あっという間に8月に入り、夏休みも後半戦に突入したというところか。
仕事を辞め、生活パターンが単純化してきたためか、または単に年のせいなのか、時の移り変わりが益々早くなるような気がしてならないのだが。
 
毎日が日曜日の私にとって、暑く、混んで高くなる夏休みに敢て出かける必要もなく、今年の夏もいつものように、家じゅうの窓を開け放ち、涼しく吹き込む風にさらされながら読書三昧と決め込んでいます。
 
こんな暑い夏だからと、身も心もスキットとなるようにと、過去購入して平積していた本の中から私の好きな歴史・アクション小説を数冊取り出し読破したのでご紹介します。
 
 
ただ、やはり気になる中国の話にちょっと触れてから読書の話にしたいと思います。
 
まずは食の問題で、「上海福喜食品」という外資系の会社が使用期限切れや、カビだらけになった肉を使った加工品を出荷していたの問題は日本の消費者に大きなショックを与えた。
 
放映されたビデオ見ると吃驚する。
青黒くカビが一面に付着した大きな肉の塊ベルトコンベアー運ばれ加工機へ、そして床に落ちた肉を手ですくい機械に戻している作業員たち。
 
問題が発覚した後での従業員へのインタビューで、
「どこでもやっている事でしょう」、「なんでそんな些細なことを問題にするの」、「食べても死にやしない」・・・・
 
本当に愕然とする。
”食”作りに与るものとしての、モラル、自覚、矜持なるものは一切感じられない。
 
 
 不思議な国民だ。
中国国内に出回る加工食品などいったいどんな混ぜ物が混入されているのか、人体に有害な違法な薬物がどれだけ使用されているのか、わかったものではないと、自国製品に対する不信感を世界の誰よりも根強く抱いているのは、ほかならぬ中国人自身で、日々の安全な食物の確保に躍起になっている。
 
なのに、自分が作る側になると目先の利益が優先され、他人のことは考えなくなってしまう。
 
そのうえ、中国は水もダメ、空気(PM2.5)もダメ、人間が健康的に生きられる環境がすでに失われているというのに・・・。
 
年々深刻化する環境汚染は中国人の健康を確実に脅かしている。
データにもはっきりと表れている。
 
世界保健機関(WHO)によると「肺、胃、肝臓、食道」の4つのがんの発生数、死者数は世界一。
新規患者の国籍は、肝臓がんと食道がんの5割が中国人。
胃がんは4割、肺がんも3割を超す。
世界人口に占める中国の比率(19%)を大きく上回る。
大気汚染などの原因で平均寿命は5年半縮まったという。
8/4付 日経新聞電子版「環境亡国・中国 「不!(NO)」突き付けた市民」より)
 
 
それに中国の国技ともいうべき「汚職」が絡む。
 
今回の事件が露見した直後、上海福喜食品の5人の中国人幹部が当局に逮捕された。 やはり、事件の背景には汚職が絡み、彼らの私利私欲がおぞましい事件を引き起こしたのであろう。
 
中国の「汚職」は全く規模が違う。
 
中国共産党は29日、周永康・前党政治局常務委員を「重大な規律違反」の疑いで調査し、立件・審査を進めていると発表した。
習近平指導部が「虎(大物)もハエ(小物)も一緒にたたく」とのスローガンのもと進めてきた反腐敗運動が、最終局面を迎えつつあるとの見方が広がった。
 
2012年秋に引退するまで中国の最高指導部の一角を占めていた周永康氏は、胡錦濤前国家主席時代に党最高指導部まで上り詰めた実力者で、「石油閥」の中心人物だ。
 
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ネット情報では、拘束された周氏関係者は300人を超え、当局が周氏と親族から900億~1千億元(約1兆5千億~1兆6千億円)相当の財産を押収したとも伝えられている。
汚職の金額大きさもさることながら、その関与者の規模も信じられないほどの大きさだ。
 
