最近中国の不遜で開き直ったような理不尽な動きが加速している。
東シナ海、南シナ海で中国の独断的で横暴な行為が続いている中で最近の動きを新聞紙上でその経緯を読んでみた。
 
4月のオバマ米大統領のアジア諸国歴訪において、尖閣諸島は、日米安全保障条約の適用範囲に含まれると明言し、フィリピンでは、米軍の再駐留を含む同盟国との連携強化を打ち出した。
またマレーシアでは海洋安全保障を含む包括的な協力関係の強化で合意した。
 
だが、このように中国を牽制して回る一方で随所に中国への配慮もみせ、尖閣諸島の問題で「領有権を巡る決定的な立場は示さない」と述べるなどして、「中国を封じ込めるつもりはない」と強調もした。
 
そんな中、5月3日、中国国営の大手石油会社、中国海洋石油総公司(CNOOC)は、82隻の艦船を引き連れて、南シナ海のパラセル(西沙)諸島周辺でベトナム沖120マイル(約195キロ)のベトナム領海海上まで、油井掘削装置を移動させた。

                               

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もともと、ベトナムが領海権を主張するこの海域で、ベトナム国営企業のペトロベトナムと国際石油メジャーのエクソンモービルが広大な油田と天然ガス田を発見したのだが、中国は勝手にこの地域で石油掘削作業を始めてしまったのだ。

                     

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    中国の石油掘削装置 10億ドルもの費用がかかったという
これまでも、ベトナムは一方的な中国の掘削作業実施を外交ルートを通じて中国に抗議して中止を求めたが、中国側がそれを拒否して掘削を継続してきた。
 
とうとう、この日は、掘削装置の近くで中国とベトナムの船舶がにらみ合いの状態になり、中国側の船舶がベトナムの船舶に放水し、さらに5月4日には、中国側の船舶がベトナム側の船舶に故意に衝突する事態までに発展してしまった。
 
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   中国船がベトナム船に故意に衝突(ベトナムの発表)
 
6日、米国務省のジェン・サキ報道官は、CNOOCがとった行動は「挑発的で、地域の平和と安定を損なうものだ」と述べた。
 
5月12日、ケリー米国務長官は両国の艦船の衝突について「中国の挑戦だ。この攻撃的な行動を深く懸念している」と中国を名指しで批判した。
 
5月16日、カーニー米大統領報道官は記者会見において、南シナ海での中国の一方的な行動は「挑発的だ」と改めて批判し、領有権争いをめぐるベトナムとの対立激化は中国側に原因があるとの考えを示した。
 
これでアメリカは、中国とベトナムとの対立においてほぼ完全にベトナム側に立つことになったのである。
 
 
そして、ベトナム国内では、今まではベトナム政府は街頭デモを原則禁止していが、今回当局は中国への抗議を国際社会に示す狙いから反中デモを容認し、普段はは一切報じない国営紙もデモを報道した。
 
このため、9日のハノイ市の小規模な反中デモに続き、日頃の中国への鬱憤が駆り立てられ、毎日、そして全国的に規模もどんどん拡大しとうとう暴徒化してしまった。
 
この暴動で二人の中国人死亡と多数の負傷者および中国系企業を中心に400社にも及ぶ外国企業の工場が放火や金品の略奪などの被害が出るに至ってしまった。
 
 
こんな中で、ミャンマーの首都ネピドーで11日に開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議では、中国と一部加盟国との緊張が続く南シナ海問題について「深刻な懸念」であるとの議長声明が12日公表された。
名指しは避けたが厳しい調子で中国を牽制したものだ。
 
今までのASEANでは加盟国の対中国への温度差があり中々一枚岩とならなかったが今回は違ったようだ。
 
中国と直接領海問題を持つベトナム、フィリピン(領有権を争っている南沙諸島のジョンソン南礁を中国が埋め立て、滑走路のようなものを建設していることも表面化)は強く対中批判をしたのは当然として、南シナ海問題で中立を保っていたミャンマーやインドネシアなど、又、中国と領有権紛争を抱えるが、これまで中国批判と一線を画してきたマレーシアなどの加盟国がベトナム支持を打ち出し、中国との関係が強いカンボジアやラオスも沈黙を貫いたといわれる。
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     中国はカンボジア、ラオス、ヤンマーには大きな
         経済援助を行っている
 
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     南沙諸島のジョンソン南礁を中国が埋め立て、
       滑走路のようなものを建設していることも表面化
 
 
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中国の南シナ海を領海とする、根拠のない、国際法にも合致しない、理不尽で横暴な主張にアジア全体で立ち向かう意志が生まれたのだ。
 
 
では何故、中国はASEANが開催されるような直前に強引にベトナム沖で石油掘削作業を開始するような愚行を犯したのだろうか?
 
