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今年の正月は大変静かだ。

ダイビングを始めて5年近くになるが、正月はいつも西表島で潜っていた。

だが、今年は、東京の実家の母親が、昨年の11月に入院しため、東京/神戸を何度か往復したりしている間に大寒波も来襲したりして、ダイビングの計画がまったく萎えてしまいどこへも行かない静かな正月を送ることになった。

ということで、静かな正月を読書三昧ときめこみ、
年末近く購入した10数冊の本の中の一冊がここで紹介する、森 功氏著「血税空港」だ。

普段東京へ行くには近くの神戸空港を利用し便利さを感じているが、しかし、関空、伊丹、神戸の関西3空港問題、羽田、成田のハブ化問題、さらにJALの再建問題と、最近日本の航空行政の問題が取りざたされている中、タイミングよく本書が発刊された。

本書の紹介文に

「「オープンスカイ」(=空の自由化)の世界的潮流でアジア各国が空港を整備し飛躍するなか、日本は致命的な後れを取った。

羽田空港は頭打ちの国内線中心。
米航空会社に占められ新規参入枠がない成田空港は、「アジアの玄関口」の座を周辺諸国に奪われて久しい。

鳴り物入りでオープンした関西国際空港をはじめ、全国津々浦々99港のほとんどが火の車だ。

その補填のため毎年5000億円もの税金が垂れ流し。
そんな航空行政の呆れた実態を緊急告発。」

とある。


狭い日本の国土に今年開港するであろう、茨城空港をいれると99もの空港がある。

数は世界でもトップクラスで、1万平方Kmあたりの空港が2.6は英、独に次いで世界3位。
2.0の米、0.2の中国をはるかに上回る。

これは、道路特別会計と同じような「空港整備特別勘定(空整会)」という特別会計という曲者によって
「わが県、おらが村にも空港を」と空港整備という名の下、
ばら撒き建設土木行政を支え、むやみに造り続けられた結果だ。

空整特会はプール制となっていて空港ごとの財務諸表が作成されていない。

しかし、世間の批判から、2007年4月に9空港について2005年度の試算を公表された。

仙台、羽田、新潟、広島、高知、福岡、那覇の7空港が赤字で、新千歳、大阪の2空港が黒字だった。

一方、民間による試算によると、羽田、新千歳、大阪のみが黒字で、他の空港はすべて赤字であるという結果がある。

羽田空港の滑走路拡張費用が少なくなった中で、
役人の無計画、無策で作った空港の赤字の後始末にわれわれの年間5000億もの税金が当てられている。

空整特会の原資は飛行機の着陸料など空港使用料や航空機燃料税だ。

ガソリン税が道路建設に回されるのと同様、空港整備名目で全国の空港にばらまかれる。国内だと1人1回の利用で3000円だという。


いい加減にして欲し、日本の高い国内運賃はこんなところにある。


役人というのは、無尽蔵にあると思っている人のお金を使って、無責任かつ非積極的な仕事をし、
自らは安泰な生活をしようとするのは、どこの国でも本質的には同じと思うのだが。

だが、他国の役人たちは、同じアジアでも、シンガポール、韓国、タイ、台湾、中国などではいち早く航空業界の先を読み、ハブ空港構築へ舵を切り替え成功している。

日本だけが取り残されている。

他国の役人に出来て、日本の役人では出来ない理由はなんだろうか?

この期に及んでも、役人たちは、「国内線は羽田、成田は国際線」にこだわっている。

自分たちの非を認めないのと、地方空港にとってドル箱である羽田線をなくすと、赤字の増大と、空港の存在そのもの問題が顕在化されるのを恐れているのだ。

また、国際線は「成田」という割には、40カ国以上の国から乗り入れを要請されているに、どうしようもしない。


成田と同程度の面積で2本の滑走路を持つ、ロンドン・ヒースローは年間50万回の発着で6700万人の利用者だという。
成田は22万回で3400万人だ。

この違いは、まずは、成田は騒音の関係で夜間は飛べず(いまどきの国際空港で24時間でない)17時間運営であるためである。

しかし、17時間空港でも運用次第では30万回までいけるはずという。

なぜ22万回しか発着できない理由は

 ・米国の権益が大きすぎるため、融通がきかない
   普通国際空港では自国枠は半分ぐらい、成田は39%

 ・昼間でも時間帯により騒音のため発着を少なくしている

 ・2本の滑走路の使用率を航空会社別に制約している
   普通大型機は2分間隔、小型機は1分間隔で発着しているが、
   小型機は短い滑走路を優先的に使えば効率が上がるが、
   滑走路の使用枠制限があるため難しい

いずれも役人が誰かにいい顔をするために決めたことだろうが、
これからでも役人が熱意を持って、少しでも努力すれば解決するはずだが・・


正月早々愚痴っぽくなったが、今問題なっている航空行政の実態を知るにはいい一冊です。


   「血税空港」 森 功著 幻冬舎新書 760円