習氏が国家主席に就任してから、反腐敗キャンペーンは政権の最重要課題となっているが、今までに、閣僚級以上の役職を持った党高官の3分の1近くは党による調査・追及を受けているという。
13年に収賄などの汚職で摘発された中国の公務員は5万人超、13年初頭以降、70名近くの高官の多くが自殺しており、その大半は党による追及・審査を受けた後であるという。
さらに、14年の最初のわずか5カ月間で約63000人の政府高官が汚職容疑で懲戒処分を受けたといわれている。
 
ただ、懸念されるのは、党内の腐敗摘発と平行して、党の外では情報統制や抑圧的な宗教・民族政策など締め付けを強めていることと、習主席の仲間は粛清を免れており、最も人目を引くような粛清対象者は、同氏の政治的野心にとって最大の脅威となる人物ばかりだと批判の声もある。
 
そんな中、
中国の国営新華社は3日、新疆ウイグル自治区カシュガル地区ヤルカンド県で7月28日起きた襲撃事件で、死者が容疑者と市民を合わせて96人に上ったと伝えた。
 
刃物で武装した容疑者グループは28日朝、地元政府庁舎や警察署を襲い、市民37人が死亡した。死者のうち35人が漢民族、2人がウイグル族だった。
 
当局は容疑者グループの59人を射殺し、215人を拘束したという。
ウイグル族を巡る暴力事件では、区都ウルムチで197人が死亡した2009年の暴動以来の規模である。
 
当局の弾圧とウイグル族の抵抗の悪循環が続き、自治区の治安は悪化している。
 
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中国は一体どうなるのだろうか? 食の問題、環境、治安、汚職、不動産暴落・・問題だらけだ。
 
「反日」なんて言っている暇はないのだが・・・国内に問題だらけだからこそ反日なのであろうが。
 
 
中国の問題を書きだしたら尽きないが、今回のテーマである読書に移る。
 
今回の夏休みに読んだ「歴史・アクション小説」は次の4冊だ。
 
1. ケルトの封印 (上下) ジェームズ・ロリンズ著  竹書房文庫刊 各700
2. 蛮族王アッティラの秘宝を探せ (上下)  クライブ・カッスラー著
                              SB文庫刊 各650円 
3. ヘラクレスの墓を探せ (上下) アンディ・マクダーモット著
                              SB文庫刊 各780
4. テロリストの回廊 (上下) トム・クランシー著 新潮文庫刊 上790円 下840
 
であるが、4番目の「テロリストの回廊」は歴史・遺跡のテーマと関係ないが、著者トム・クランシーが昨年10月に66歳で急逝された後発刊された本で、発売即購入したが読む機会がなく今回になってしまった。
 
氏は軍事・諜報をテーマにしたアクション小説を書き、私のよく読む作家の一人であったが、大変残念だ。
 
それでは、各本の簡単な内容と感想などを紹介していくことにします。
 
 
1.「 ケルトの封印」
 
この作品はジェームズ・ロリンズの「シグマフォース・シリーズ」5作目でシリーズ外で「アイス・ハント」という本も発刊されている。
 
共に、氏の作品は、歴史的事実・科学的事実に関する豊富な知識を背景に、スピード感のあるアクションが特徴で、私の大好きな作家で翻訳済みの全てを読んでいるが、いつも歴史的事実の詳細な調査には驚かさせ、楽しまさせて貰っている。
(氏の紹介や作品などは「ウバールの悪魔」のブログを参考にしてください)
  
内容をBookデーターから紹介すると
癒しか、呪いか? その封印が解かれし時・・人類は未来への扉を開くのか? それとも破滅へ一歩を踏み出すのか?
 
