「出石そば2人前」と夕食として「バラ寿司」が付いているといったきめ細かさだ。
このツアーの参加費用は一人9,980円だ。
個人で行ったら、2,3万円は掛かるのではないかと思われるのだが、
何故こうも安くなるのだろうか。
どうやら秘密は道中に寄る3,4店のオミヤゲ屋に在るのだろう。
今回参加しているオバチャンたちは元気だ。
よく喋り、よく食べ、そしてよく買う。
毎回立ち寄るオミヤゲ屋で、短い時間内に両手一杯の
オミヤゲを買ってバスに戻ってくる。
又、彼女達の話は日本全国の旅行と何処そこのレストランの何々がおいしいとか、本当に楽しそうだ。
日本の高齢者はやはり裕福なのであろう。
何も買わない私は安い費用でかにを満腹し、若い頃の思い出に一日浸ることが出来、裕福で元気なオバチャン達に感謝、感謝だ。