イメージ 1年明けの日経平均株価は週間で312円12銭(3.05%)上昇した。
米国の製造業景況感指数など改善を示す米経済指標が相次ぎ、円安に振れて輸出関連株を中心に上昇した。

2011年の出だしは中々好調にスタートした感があるが、今後も米国の景気回復期待とともに日本の景気回復を予想する識者は多い。

一方、経済の大国となった中国の動向が、世界の経済に与える影響は今後益々大きくなり、十分な注視する必要があると指摘している。


世界の経済、政治に大きく影響を及ぼすようになった中国だが、
日本では尖閣諸島問題以降中国を「好ましくない国」と思い人が80%を越し、アジアでも嫌われ、欧米からも異質な国として警戒されている。

中国は、1971年以降台湾に替わって国連に席を得て以降、自国の領有する空間を拡大してきた。

彼らの拡大政策を支えるのは「戦略的境界」という考え方だ。

戦略的境界とは、地図上の国境線のように固定化されておらず、
軍事力、経済力、政治力、社会や文化の力、国民の意思の力などを合わせた、国家の総合力によって変化するという考えだ。

大変迷惑な話で、中国が、中国自身の「動き」を理論化、正当化しようとするものである。


日経新聞に昨年後半から「米中せめぎ合うアジアの勢力圏(地図で読む地政学)」という特集記事が連載されていた。

これによると

中国の大陸内部から日本を見渡した視点の地図を見ると、中国にとって米国と軍事関係を持つ日本や台湾、フィリピンが「中国包囲網」を形作っているのがわかる。

中国は広大な陸地を持つが、北はロシア、西、南側は移動が困難な地理的状況にあり、東の海洋にしか拡大の余地が無く、そのため軍事力、特に海軍に力を入れ、虎視眈々と領土拡大を目論んでいた。

東西冷戦の時代では、西側はソ連、中国、北朝鮮といった共産勢力を封じ込むために、
日本列島から沖縄、台湾、フィリピンをつなぐ防衛ラインを「第1列島線」と、小笠原諸島からサイパン、グアムをつなぐラインを「第2列島線」と呼んだ。

これに対して、如何にこれを突破するかは、東側の戦略目標ラインになっていた。

中国もこれを戦略防衛ラインとしていたが、近年はこれを突破することを目標としてきた。

現在、中国海軍は第1列島線での影響力確保にメドを付け、さらに影響力の浸透を狙うにも太平洋側に活動範囲を広げつつある。


太平洋へ侵出するため、中国はベトナムやフィリピンなどが何世紀にもわたって領有し活用してきた南シナ海の西沙諸島と南沙諸島を、
突然、70年代から自国領だと主張し始め、両諸島を力ずくで奪い、実効支配してしまった。

日本の領土の尖閣諸島についても、日本政府は領有状況を1885年から1895年まで調査し、隣国の清国など、いずれの国にも属していないことを慎重に確認したうえ、領有化したが、
国連が1968年の海底調査の結果、東シナ海の大陸棚に石油資源が埋蔵されている可能性があることが指摘されて以降、1971年中国、台湾政府とも領有権を主張し問題化することとなった。

更に、中国は突然、1992年に「領海法」を制定し、尖閣諸島も、南沙諸島も、西沙諸島もその他全て中国領であると宣言した。

日本は1972年に日中平和友好条約で日本領土なのに、「尖閣諸島の領有権問題は子々孫々での解決という棚上げ案」を飲まされたというのに、わずか14年後に中国の領有化宣言である。

これに対して、マレーシア、ベトナムなどは毅然と文書で抗議しているが、煮え湯を飲まされた日本はただ口頭で抗議するにとどまっている。

日本の事なかれ主義、弱腰外交が中国を増長させているのだ。


これらの経緯を、櫻井よしこ氏は自著「異型の大国 中国」で
「詫びず、認めず、改めず 狡猾な仮面に隠された恐るべき戦略は?」と銘打ち、
中国の領土拡大への野望達成のための恫喝と欺瞞と捏造の繰り返しともに、日本政府の情けないほどの政治、外交の貧弱さを克明に記述している。

中国問題を論ずるには是非一読すべき本である。


近未来を予測するに、
年末に「レッド・ドラゴン侵攻」なる小説が発刊されていた。

単なる戦闘アクション小説だが、設定が2014年、温暖化により、
中国は食料危機に陥ると共にエネルギー資源の高騰、枯渇化のため、突然ベトナムに攻め入り、虐殺を繰り返し、ハノイをミサイルで火の海としベトナムの資源を奪い、ゆくゆくは日本をも我が物にしようとする話だ。

何か中国の領土拡大の戦略が映し出されているようで気になる小説であった。


大量消費をする中国が世界経済を左右している状況であるが、
景気回復も勿論大切だが、じっくり考えるべきことは考え、言うべきことは毅然と言える日本の政治、外交であって欲しい。


「異型の大国 中国」 櫻井よしこ著 新潮文庫刊 590円
「レッド・ドラゴン侵攻(上、下)」 ラリ-・ボンド著 
二見文庫刊 各790円