一つは、大国中国は今まで通り、多少波風が出ても既成事実化してしまえば勝ちと蛮行に出たが、小国ベトナムの反抗の強さをを読み違えた。
 
中国と陸続きであるベトナムは1000年もの長きにわたり、中国との抗争の歴史であり、大国中国の横暴な暴力に泣かされてきたが、ここにきて、中国の不法な行動に長きにわたる鬱憤が噴出してしまった。
 
もう一つは、オバマ米大統領の4月のアジア歴訪で、中国を牽制して回る一方で随所に中国への配慮もみせたため、中国を勢いづけた面があったという。
 
ウクライナやシリア問題で軍事行動に消極的だった米国外交の影響力の低下で中国はベトナムへの違法行為に出ても、米国は中国と真正面から対立することなく「口先介入」で終わるであろうと読んだのではないかという。
 
今回、米国は南シナ海での中国の一方的な行動は「挑発的だ」と批判し、領有権争いをめぐるベトナムとの対立激化は中国側に原因があるとの考えを示すとともに、米国はベトナム側に組することを明確にしたのだ。
 
とにかく、今回のベトナムとの海上衝突は、中国は米国から強く牽制されただけでなく、東南アジア諸国を反中国と団結させる結果とり、外交的に見れば中国にとって大きな誤算と失敗であったといえるのだ。
 
だが、外交的な失敗をさせ、習近平指導部を困らせようとする反習近平派の独走であるとの見方もあるらしい。
 
胡錦濤指導部が退陣して今の習近平指導部が誕生した時、7名からなる新しい政治局常務委員会に、江沢民派・石油閥は4名の大幹部を送り込んで習氏を取り囲むような形で勢力を固めた。
 
これに不満を持つ習氏は江沢民派・石油閥を叩き潰すための権力闘争を起こし、その手段に使用した手法がすなわち「腐敗撲滅運動」の推進であるという。
その標的が石油閥大物幹部の周永康氏であった。
 
石油閥は石油利権という莫大な経済利権を手放すまいと、配下の中国国営の大手石油会社、中国海洋石油総公司(CNOOC)を使ってのベトナム領海での石油掘削実行を企んだという。
 
外交トラブルをわざと引き起し、中央国家安全委員会主席の習近平に責任を転嫁しトラブルに巻き込み石油閥への攻撃を回避しようとする試みであったという。
(WEDGE ベトナム衝突事件を仕掛けた中国の「黒幕」 
    石 平氏 より)
 
自国に不利なことしてまで権力闘争の手段としてしまうほど、その利権と利潤の莫大さと粛清への厳しさを思い知らされる思いだ。
 
 
最近中国が米国に提案している「新型大国関係」は、要するに「米中両国が衝突を避け、双方の核心的利益を尊重し、ウィンウィンの関係を構築しよう」というものである。
 
が中国の本音は、太平洋を二分割して東太平洋は米国、西太平洋は中国で棲み分けして、お互いの覇権に口出さず「ウィンウィンの関係」を構築しようするものである。
 
米国の回答は
中国がアジア太平洋の平和と秩序を守るための法的ルールに従って関係諸国と共存共栄の道を歩むことであると、オバマ大統領が先のアジア歴訪で表明している。
 
正に、権力闘争に明け暮れ、国際法を無視し、近隣諸国に理不尽で暴力的な行為を続ける中国に「新型大国関係」を築く実力も資格もない。
 
 
早く、国際法を守る大人に国になって欲しいものだ。
それまでは我々は一つとなって、言うべきことははっきり表明し好き勝手にさせないことだ。
(掲載写真は日本経済新聞およびインターネットより)