
この二、三日のインターネットで2050年には「日本は極東の小国へ」、「日本はもはや先進国ではなくなる」とか「1人当たりGDPは韓国に抜かれる」など衝撃的であまり聞きたくない言葉が飛び交っている。
それは4月16日、経済団体連合会傘下のシンクタンクである21世紀政策研究所が2050年までの日本と世界50ヵ国・地域の長期経済予測を発表したためだ。
それによると、日本は人口減少や高齢化の進行などの影響で、2030年以降マイナス成長に落ちこみ、最悪のケースでは先進国から脱落する可能性があるという。
報告では
1.先進国平均並み(基本シナリオ1)
2.失われた20年が続く(基本シナリオ2)
3.財政悪化による成長率低下(悲観シナリオ)
4.女性が労働に就く割合が高まる(労働力改善シナリオ)
のケースに分けて経済成長率などを試算している。
その結果「基本シナリオ1」によると、
2030年代からマイナス成長に転じ、50年には現在世界3位のGDPが4位に落ち、その規模は中国と米国の約6分の1となる。
1人あたりのGDPも世界18位と韓国(14位)に抜かれることになってしまう。
また、成長率が最も下振れする「悲観シナリオ」では、
GDP規模は世界9位となり、中国、米国の約8分の1に縮小してしまう。
1人あたりのGDPでは、ソロバキア、ポルトガル、日本、ポーランド、ハンガリーと並ぶ世界28位だ。これが現実のものになると。
わが国は、まさに「極東の一小国」に落ちこむ。
と警鐘を鳴らしている。
そして、このシミュレーションの結果を踏まえて、報告書では大きく分けて4つの分野で提言を行なっている。
1つ目は人材の分野だ。
女性や高齢者の労働参加を促進したり、教育現場の工夫などを利用して人材の強化を推進し、「全員参加型」の社会をつくること。
2つ目は、経済・産業分野でアジア太平洋地域の活力を取り込み、わが国経済の成長力強化を求めている。
3つ目は、今まで痛みを恐れて先送りしてきた、税・財政・社会保障の改革の早期実行。
4つ目に、日米関係を主軸とした国際秩序の構築。
を提言している。
これらの提言はいずれも、当然と言える提言であり、「誰でもわかっていることを着実に片づけることこそ、わが国にとって最も必要なこと」であると言いたいのであろう。
詳細は「21世紀政策研究所」より100ページを越える報告書だが是非読んでいただきたい。
さて報告書にあるように「税・財政・社会保障の改革」が喫緊の課題であること誰にも疑いないことだが、これらの課題は、いざとなると既得権益層と迎合したポピュリズム走り、痛みや不利益の調整を避けてきた政治家達に先送りされてきた。
ここに来て、現野田政権は消費税に関しては不人気になることを顧みず不退転の覚悟で取り組むと表明しているのは評価できる。
野党も国を想う政治家として、揚げ足やただ反対だけでなく真面目に早急に審議してほしいものだ。
だが、ここに来てさらに「原子力発電問題」が加わった。
原発休止により年間3,4兆円の借金が嵩み、火力発電による環境悪化問題深刻化などにより
このままではこの報告書より更に最悪な状況の到来が早まるのではないかと思える。
大阪の橋下市長は「原発を止めて困るのは電力業界と経済界だけだ」と言い切っている。
本当にそうだろうか、市長として市民に「安全で安定した、豊かで健全な生活環境」を確保することが責務と思うのが・・・。
電気代値上げもダメ、そして原発再開に無理難題を押し付け一部の人には格好よく拍手喝采かもしれないが、一弁護士の発言ならまだしも270万人もの市民の生活を預かる市長としてはどうかと思う。
このままではこの夏も関西電力管内は電力供給がかなりタイトになると思え、折角上向いてきた受注を如何に品質を確保しながら顧客に満足して貰えるか苦慮する中小の経営者や、子育てや病人の看護を涼しい安定した環境でと願う人は多いはずだ。
急遽稼動させる老朽化でリタイヤした火力発電所の突然の故障による大停電の発生なども杞憂するし、
又、原発をゼロとして化石燃料による発電に切り替えると大気汚染に起因する年間死亡者は3000人も増加する(藤沢数希氏著「反原発の不都合な真実」)との報告もある。
原発をなくせば日本はもっと安全になると考えるならば一方では火力発電による環境汚染による増加するリスクも合わせて考えるべきであろう。
特に政治家にはポピュリズムに走らず国民や市民全体のことを考え合わせ難しく困難である判断、や決断が求められていると思うのだが。
我々国民も感情に走らず、国の将来をイメージし、今、何が必要なのか考えなければならない。
国民も政治家も変わることが出来なければこの報告書に書かれている将来が待っていることを覚悟しなければならない。