ケルトの伝説、アーサー王伝説、環状列石、黒い聖母マリア、聖マラキの預言といった歴史的側面と、遺伝子組み換え作物、地球の人口問題、世界種子貯蔵庫、蜂群崩壊症候群(ミツバチの謎の失踪)といった科学的側面・・それらが結びついたその先にあるのは、人類の運命がかかった「ドゥームズデイ・ブックの鍵」その鍵を求めて、シグマとギルドが対決する最終決戦の地は、世界有数の厳重な警備を誇る場所だった……
 
DARPA〈国防高等研究計画局〉の新長官の就任で〈シグマフォース〉はどうなるか? 『マギの聖骨』以来の登場となるレイチェルとグレイソンの関係は? そして謎の女・セイチャンの存在とは? そして〈ギルド〉とは何か……? 様々な要素が絡み合い、物語は新たな展開を迎える!
 
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いつものごとく盛り沢山の歴史的側面と科学的側面を組み合わせに、シグマと謎のテロ組織ギルドの熾烈な戦いが絡む。
 
だが、今回の作品の背景の主要テーマは「地球の人口問題だ」。
 人口問題はすでにローマクラブの「成長の限界:人口増加や環境汚染などの現在の傾向が続けば、100年以内に地球上の成長は限界に達する」と1972年に警鐘が鳴らされていたところであるが、その解決策として有効な手段がない。
 
それは
「人は幾何学級数的に増加するが、食料は算術級数的にしか増加しない」ということで、食糧増産を化学肥料や農薬の大量投入により図ろうとすると、土壌の塩害、酸性化、地下水の汚染等による新たな問題を誘起し、
一方、人口減少策は人権や倫理面の問題も絡み難しいため、人口爆発は依然として衰えを知らず、このままでいくと食糧問題、エネルギー問題で人類の将来は非常に暗い。
 
このような状態の中で、本作品ではテロ集団が自らの生き残りのために、世界の人口を減らす計画を画策するさまを描いている。
 
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難しい問題だ。
折しも、2014/8/3日本経済新聞 朝刊に
 
 
人は生きるために食べ、食べものは農が育む。
日本の国内総生産(GDP)のうち農業は1%にすぎず、食べものは4割しか国内でまかなえない。2050年には90億人が胃袋を満たそうと競い合う世界が待っている。
備えは十分か。市場の広がりを追い風にできるか。環境を守り、安全と安心をどう確保するのか。
日本の食と農も変わらなければ生き残れない。

と書き出し、 本作品の舞台となった、北極海に浮かぶノルウェー領スピッツベルゲン島のスバールバル国際種子保管庫を紹介している。
ここは、米マイクロソフト創業者ビル・ゲイツ(58)の財団による寄付などで08年に稼働した現代の「ノアの箱舟」だ。イネと麦は各15万種、トウモロコシは4万種……。世界中から集めた80万品種の種が零下1718度で凍って眠る。
 
話が長くなったが、ジェームズ・ロリンズ氏の作品は単なるアクション小説でなく、現在問題となっている世界的課題についてそれとなく思い越させてくれるので好きだ。
 
 2. 「蛮族王アッティラの秘宝を探せ」
 
本作品はトレジャーハンター・ファーゴ夫妻のシリーズで
 
Bookデーターによると
西暦453年、フン族王アッティラが毒殺され、その遺体と共に膨大な宝物が隠された。知り合いの考古学者フィッシャー博士から、ハンガリーでのフン族のものらしき遺跡発見の報を受けたファーゴ夫妻は、アッティラの墓のありかを示す暗号を解くことになる。
 
ハンガリーにはフン族の遺跡に強い関心を持つ財界の大物アルバド・バコという男がいて、自らをアッティラの子孫と主張しアッティラの墓と財宝をわがものにしようとしていた。バコはファーゴ夫妻らに王の墓を発見させ、それを横取りしたのち彼らを亡き者にしようとしていたのだ・・・。
 
フン族王アッティラに関して色々記述してあり興味深く読んだが、共同執筆者が変わったためか、今までの作品と雰囲気が変わってアクション主体になってしまった感じがするのが残念だ。
 
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それにしてもこのファーゴ夫妻はお金持ちで、力があり、知恵は人一倍で政治力もある。
アメリカ人の理想家の夫婦なのであろう。
 
