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先日、仕事を休んで平日に、神戸市立博物館で開催中の<イタリアが愛した美の遺産>と銘打った「トリノ・エジプト展」へ行ってきました。

昨年の夏、紅海へダイビングに行った帰りにカイロのジプト博物館を見学したが、
世界のエジプト古代遺跡専門の博物館として双璧すると言われる「トリノ・エジプト博物館」がずぅーと気になっていて、今回やっと見ることが出来ました。

「トリノ・エジプト展」は<日本におけるイタリア2009・秋>の主軸として計画されたもので既に昨年8月から東京、仙台、福岡と開催されて、今年の3月より神戸で5月末まで開催されているのだ。

今回の「トリノ・エジプト展」はイタリア・トリノにあるトリノ・エジプト博物館が世界に誇る3万数千点ものコレクションのうち、120点が日本で初公開されている。


今回の展示のメインはイビの石製人型棺の蓋やセクメト女神像をはじめとする2メートル級の大型彫像、ミイラ、彩色木棺、パピルス文書などが出展されている。

トリノ・エジプト博物館では、美術監督としてアカデミー賞を2度も受賞したダンテ・フェレッティによる、
大型彫像ギャラリーを照明と鏡を駆使した印象的な空間に仕立てているが、そのドラマティックな演出が神戸の展示でも再現されている。


さて、本題の展示内容について触れると

展示室の入り口は明るいが中は真っ暗だ。
目が慣れてくるとスポットライトに照らされた巨大な像たちが暗闇の中でポツン、ポツンとくっきりと浮かび上がってくる。

各像の周りには大きな鏡が配置され、映し出された像の後姿を見ながらながめる像の姿は神秘性をさらに高めるにくい演出だ。


今回の展示のハイライトはやはり「アメン神とツタンカーメン王の像」だろう。
コレクションされてから今回初めて館外へ貸し出されるという貴重な像だ。

2mを越す白い石灰岩の像だが、左の座っている大きな像が、ツタンカーメン王が崇拝するアメン神で、王は、向かって右の小柄な立像である。
王の右手は、背後から敬服を表すようにアメン神の肩を抱いている。

ツタンカーメン王の父と考えられるアクエンアテンは、太陽神アテンを唯一神とする宗教改革を断行したが、失敗に終わった。

そのため、それに続く王達は伝統的な神々、とりわけテーベの主神であるアメン神に対して再び忠誠心を示す必要があったのだという。

見どころは尽きない。

「イビの石製人型棺の蓋」は変性硬砂岩という物で出来ているというが、金属のように黒光りした光沢があり、緻密なヒエログリフが全体に彫られている。

お棺の中から手を出して死者の体の護符であるジャド柱を握り締めている構造はなんともいえない。

私が好きなのは「ライオン頭のセクトメ女神像」だ。
セクトメは火を吐く戦闘的な、復讐の女神だが、像は滑らかな女性的な曲線で、陰影が強調され、より厳粛な雰囲気を醸し出している。
頭は人間とライオンの特徴を同時に見事に現している。


今回の日本での展示は120点。トリノ・エジプト博物館のコレクションは3万3千という。

昨年、芸術新潮の9月号「エジプト美術世界一周」でエジプト・コレクションを持つ世界各国の美術館の特集をしていたがそれによると

カイロ・エジプト博物館(180,000点)
ベルリン国立エジプト美術館(105,000点)
大英博物館(100,000点)
ルーブル美術館(60,000点)
メトロポリタン美術館(36,000点)

なぜ、かくも大量に、貴重な文化遺産が海外に流出してしまったのか?
いつもも感じていた疑問である。


大きくはナポレオンの時代に遡る。

1798年5月、ナポレオン軍はエジプトに遠征したが、このとき考古学者や歴史学者などを多数引きつれ、エジプトの遺跡調査を本格的に行った。

そして1799年にはかの有名な石の碑文「ロゼッタ・ストーン」もナイル河口の町ロゼッタで発見している。

国内事情によりナポレオンが帰国した後、戦局は悪化し、1801年にフランス軍は降伏する。

その際アレクサンドリア条約が締結され、フランスが発見した大半の考古学品が「ロゼッタ・ストーン」とともに英国に略奪されてしまった。

その後、各列強がエジプトの遺跡に強い関心を示し、当時のエジプトはオスマン・トルコ領で、太守ハマンド・アリが治めていた。

が、彼はよそ者としてエジプト古代遺跡には関心なく、発掘はパルタージュ(分有)方式で行われ、大量の文化遺産が海外に流失してしまった。



どこの世でも為政者がしっかりしないと文化遺産のみならず、国益まで失いかねない。

翻ってわが国は、“友愛”首相が選挙のためのばら撒き政策で国の借金を増やし、
国外政策では何も決められず、米国からはバカ扱い。中国からはカモ扱い。

何とかしないと国が危うくなる。

国民が選んだ党だが、次期選挙では賢い選択をしよう!!


参考図書
芸術新潮9月号  1400円
トリノ・エジプト博物館 朝日新聞社刊  2300円