先日同世代の仲間とのゴルフの昼食時、いよいよ4月よりスタートする電力小売完全自由化の話になった。
 
「電気料金はかなり安くなるらしい・・」
「新電力でも電気の質、安定などは同じらしい・・」
「停電などで復旧が親電力契約だからといって後ましになることなどはないらしい・・」
「災害時の復旧は誰がやってくれるのだろう、お金は誰が払うのかな・・」

など心もとないない断片的な話で始終した。

私は電力自由化について話としては知っているが内容は殆ど理解しておらず、新電力へ乗り換えてみようという意志もあまりなく、さらには自宅の電気の契約内容や月々の電気代など殆ど知らない状態であった。
 
 
そんなことで、無知な状態を晒しだしてしまったので、この際、遅いが、「電力自由化」のいろはを調べ、そして我が家の電気使用状況を把握し、新電力乗り換えた場合のシュミレーションなどをしてみようと思い立ったわけだ。
 
 
まず「電力自由化」とは
 
20164月から始まる電力自由化。
これまで電気事業は地域ごとに独占的に管轄が決まっていた電力市場の規制を緩和し、市場競争を導入することで、電気料金の引き下げや環境対策における再生可能エネルギーの増加など電気事業における資源配分の効率化を進めることを目的としている。
 
このことにより、今後は電気の供給が自由化され、一般消費者が好みの安い電力会社を選ぶことができるようになるのだ。
 
ただ、この市場の規制緩和の歴史はかなり前から段階的に実施されており、まず
 
1995年 電力会社に卸電力を供給する発電事業者(IPP)の参入が
       可能に。
2000年 大需要家に対して、特定規模電気事業者(PPS)による
       小売が認められる
2003年 電源調達の多様化を図るため、日本卸電力取引所が設立
20045年 2000年に定められた基準をそれぞれ500kw、及び50kw
       以上に引き下げ
20164月 その基準が撤廃され、一般家庭等でもIPPから購入
         可能になる。
2020年 電力会社を事業別に独立させる発送電分離の実施予定

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日本の電力小売自由化への工程
 
ということで、20164月より全ての需要者”全面自由化”となるわけで、開放されるその市場規模は約8兆円といわれる。

この巨大市場を目指し200社近い企業があのて,この手と色々趣旨を凝らして電力小売事業に乗り出しているのだ。
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電力小売自由化参入の業界
 
新電力は既存の電力会社より”○○万円安くなる”と高々に謳い上げているが本当に電力自由化は安く、いいことばかりなのだろうか?
 
 
まず新電力の電気の質の問題であるが、周波数や電圧などの電気の質を保つため、小さな新電力は複数の新電力とグループを形成し、グループ内の企業が互いに電力を融通しあうことで電気の質の安定を図り、惹いては経営の安定化を図っているという。
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           発電・送配電・小売分割イメージ図

さて、料金の問題だが、契約条件や使用量によって変わってき、新電力に切り替えることによって高くなる場合もあるという。
個別に精査しなければ行けないという。
 
既存の電力会社は従来から、電気はあまねく人々が利用する必需品であることから、「ユニバーサルサービス」の視点に基づき、経済負担力に応じた料金体制を採用して、電気を多く使う顧客には高い単価、あまり使わない顧客には低い単価を課してきた。
 
此のため、使用料が少なく料金単価が低い人が、利益を優先する新電力に乗り換えても安くならず、高くなる場合があるわけだ。
 
 
そして自由化後の電力料金だが、確かに自由化により競争の原理で料金は安くなる・・・だがずーとではない?
 
