My Fortnight's Dairy

ようこそ私の日記に。ダイビングや旅行を中心に思いついた事柄をつれづれに書き綴ります

2014年03月

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先日、3月24日オランダ・ハーグで米中首脳会談が行われた。

米国が中国にウクライナ情勢で協力要請をしたものだが、中国は国内に新疆ウイグル、台湾問題等を抱え、うかつにクリミアの住民投票を認めれば民族問題に火がつきかねないため、中国から「中立」の態度の表明を得るのが精一杯であった。

だが、これと引き換えに日本および東南アジアの諸国にとって大変重要な事がやり取りされている。

この会談の共同声明で、オバマ大統領が「新型の米中両国関係の強化と構築」を宣言し、習国家主席は「米中両大国の新型関係」を強調し、「対決や衝突をなくし、相互尊重、ウィン・ウィンの協力」を築くことを力説した。


この「新型大国関係」は昨年6月ハワイでオバマ大統領と習国家主席の会談の時に中国が提案したもので、中国の主旨は表向きは、米中両国が共に大国として特別の絆を結び、国際秩序の運営に主導的な役割を果たすというものだ。

だが、その本音は、米中は対等であり、「米国は、中国が核心的利益とみなすチベットや新疆ウイグル両自治区、台湾などに口出しない。
その代わり、中国は経済や安保の共通課題について、米国に協力する。」
というもので、中国の核心的利益には南シナ海、東シナ海も入るであろうし、米側としては受け入れることは出来ず、このときは軽く受け流した。


しかし、一年も経たないうちに、米国は何故か中国の腹黒い意図を承知しながら、中国の言う「新型大国関係」の話にのるような態度を見せたのだ。


国際ルールを守らず、捏造と恫喝と暴力的な振る舞いで周辺国に脅威を与えている中国がどんな国際秩序の運営を図れるというのだろうか?

中国はインド、パキスタン、ロシア、北朝鮮の4つの核保有国に囲まれ、さらに尖閣問題、南シナ海やインド国境など難しい国境問題に直面している。

加えて国内では環境破壊、経済格差、台湾、国内移民、汚職、人権侵害、新疆地域やチベットでの民族独立問題など多くの内政問題がある。

こんな国が米国と世界を二分して、対決や衝突がなく、相互尊重し、ウィン・ウィンの世界を構築できるはずがない。


小説の世界では中国がからむ近未来のシナリオは中国が突然東南アジア諸国に武力侵攻し、米国との開戦となる話がほとんどだ。

最近読んだ本でも

「米中開戦 1~4」トム・クランシー著 新潮文庫刊
「中国軍を阻止せよ 上下」ラリー・ボンド著 二見文庫刊

共に中国の南シナ海強奪を切っ掛けに米国を巻込んだ世界大戦を描いている。

簡単に内容を紹介すると

「米中開戦」は最近急逝したトム・クランシーのジャク・ライアンシリーズの作品で2014年1月13日のブログで前半の1,2巻について触れたが、今回後半の3,4巻も出版されたので改めて記載するが、

強力な軍事力により、中国は一方的に南シナ海を封鎖宣言し南シナ海を強奪し、インドの航空母艦が海域に侵入したとたん、対艦ミサイル四発を発射した――。

その一方、中国のサイバーテロによる、米国全土の都市インフラを始め、金融システム、原子力発電所、軍事偵察衛星へまでの陰湿・巧妙・非常で激烈な攻撃に襲われたジャック・ライアン米国大統領が決断を下す・・・。

本著はサイバー空間での戦いを中心に据えた軍事・諜報・謀略・政治小説である。



「中国軍を阻止せよ」は、以前私のブログでも紹介した「レッド・ドラゴン侵攻シリーズ」で中国による侵略戦争を書いているラリー・ボンドの作品だ。

前作「レッド・ドラゴン・・」は温暖化により飢餓が進む中国はベトナム軍が中国へ侵攻したと口実をつけ、肥沃な農地と豊富な海洋油田を持つベトナムへ侵攻し、アジア全土を制圧しようとする野望いだく中国とそれを阻止しようとする米国の話だ。

今回の「中国軍を阻止せよ」は中東からの石油資源の減少に悩む中国は南シナ海の資源に目をつけ、強力な戦闘攻撃装備を持つ巨大な石油プラットフォームを密かに建造し設置しようと計画する。

それ察知した日本は、関係諸国(インド、韓国、ベトナム)と「沿岸同盟」を作り中国の作戦を阻止するため、密かに中国に向かう巨大タンカーや商船を次々と攻撃、撃沈していく。

「沿岸同盟」の動きを察知した中国は同盟国の主要都市にミサイルを発射する・・・。

不干渉の立場をとっていたアメリカは戦いをやめさせるために原子力潜水艦にある指令を出す・・・。



この小説では米国は不干渉の立場で、中国の不穏な動きを一切掴んでいない。

先日の中国との「新型大国関係」で、米国はアジアでの中国のすることには口出さないとする関係をいみじくも表している。

2年ほど前に書かれているため、韓国が日本との同盟に参加するというのはご愛嬌であるが。

いくら米国が中国との経済の結びつきが無視できなくなったとしても、中国はちょっとスキを作ると強引で暴力的な手段で我が物し、それを既成事実化してしまうので、この「新型大国関係」は本当に油断できない。