 
3. 「ヘラクレスの墓を探せ」
 
「アトランティス殲滅計画を阻め!」に続く、冒険スリラー小説第2弾。
 
Bookデーターによると
世界各地の文化遺産保護のため、国連に新たに設置された国際遺産保存局(IHA)は、水中探査船で遺跡の引き上げ作業を行っていた。
そこへ謎の集団が現れ、作業員を抹殺、機密ファイルを奪うと探査船を沈めて消えた…。
 
一方、IHAの役員を務める考古学者のニーナ・ワイルドは、プラトンの幻の著書『ヘルモクラテス』に、ヘラクレスの墓への言及を発見し、墓は実在すると確信する。
『ヘルモクラテス』原典に何千年ものあいだ隠されてきた暗号は解読できるのか?彼らに迫る、謎の組織の正体は?
 
 
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ヘラクレスはミーノータウロスを退治したテセウスとともにギリシャ神話の2大英雄として有名で、なかでもヘラクレスは美徳の道を行くか、悪徳の道を行くかの「ヘラクレスの選択」や「ヘラクレスの12功業」などの逸話が多く、私も何度かブログに書いた記憶がある。
 
このヘラクレスに関して本書で更に詳しく書かれているのでないかと期待したが、
ギリシャの哲学者プラトンが著した対話集・『ティマイオス』・『クリティアス』・『ヘルモクラテス』で、クリティアスではあの有名なアトランティスのことに詳しく触れているが、ヘルモクラテスについては書かれなかったということが定説であるが、
 
本作品ではその原本がが見つかり、そしてそこにはヘラクレスの墓の地図が暗号化されていいたという仮説で話を展開させている。
 
歴史的考察はここまでで後は善悪入り乱れたアクションとインディージョンズなどにも出てくる墓のいくつもの(ヘラクレスの12功業になぞられているが)秘密の仕掛けを解き明かしながら通過していく話だ。
 
歴史的側面の記述が少なく、単なるアクションものになってしまており、ちょっと物足らず残念だ。
 
 
4. 「テロリストの回廊」
 
トム・クランシーが1310月に急逝された後発刊された小説で大変印象深い作品だ。
 
Bookデーターによると
パキスタン沖三海里、会合点F・・。
CIA工作員ムーアは、タリバン捕虜をインド政府から密かに引き渡してもらうためパキスタン海軍の高速攻撃艇で現地に向かう。
しかし、突如、同海軍の潜水艦が出現、魚雷攻撃を受けた。辛くも難を逃れたムーアは事件の調査を開始。
やがてタリバン組織の幹部二人が浮かび上がる。
アメリカが最も恐れる二大巨悪組織、南米麻薬カルテルとタリバン・テロリストが手を組んだのか。
メキシコ国境の警備を強化する中、全米を震撼させる超大型テロ計画が見え隠れしてきた。
あの911の悪夢を阻止すべく、ムーアは大胆かつ意外な行動に出るが・・。
 
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南米麻薬カルテルとタリバン・テロリストが手を組で米国内にテロを仕掛けようとする話だが、色々登場人物と場所が飛び中々全体が理解できなかったは残念だ。
 
 
著者のトム・クランシーは13101日に出身地であるボルティモアの病院で急逝されたのだが
氏の作品はデビュー作で映画化もされた「レッドオクトーバーを追えから、最近作の「ライアンの代価」、そして今回の「テロリストの回廊」まで大抵は読んおり、本当に楽しませてもらった。
 
まだ未翻訳の本もあるようで是非読ましてもらおうと期待している。
 
それにしても66歳で急逝されるとは・・益々円熟して素晴らしい作品を世に出してくれると思っていたのに・・・。
 
残念です。ご冥福をお祈りします。
 
 
話が長くなりましたが、読書は本当に奥が深く、読む人に感動と知恵と熱情を与えてくれるものです。
 
時間ある限りどんどん読んで紹介していきたいと思います。