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先日、3月24日オランダ・ハーグで米中首脳会談が行われた。

米国が中国にウクライナ情勢で協力要請をしたものだが、中国は国内に新疆ウイグル、台湾問題等を抱え、うかつにクリミアの住民投票を認めれば民族問題に火がつきかねないため、中国から「中立」の態度の表明を得るのが精一杯であった。

だが、これと引き換えに日本および東南アジアの諸国にとって大変重要な事がやり取りされている。

この会談の共同声明で、オバマ大統領が「新型の米中両国関係の強化と構築」を宣言し、習国家主席は「米中両大国の新型関係」を強調し、「対決や衝突をなくし、相互尊重、ウィン・ウィンの協力」を築くことを力説した。


この「新型大国関係」は昨年6月ハワイでオバマ大統領と習国家主席の会談の時に中国が提案したもので、中国の主旨は表向きは、米中両国が共に大国として特別の絆を結び、国際秩序の運営に主導的な役割を果たすというものだ。

だが、その本音は、米中は対等であり、「米国は、中国が核心的利益とみなすチベットや新疆ウイグル両自治区、台湾などに口出しない。
その代わり、中国は経済や安保の共通課題について、米国に協力する。」
というもので、中国の核心的利益には南シナ海、東シナ海も入るであろうし、米側としては受け入れることは出来ず、このときは軽く受け流した。


しかし、一年も経たないうちに、米国は何故か中国の腹黒い意図を承知しながら、中国の言う「新型大国関係」の話にのるような態度を見せたのだ。


国際ルールを守らず、捏造と恫喝と暴力的な振る舞いで周辺国に脅威を与えている中国がどんな国際秩序の運営を図れるというのだろうか?

中国はインド、パキスタン、ロシア、北朝鮮の4つの核保有国に囲まれ、さらに尖閣問題、南シナ海やインド国境など難しい国境問題に直面している。

加えて国内では環境破壊、経済格差、台湾、国内移民、汚職、人権侵害、新疆地域やチベットでの民族独立問題など多くの内政問題がある。

こんな国が米国と世界を二分して、対決や衝突がなく、相互尊重し、ウィン・ウィンの世界を構築できるはずがない。


小説の世界では中国がからむ近未来のシナリオは中国が突然東南アジア諸国に武力侵攻し、米国との開戦となる話がほとんどだ。

最近読んだ本でも

「米中開戦 1~4」トム・クランシー著 新潮文庫刊
「中国軍を阻止せよ 上下」ラリー・ボンド著 二見文庫刊

共に中国の南シナ海強奪を切っ掛けに米国を巻込んだ世界大戦を描いている。

簡単に内容を紹介すると

「米中開戦」は最近急逝したトム・クランシーのジャク・ライアンシリーズの作品で2014年1月13日のブログで前半の1,2巻について触れたが、今回後半の3,4巻も出版されたので改めて記載するが、

強力な軍事力により、中国は一方的に南シナ海を封鎖宣言し南シナ海を強奪し、インドの航空母艦が海域に侵入したとたん、対艦ミサイル四発を発射した――。

その一方、中国のサイバーテロによる、米国全土の都市インフラを始め、金融システム、原子力発電所、軍事偵察衛星へまでの陰湿・巧妙・非常で激烈な攻撃に襲われたジャック・ライアン米国大統領が決断を下す・・・。

本著はサイバー空間での戦いを中心に据えた軍事・諜報・謀略・政治小説である。



「中国軍を阻止せよ」は、以前私のブログでも紹介した「レッド・ドラゴン侵攻シリーズ」で中国による侵略戦争を書いているラリー・ボンドの作品だ。

前作「レッド・ドラゴン・・」は温暖化により飢餓が進む中国はベトナム軍が中国へ侵攻したと口実をつけ、肥沃な農地と豊富な海洋油田を持つベトナムへ侵攻し、アジア全土を制圧しようとする野望いだく中国とそれを阻止しようとする米国の話だ。

今回の「中国軍を阻止せよ」は中東からの石油資源の減少に悩む中国は南シナ海の資源に目をつけ、強力な戦闘攻撃装備を持つ巨大な石油プラットフォームを密かに建造し設置しようと計画する。

それ察知した日本は、関係諸国(インド、韓国、ベトナム)と「沿岸同盟」を作り中国の作戦を阻止するため、密かに中国に向かう巨大タンカーや商船を次々と攻撃、撃沈していく。

「沿岸同盟」の動きを察知した中国は同盟国の主要都市にミサイルを発射する・・・。

不干渉の立場をとっていたアメリカは戦いをやめさせるために原子力潜水艦にある指令を出す・・・。



この小説では米国は不干渉の立場で、中国の不穏な動きを一切掴んでいない。

先日の中国との「新型大国関係」で、米国はアジアでの中国のすることには口出さないとする関係をいみじくも表している。

2年ほど前に書かれているため、韓国が日本との同盟に参加するというのはご愛嬌であるが。

いくら米国が中国との経済の結びつきが無視できなくなったとしても、中国はちょっとスキを作ると強引で暴力的な手段で我が物し、それを既成事実化してしまうので、この「新型大国関係」は本当に油断できない。