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原油価格(WTI原油先物)が本年始めに100ドルを突破して歴史的な出来事であると騒がれたのはついこの間である。

それからも価格は止まることなく、あれよ、あれよという間に120ドルに近づこうとしている。

原油の実質価格は30~40ドル/バレルといわれているが、何故こうもかけ離れた価格がまかり通るのだろうか。

サブプライム問題以降、原油価格は1バレルあたり30ドル以上跳ね上がったが、世界の需給量に大きな変化が生じたわけではない。
又、1973年の第一次石油危機のように、OPEC(石油輸出国機構)の価格カルテでエネルギー価格が急速に上がった状況とも異なる。

確かに原油価格の高騰の要因として考えられるのは
・需用の増加:中国やインドを中心とした世界的な原油需要の増大と、これに伴う原油を生産する側の産油国では、需要拡大に見合う投資が進まず、余剰生産能力が低下し供給懸念の拡大。

・地政学的リスク:世界の原油確認埋蔵量の8割が集中する中東地域は、多くの戦争を繰り返してきた地域だ。

・投機資金の大量流入:株,債権の信用が収縮する中、国際的な投機資金が原油市場に流れ、原油価格が高騰する。投機資金などの流入により、原油市場は価格の変動が大きく、ハイリスク・ハイリターンを追求する投機家にとり、とても魅力的な市場となっている。

これらの要因はそれぞれ、どの程度価格に影響しているかといえば

需要の増大は10~20%
地政学リスクは投機的な買いを誘起している程度
投機要因は50~60%
といわれている。
要は、投機的要因で原油価格が倍ほどになってしまったということである。

原油の価格は、1970年代は、OPECなどの産油国が一方的に決める「公定価格」だった。

ニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)はこれに対抗し、需給に応じた価格決定を目指して83年にウエスト・テキサス・インターミディエート(WTI)の取引を始めた。
 「取引の透明性を高めるには、価格決定にかかわる参加者が多い方が良い」という狙いが支持され、WTI価格は、90年代半ばから世界の原油の指標となった。

07年夏以降、70ドル台から100ドル超えへと一気に原油価格が進んだ背景には、米国におけるサブプライムローン問題の深刻化があった。

株式や債券の信用力が低下した結果、原油市場に投機資金が流入し、さらにFRBの相次ぐ政策金利引下げが過剰流動性を発生させ、大量のマネーが原油市場に殺到したことが原油高に拍車をかけた。

原油先物市場は市場規模10兆円で、株式市場、債券市場とは比較にならないほど小さい。
特に原油価格の指標となるWTI原油は世界の石油消費量の僅か0.4%、生産量は日量30万バレル過ぎない。
こうした市場に大量の資金が逃げ込み原油高を招く構造となっている。

さらに、米国は20世紀後半から金融の自由化、証券化を進め、デリバティブ(金融派生商品)など高度な金融工学、ヘッジファンドなどの新たな投資主体を発達させたが、 一方モノづくりなどの実物経済を軽視する風潮ができ、石油メジャーの経営にもこれらが影響している。
 
石油メジャーの株主は70年代の石油ショック時と違って金融機関、投資信託、年金基金などの機関投資家が大半をしめ、それらの投資家は5~10年のリードタイムを要する石油産業本来の長期的な利益を待てず、より短期的な株主利益の拡大、企業価値の最大化を求める。

その結果コスト回収に長期間を要する新規油田や利益率の低い石油精製への新規投資比率を極限まで低下させ、自ら将来の成長への芽を摘むことになり、将来の供給不安をもたらし原油高を押し上げている。

一方、産油国側としては、原油価格の上昇によって自国の資源の希少性と価値に目覚め、ロイヤルティーの引き上げ、外国石油資本の排斥などの資源ナショナリズムを強めている。

このことは、原油価格が上昇しても新規油田開発のインセンティブにならず、あえて新規に供給を増やすより、何もせず、ただ待てば原油価格が上がり資産が増える構造が出来上がってしまっている。

現在の原油価格の高騰は、WTI原油先物市場が世界の原油価格を指導し、投機資金が原油は儲かるものと考え、大量の資金投入を続ける限り、これからも、かなり長く続くものと考えられる。

ただ、米国のリセッションに伴う世界の景気減速による石油需要の減少や、省エネ・石油代替の進展、バイオ燃料の導入拡大など、一方、開発投資の積極化により、原油供給能力の増加ペースを加速させれば、投機で高騰した分を削減して60ドルぐらいになる可能性もある

いずれにしても、現在の原油価格、ひいては世界の経済の運命は、ニューヨークやロンドンに流れ込む投機マネー、そして中東諸国やロシアをはじめとする多極化した新たな資源国の手に握られ手いるのだ。