イメージ 1
最近証券取引所以外での場所で成立した取引が急増している。
 取引所外での2007年度の売買代金は前年度比16%増の49兆6000億円となり、過去最高を更新した。 株式取引全体に占める比率は6%に上る。

証券取引所に取引を集中させる義務は、金融ビッグバンにより1998年12月に撤廃され、証券会社は投資家と1対1の相対で売買したり、証券会社の社内システムで注文付き合わせる「ダークプール」や、金融庁の認可が必要な私設取引システム(PTS)で売買の仲介をしたりすることができるようになった。

 取引所外取引は年度ベースの統計が残る02年度の売買代金は約14兆円だったが、07年度では50兆円に迫り、この五年間で約三倍に膨らんだ。
取引所外取引の大部分を占めているのは,外資系証券を中心にした「ダークプール」取引で、これが急加し47兆円強にもなっている。

証券会社が自社のシステムを駆使して低コストのサービスを提供する仕組みが投資家の人気を呼んでいるのだ。

ここで聞きなれない言葉「ダークプール」(Dark Pool)とは直訳すると「見えない流動性」、つまり基本的には取引市場に公開されていない流動性や取引参加者等の匿名性が確保された取引環境を意味する。

ダークプールはわずかな注文でも株価が動きやすい中小型株の売買などに向いていて、現在は外資系証券が提供しているが、個人では利用出来ない。注文を出せるのは機関投資家や事業会社である。

取引所外取引のもう一つである私設取引システム(PTS)は証券会社が取引時間や手数料など独自に設定することが出来、最近インターネット証券の市場開設が相次いだことで、2007年度は2兆1000億円と2,5倍に増加した。

従来は個人向けの夜間取引サービスが中心であったが、昼間の取引もサービスが開始され、今後の伸びが見込まれてる。
海外では日本のPTSに相当する電子取引ネットワークでの取引が全体の3割以上を占めており、既存の取引所を脅かす存在となっている。

取引所外への売買注文が流出していることなどを受け、東証は注文処理速度を大幅に速めた次世代のシステムの開発を進めるなど対抗策に乗り出している。

「ダークプール」が人気あるのは、売買注文に価格制限がないのもその一つだ。

例えば東証では一株の値段が十万から三十万円での場合、千円刻みでしか売買注文が出せない。
顧客から預かった資金の効率運用が求められる機関投資家にとってコストが下がる利点は大きく、海外からも「東証は個別銘柄の株価の刻みの幅が大きく、それだけ投資家側に不利になりやすい」という指摘もあるという。

「ダークプール」には東証にない自由度(規制がないのだから当たり前)が大きく、売買コストも低いこともあり、人気があり急増しているのは理解できるものの、なにか割り切れない。

「ダークプール」は一部機関投資家や事業法人だけのものであり、一般投資家は参加も出来ず、情報も開示されない。

英米の金融機関がお金を持った一部の少数の投資家のためのみに利便性があり、低コストとなるシステムをつくり、莫大な利益をあげ、一般市場の動向を我が物のように左右するやり方には腹立ちを感じる。

5月の私のブログ「原油高騰の謎」にも書いたが、規制がないロンドンのICEでの一部の機関投資家間での相対取引がいたずらに原油価格を引き上げる構図を作っているのと同じだ。

「株式取引は一物一価ではなく、一物多価の時代に入りつつある」と指摘する人もいるが、我々一般投資家には「ダークプール」の暗い闇の中に潜ってしまった株取引情報は一切見えず、情報格差が広がっている。一部の人のための情報でなく、正しい「市場の動向」は同じ土壌でやり取りすることで初めてできるのだ。

株価が一つでないとすれば、どの価格が最も妥当なのか。効率性の追求から生まれた一部の人のための取引所外取引が市場の価格形成機能を果たすなら、現在のシステムは多いに問われることになる