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来年3月まで、本四高速が音頭をとり瀬戸内海エリアにおける24もの美術館がネットワークを作り、
参観者を増やそうとする計画が実施中である。

この計画に乗っかり、なんとかこの期間中に、これらの美術館を訪問してみようと先月決めたのだが・・・。

先月は、高速道路、本四連絡橋の料金が安くなる週末を利用してやっと2回行くことができた。


第一回目は 四国鳴門の「大塚国際美術館」
第二回目が 倉敷の「大原美術館」「児島虎次郎記念館」「倉敷市立美術館」である。


まず始めに、大塚国際美術館であるが、
神戸の自宅から近く何度か近くを通ることがあったが、今回まで、
豪壮な門構えと大塚製薬の企業色がプンプンしているのではないかと敬遠していた。


訪問してみて驚かされた、システィーナ・ホール、スクロヴェーニ礼拝堂や、ポンペイの壁画、最後の晩餐、ゲルニカなど
1,000点を越す世界の有名作品が原寸で真近で見られるのだ。

ここのコンセプトは世界の名画を写真に撮り、
原寸大で陶器の板(陶板)に焼き付けて展示する「世界初の陶板名画美術館」である。

「陶板名画は約2000年以上にわたってそのままの色と姿で残るので、これからの文化財の記録保存のあり方に大いに貢献する」
とパンフレットに謳っている。


美術館は地下3階~地上2階まで5フロアーもあり、私立では国内最大の美術館建築。

地下3階(小高い丘の上に建てられているため)から長いエスカレーターを登りきったところにエントランスがあり、
着くなりいきなり目にするのがヴァティカンのシスティーナ礼拝堂が再現された大空間「システィーナ・ホール」である。

ここには、今まで写真や映画でしか見たことがない
ミケランジェロの壁画「最後の審判」と天井画「天地創造」が高さ15m位はあると思われる空間に実物大で再現されている。
こんな身近に、じっくり対面できるとは本当に感激です。

この美術館の展示作品を紹介しようとしたらきりがない、
何しろ世界25カ国以上の美術館の一度は写真などで見たことがあるような名品を複製といえ、実物大で展示されているのだから。


ひとつ挙げるとしたら、歴史好きの私としてはポンペイで発見された「アレキサンダー・モザイク」である。

これは紀元前333年にマケドニアのアレキサンダー大王が
ペルシャのアケメネス朝最後の王ダリウス3世を撃ち破ったイッススの戦いを描いたモザイク画で戦いの様子が兵士一人ひとり細かく描写されている。

歴史の教科書でよく見かける絵であるが、こんなところで実物大のものに対面できたことは本当に感激であった。


一度は訪れてみるべき美術館である。


次に訪問したのは大原美術館である。

ここは近代工業の黎明期を駆け抜けた大原孫三郎(1880~1943年)が築き上げた白壁や格子窓の屋敷や蔵が軒を並べる「美観地区」の中心部にある。
 
荘厳なギリシャ風建築の本館玄関を入ると迎えてくれるのが児島虎次郎作「和服を着たベルギーの少女」だ。
     
孫三郎の西洋美術品収集の命を受け留学した児島が、
フランスのサロン・ナショナルニ出品して入選した作品である。
西洋美術を収集し、日本文化との融合を図ろうとする意気込みを感じさせられる。

大原美術館の代名詞のようになっているエル・グレコ「受胎告知」は、
パリの画廊で売りに出ているものを児島が偶然見出したが、
非常に高価ではあったため、大原に写真を送り、強く購入を勧め、購入されたという。

その他トゥールーズ=ロートレック「マルトX夫人の像」、ゴーギャン「かぐわしき大地」などの名品が児島によって購入され、日本に運ばれた。
     
1929年、児島が享年47歳で他界し、これを大いに悲しんだ大原は、
児島の功績を記念する意味をもって、その翌年に大原美術館を開館した。
     
日本初の西洋美術館であった大原美術館はニューヨーク近代美術館創立の翌年、
国立西洋美術館(東京)に30年近く先駆ける早さだった。

     

倉敷紡績2代目経営者の孫三郎は、繊維産業の隆盛を背景に美術館のほか、
近代的な病院や労働科学研究所など7つの研究所を開設している。


社会的良心と企業業績の拡大の両立を果たした、孫三郎の偉業や人となりは
城山三郎の「わしの眼には十年先が見える:大原孫三郎の生涯」に詳しく述べられている。

それによると
「余がこの資産を与へられたのは、予の為にあらず、世界の為である。余に与へられしにはあらず、世界に与へられたのである。 
余は其世界に与へられたか金を以て、神の御心に依り働くものである。」

どっかの国の私利私欲に汲々する強欲金融経営者に聞かせたいものだ。


「わしの眼には十年先が見える:大原孫三郎の生涯」
     城山三郎   新潮文庫刊 552円
「大塚国際美術館 100選」 2000円
「大原美術館名作選」  2000円