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10日の日経新聞に「インフレ圧力 世界で 新興国は社会不安、株価も下落・・経済の安定揺らぐ」と言う記事が掲載されていた。

「世界でインフレ圧力が急速に高まっている。ニューヨークの原油先物相場は連日高値を更新、9日には一時一バレル126ドル台に乗せた。
エネルギーと食品の大幅な価格上昇は新興国などでは社会不安を招き、世界経済安定も揺さぶり始めた。

米国などの景気減速を受けて当局は金融緩和に動いたが、これが投機マネーを刺激して資源高となる悪循環を発生させている」とある。
資源国でないアジアやアフリカ各国は輸入を通じて物価上昇の直撃を受けている。

たとえば、ベトナムは四月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比21.4%も上昇した。これは小麦や豚肉が二倍以上上昇したためとの事。

景気減速に対応した利下げや資金供給によって投機マネーが商品市場に流れ込み、さらにインフレを加速させる悪循環の様相がつよまっている。
“当局が金融緩和”→“商品への投機過熱”→“実体経済が悪化”となる構図である。

日本においてもニューヨーク市場の原油先物(WTI)価格の上昇に伴い、東京市場のドバイ原油スポット価格は年初からの上昇幅は一バレルあたり23ドル前後。

これに日本の原油使用量二億四千万キロリットル(2007年、約15億バレル)を掛け、為替変化調整すると、年初からの原油価格上昇に伴う日本全体のコスト負担増は年間換算で約三兆円になるという。
 
原油だけでこの金額だ、ほかに石炭、鉄鉱石などの資源や小麦粉、玉蜀黍などの食料品も価格上昇し一年で二倍、三倍となったものも珍しくない。

何故こんなことが起きるのだろうか。
勿論新興国の発展による消費の高まりで資源の需要の増大も要因の一つであると思うが、主たるものは、米国が手に汗するもの作りを軽視し、お金がお金を生む金融商品のマネーゲームに奔走する社会構造を作り出し、またこれをもてはやす社会としてしまったことにあると思う。

機械工学科を卒業し、製造会社に就職して、爾来40年、ものづくりの現場で製品の開発、品質向上や数パーセントに満たない歩留まり向上のためのプラント設備の改善、改良設計をこつこつと積み重ねてきた私としては、
今日の日本の製造業のコスト、品質の技術競争力の高さにほんの一部でも加担できたと自負しているが、最近の技術者は、資源価格の驚愕上昇、短期間の大幅な為替変動など見ていると、もうあほらしくなり、こつこつとしたコストダウンなどやってられないのではないか。

このまま行くと全世界レベルでの経済システムの崩壊があるのかもしれない。

本山美彦氏著「金融権力・・グローバル経済とリスク・ビジネス(岩波新書)」を読んだ。
この本によると、世界経済を揺るがしたサブプライムローン問題は、「カネこそが商品」となった現在の投機的金融システムの危機と限界を明らかにしたとある。

この「投機」と
は丁とか半かといった非常に単純なギャンブルを、少しばかり理論的に高度化したものといえるが、ギャンブルであればそのゲームに参加する人たちのみが影響を受ける。
ギャンブルで勝者が大金持ちになろうが、敗者が没落してしまおうと、ギャンブルに参加してない人々には、何らの利益も受けないかわりに、少なくとも被害を受けることはなかった。

ところが、現在の金融ゲームは、ギャンブルに参加していない一般市民にも、たとえば石油投機による灯油価格の異常な高騰という形で被害を受けている。

ギャンブルをしていない一般市民をもギャンブルに巻き込み、そして、ギャンブルの最終的ツケを払わされている。
また、現代の金融システムの特徴は異常なまでの「業績連動報酬制度」をとっており、これが一攫千金のチャンスを狙ってあくどい金融まで手を染めることになる。
ゴールドマン・サックスのCOE(最高経営責任者)の2006年のボーナス以外の報酬は7000万円、ボーナスは63億円もあった。
つまり、報酬の殆どは、業績連動型のものである。
これでは、先のことは考えず、今、自分が儲かる利殖
に走るはずだ。
それで、サブプライムローンで不調となった企業を公的資金で救済しようという話にすごく抵抗を感じるのは当たり前だ。

題記の「お金儲けは悪いことですか!!」は某ファンドマネージャーが記者会見でのたまわった有名な言葉ですが、こう尋ねられた著者は「悪いことです。
人を威嚇する方法で得たあなたの巨額の儲けの影で、無数の人々が路頭に放り出された」と答えようと書いている。

現在のリスク売買を主体とする金融ゲームは、どのような理論的意匠を施されようとも、人間の生活を根本的に破壊するものであることを。

いま求められているのは、「自由」の美名の下で金融ゲームに走る金融権力を以下に制御するのか、という社会の知恵である。と結んでいる。