
最近の世界の市場の激しい動きを見ていると、金融緩和で溢れたジャブジャブなマネーが、あたかも地球上空を覆う小さな虫の大群のように、なにかの外部の動きに一斉に反応し、急激に方向を変えて、別地に着地して叉離陸するようなことを繰り返しているように見える。
先進国の金融緩和策は新興国にお金が流れ込み株高、通貨高をもたらした。
日本では昨年末からのアベノミックス効果に日銀の異次元緩和により期待先行で急激な円安、株高となった。
2012年の6月から今年5月までの日経平均の株価上昇は83%、為替は25%も安くなった。
1986年からのバブル期でも年間株価上昇は60%前後のこと。
最近の市場変化の異常さが良くわかる。
そして、5月22日、6月19日のバーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長の量的緩和の縮小発言が国際マネーの変調を呼び起こした。
議長の最初の発言から約1ヶ月間の新興国の通貨の下落は
ブラジル 9.7%
メキシコ 7.0%
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トルコ 4.5%
と大きく下落し、更に株安、債券安のトリプル安症状を示している。
通貨安が物価高を招き、ブラジルやトルコでは大きな民衆デモも起こしている。
日本においても5月23日には1143円安と歴代11位の下げ幅を記録した。
その後も株安・円高は止まらず、日経平均は5月22日から直近安値を付けた6月13日までの下落幅が3100円を超え、下落率は約20%に達した。
円は6月13日に一時93円75銭と、103円台の安値をつけてから3週間で10円近くも上昇した。
だが、最近は米国と日本はなんとか国内の経済成長が期待できると株価も為替も安定しつつあるようにも思える。
心配なのはお隣の韓国、中国の2カ国だ。
先週末22日の株価が正直に表していた。
日経平均株価が反発したのに、上海総合指数は年初来安値を連日更新し、韓国総合株価指数も年初来安値となった。
韓国は永く続いた日本の経済低迷を尻目にウォン安誘導による経済発展で、日本は元気がないとか、前大統領の竹島上陸、天皇への侮辱発言など日本を蔑視、嘲弄してきたが、ここへ来て状況が一変している。
バーナンキ議長の一言で、韓国の債券市場は債券を買人が居なくなりパニックに陥った。
韓国総合株価指数は連日、年初来安値を更新し、韓国経済の先行きを懸念して、米国の金融緩和で流れ込んでいた外国マネーが流出に転じている。
韓国株の30%超を保有する外国勢が売りに転じたのだから市場はひとたまりもない。
スマートフォンの販売苦戦が指摘されたサムスン電子をはじめ、代表的企業の株価が値崩れしている。
ウォン安となったが、外国マネー引き揚げに伴って、企業の資金繰りが一段と苦しくなり、株、債券、通貨のトリプル安となっている。
日本との間で結んだ通貨スワップ(融通)の一部(30億ドル、残りは100億ドル)は7月3日に期限を迎えるが、韓国からの要請が無く、延長しないことになったという。
事態を率直に認めて延長を要請すればよいものを、規模が小さすぎるなどの理由をつけて断っている。
変なメンツがそれを許さないのだろうか。
最近の韓国経済は外交面と共に中国への依存度を強めている。
日韓関係の冷え込みを機に、韓国は外貨融通を受ける先を中国へと移した結果、外貨の手綱は中国に握られることになった。
更に、朴槿恵(パク・クネ)大統領は27日からの訪中で経済援助と共に中国にスワップ拡充も申し入れるのであろう。
だが、その中国が大きな金融システム不安にさらされており、韓国を助けるなどの余裕はなさそうだが・・。
中国では、シャドーバンキング(影の銀行)と呼ばれるノンバンクを通じた信用膨張が、大問題になっている。
採算を度外視した地方政府の開発投資などに資金が流れ、潜在的な不良債権の山をこしらえている。
不良債権の規模がどれぐらいまで膨らんでいるのかが不透明なことが市場の不安を誘っている。
貿易統計で輸出の「水増し」問題があったことなどから、当局の出す数字に対する不信感が高まっており当局が公表した不良債権総額への信頼感が揺らいでいるのだ。
一部では、その規模は中国の外貨準備高に匹敵するおそれもあり、その処理のため米国債を売り始めたとの見方もあり、米長期金利の上昇が加速しかねないと、市場の不安を誘っている。
由々しき問題だ。
日本国内には目立った売り材料はないとの見方が多いが、中国の不良債権問題が軟着陸に成功するか、強行着陸に陥るかは予断を許さない状態だ。
先日(23日)、楽天証券主催の投資セミナに参加した。
2500名も参加し、竹中平蔵、榊原英資、寺島実郎の各氏が講演する盛大なものであった。
各氏の論調は、アベノミックスは理論的に正しい、
ただ、3本目の矢である成長戦略が具体化しておらず、
これからが正念場で、果敢な規制緩和と将来を構想した具体的なプロジェクトの発足が必須であると強調されていたのが印象的であった。