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厳しい寒波の中、2月初めに行ったチュークでのダイビング写真の整理もそっちのけで笹本稜平氏の小説に没入していた。

笹本氏の小説に嵌まった切っ掛けは 昨年末、書店の棚の中の分厚い「遺産」を何気なく手に取ったことである。

アクション、冒険小説が好きな私だが、ほとんどが海外の作家のものが主体で、笹本氏の小説は初めてであった。

だが、この「遺産」は、私の2014年1月27日付けのブログでも紹介したように、海洋冒険ロマン小説だが、それだけで終わっていなかった。

日本から2000km、太平洋の真ん中に眠るマニラ・ガレオン船とこの船と運命を共にした大航海時代に海に生きた一日本人とその子孫である若い考古学者とのの魂の邂逅を描き、

さらに水中考古学の取り巻く世界や、地震に火山、新島誕生に国家間の権益争いにも触れながら息もつかさぬストーリーの展開に感嘆させられ、一遍に好きな作家の一人となってしまったのだ。

氏は、調べてみると、海洋と山岳を舞台にした冒険小説と警察のミステリー物を多く執筆しており、「遺産」に引き続きインターネットで購入し、読んだ本が

「その峰の彼方」2014年1月発刊 文芸春秋刊 1900円
「太平洋の薔薇 上下」2006年3月発刊 光文社刊 各667円
「時の渚」  2004年4月発刊 文芸春秋刊 619円

である。

「太平洋の薔薇」は第6回大藪晴彦賞受賞作品で
「時の渚」は第18回サントリーミステリー大賞・読者賞のダブル受賞作品である。

各本の内容を紹介すると


「その峰の彼方」は

孤高のクライマー・津田悟は北米大陸最高峰・マッキンリーに零下70度にもなるという厳冬の最難関といわれる未踏ルートに単身挑み、消息を絶てしまった。

津田はアラスカで山岳ガイドとし高く評価されて、地域、仲間たちからの人望も高く、愛する妻は子供を身ごもり、彼が企画したアラスカを舞台にした大きなビジネスも花開こうとしていた、まさに順風満帆のこの時期に、なぜ今、彼はこのような無謀なチャレンジを行ったのか。

親友・吉沢をはじめとして結成された捜索隊は、やがて津田の脱ぎ捨てられた上着などの驚愕の生の痕跡に接する。

彼にいったい何が起きているのか? 無事生還できるのか?


捜索隊や周囲の人たちの言葉や行動を通じて、彼らが如何に津田を愛し、信頼していたか、そして彼の「生きること」への真摯な気持ちや行動が少しずつ明らかになっていく。

500ページにも達する長編だが、山岳という厳しい舞台を背景に人間の生き様を考えせられる素晴らしい小説だ。

是非読んで頂きたい。


「太平洋の薔薇」
は2003年の発刊で第6回大藪晴彦賞受賞作品である。

内容は

老朽貨物船「パシフィック・ローズ」の伝説の名船長・柚木静一郎は横浜への最後の航海で海賊に襲われる。

海賊の目的は、積荷や身代金ではなく嵐の海を航海できる技倆を持った船乗りを必要としたのだ。

だがその裏では、悪名高いテロリストが糸を引いていた。
乗組員の命を楯に取られ、柚木は無謀とも言える嵐の海への航海に挑んでいく。

同じ頃、ロシアでは100トンにも及ぶ、史上最悪の生物兵器が盗み出されていた―。

柚木を救おうと海の仲間たちが立ち上がる。
海上保安監でIMB(國際海事局)の海賊情報センターに出向中の柚木の娘・夏海は公私混同をいましめつつも父を救おうと情報収集に奔走する。

彼女の同僚や命令に違反してでも柚木を救おうとする海上保安監たち、海の仲間たちの団結力と果敢な勇気、そして熱き思ひに胸が打たれる。

30ページほどの最終章は感動した。

日本の海上保安庁の巡視船、アメリカの駆逐艦、ロシアの原子力潛水艦の乗り乗組員の登舷例のセレモニー、ロシア原潜艦長、米国大統領の柚木の勇気と友愛への感謝のコメント。本当に感動し、ほとんど涙を流していた。

海の仲間たちの勇気、絆に本当に感動する小説だ。


「時の渚」
笹本稜平氏警察物もよく書かれているのだが、2001年5月に発刊され、第18回サントリーミステリー大賞・読者賞のダブル受賞作品で氏のデビュー作ということで読んでみた。

内容は

元刑事で、今はしがない私立探偵である茜沢圭は、末期癌に冒された老人から、35年前に生き別れになった息子を捜し出すよう依頼される。

茜沢は息子の消息を辿る中で、自分の家族を奪った轢き逃げ事件との関連を見出す…。
やがて明らかになる「血」の因縁と意外な結末…。

そんな偶然が…といくつも続くのだが、やはりそのテンポの良さは本書以降の国際謀略やらサスペンス物やらに受け継がれているようだ。


犯罪を起こす人達の人間性の形成は血縁関係より先天的なものとして備わっているのか、あるいは生まれ落ちた環境などの後天的なものに影響を受けるものなのか?

作者はこの重いテーマをデビュー作から取り扱い、警察物のスピーディーな展開にのせながら「人間愛」に行きつくと述べている。


短時間に笹本稜平氏の長編小説を読み漁ったが、まだまだ読みたい著書がたくさんある。
楽しみだ。

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