今まで電力の自由化をしてきた海外の事例ではほとんどが料金が高くなっているという。

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イギリスでは
 
電力自由化を世界に先駆けて行ったのはイギリスで、サッチャー政権下自由化を進め、1990年には中央電力公社が3つの発電会社と1つの送電会社に分割民営化、50社程度が新規参入して大口需要家から自由化が進み、99年には一般家庭向けも自由化された。

2002年からはより競争原理の働く制度に移行し、一時は自由化前より40%程度料金が下落したが、しかし、その後は熾烈な市場競争のなかで寡占化が進み、これに燃料価格の暴騰などが加わり、04年からは再び小売価格が上昇し、現在は04年と比べると、2倍ぐらいになっているという。
 
 
アメリカでは
 
カリフォルニア州は、電力自由化からわずか2年たらずの2000年に、大規模ブラックアウト(停電)を引き起こし、1年間に渡って慢性的電力不足と計画停電を続けて、州社会と経済に大打撃を与えてしまった。
 
カリフォルニア州では、自然エネルギーや再生可能エネルギーの買取りを義務化し、電気料金の値上げを禁止し、同時に、環境に悪影響を与える発電は禁止され、地球にやさしい発電方式が推し進められことにより発電コストが予想を超えて上昇してしまった。
 
発電コスト増を電気料金を転嫁出来ずに電力会社は赤字が続き、設備投資もできず、また電力取引会社であるエンロン社が、電力業界の盲点を突いた悪事に走り電力を高騰させ、発電会社は売り渋りを行うようになり、十分な電力を調達出来なくなった電力会社は全米で大規模停電が頻発し、政府の安全保障問題にまで発展した。
その後最大手のパシフィック・ガス&エレクトリック社が2001年に破綻してしまった。
 
このアメリカの事例は自由化さえすれば良いというものではなく、制度設計の方法によっては電力需要家の利益になるどころか負担となる教訓を残した。
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               カリフォルニア大停電に至る電力コスト上昇
 
ドイツでは
 
自由化前、英国のように国有の独占的な電力会社は存在せず、1998年にエネルギー事業法が改正されて一挙に全面自由化されました。
その結果、1000を超える電力会社が乱立し、競争によって、電気料金は低下した。
 
しかし、高い託送料金の設定が原因で、新規参入会社の倒産、合併・買収が相次ぎ、寡占化が進み、電力価格は2000年には上昇し始め、近年は、環境税の引き上げや再生可能エネルギー買い取りコストの増加によりさらに電気料金が上昇している。
 
 
このように海外の電力自由化は料金の低減の目的を果たせず、更に電力危機などの問題を誘起してしまった。
これは自由化だけによるものではなく、燃料の高騰及び制度設計のまずさからの要因もあるというが・・。
 
色々と課題を発生した諸外国の電力自由化だが、諸外国から遅れて15年。
日本の電力自由化はこれら諸外国の自由化の問題点を十分研究尽くして、法的な送配電の分離は20年までに行うこととし、使用料は不公正がないよう国が管理しするなど様子をみながら進めていくという。
 
 

それではこの電力自由化による有り難い恩恵が我が家にどのくらいもたらされるのか見てみよう。
 
私は神戸市在住だから勿論電力は関西電力から供給されているのだが、この関西電力では「はぴeみる電」というインターネットサービスをやっている。
 
このプログラムに参加すると紙の月々の電力料金請求書なく、インターネットでログインして見ることになるのだが、その代わり過去25ヶ月分の料金データーがグラフ化され月々の料金の推移、昨年同月比、天候との料金の関係など色々比較分析ができるようになっている。
 
紙の請求書がないため月々の電気代について無頓着なってしまう事が欠点で、私も殆ど見ることがなかったが、今回久しぶりにログインして過去の料金データーを取得して新電力に乗り換えた場合のシュミレーションを行ってみた。
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我が家の昨年の電気使用実績
棒グラフ 太い:昨年度 細い:前年度
折れ線グラフは地域周辺平均値
 
我が家の昨年一年の電力使用実績
契約形態     :従量電灯A
年間電力使用量 :3306kw
月平均使用量   : 276kw
年間電気料金 :87,765円(月平均7,314円) 
 
であり、月々の使用料を「関西電力のメニュー見直し」と「価格comの電気料金比較」でシュミレーションしてみた。
 
総務省統計局がまとめたデータによると、1世帯(二人以上)当たり電気使用量(kWh)
  
2014年:平均428.2kWh
 
これから見ると我が家はかなり平均世帯より電気使用料は少ない(35%減)ようだ。
 
 
それでは
関西電力の契約メニュ見直し結果は
 
1.季時別電灯PSとしたら
  年間電気量 94,080円 差額 +6,315円 Up
2.時間帯別電灯
  年間電気量 94,217円 差額 +6,452円 Up
3.eスマート10
  年間電気量103,916円 差額+16,151円 Up
4.eo電気
  年間電気量 85,037円 差額 -2,728円 Down
  (eo光に加入条件あり)
 
これを見る限り関西電力のプランでは現状の契約形態が最安であることがわかる。
 
次に
「価格comの電気料金比較」のシュミレーション結果
 
関西地方には約20社近くの会社が色々なプランを作って売り込んでいるが今回の見積もりで関西電力を除いて19社・プランが抽出された。
 
安くなった会社・プランは13プラン 最大はイーレックス・スパーク・マーケティング年間4,672円の節約(5.3%減)であった。
 
 
一番安かったイーレックス・スパーク・マーケティングは、東京証券1部上場の新電力会社のイーレックスと、米国の電力・ガス販売大手のスパーク社が共同出資する低圧電力使用顧客向けに作った新設の新電力である。

イーレックスは大口需要家電力販売では業界トップクラスで、すでに7,000施設を超える供給実績を持っており、一方、スパーク社は電力自由化が日本よりも早く行われている米国において、電力小売りの顧客50万件を持ているという。

この会社の電気代が安くなる理由は、「自社発電」と「他社の余剰電力の購入」にあるという。
 
イーレックスの自社発電はPKSPalmKernel Shell:パーム椰子殻)を燃料として使用するバイオマス発電所でPKS使用のバイオマス発電施設としては、国内最大級であるという。
 
PKSは、オイルを採るヤシ果実の殻の部分で殻には油分があるため、乾燥したPKSの熱量は一般的な木材と比べると2倍程度あるとされ、発電効率を高めるために有効な手段とされている。
 
その上、PKSは成長時に二酸化炭素(CO2)を吸収するため、燃やしてもCO2を排出したと見なされない「カーボンニュートラル」にあり、国の再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度では一般木材に位置付けられている。
 
 
自然由来の再生燃料を使う発電を応援する向きには電気料金も安なるならば新電力の選択肢として一考の会社かも。
 
 
今回の見積もり結果では高くなるものもあり、6プランが抽出された。
 
最も高くなるものは東京電力や、ソフトバンクのプレミアムプランと名付けたもので年間17,048円も高くなってしまう。
プレミアムプランは24時間同一の料金となっており、昼と夜で電気の使用状況に大きな変化がなく、昼間でも在宅している家庭に向いているプランだという。
 
 
以上のように会社やプランによって大きな違いがでている。
安いものには通信会社の通信への加入やガス会社のガスの使用などの条件つけがあったり、2年間などの期間限定の割引が算入されているものなど多種多様だ。
 
私の場合月単位の使用実績値でシュミレーションしたが、うろ覚えのざっくりした数値で見積もり契約するとあとで全然違った結果になってしまうこともあるかもしれない。

安いからと言って飛びついたが、契約期間の縛りがあったり、解約に違約金が必要だったりする場合もあるようだ。
十分な考察の上決定されるべきだ。
 
 
電力使用量が少なく、お情けで安い単価を採用させて頂いている我が家は、当分このままで、関西電力は迷惑かもしれないが、関西電力の庇護下に居るのがいいのかもしれない。

(掲載画像はインターネットより拝借しました・・有難うございます)