日並びの良かった今年の大型連休もあっという間に終わってしまった。


リタイヤした私にとっては大型連休はただただじっと家で耐えるのみだ。


高速道路の渋滞が何十キロ、かつ旅行料金などは割高ななるなど聞くと家でじっとしているのが一番だと決め込み、読書と新聞やネットでの経済などへの深読みで時間を過ごした。

 


連休後には伊勢志摩サミット、オバマ大統領広島訪問、南シナ海仲裁裁判所裁定結果、英国EU離脱国民投票結果、パナマ文書の影響、米国大統領選挙の行方そして日銀の追加金融見送り以降の円高株安など、どれ一つとっても我々の生活に大きく影響を与えると思える事象が目白押しだ。



しかし、これらの複雑な問題は別な機会とし、今回は、先日(17日)大阪市自然史博物館の特別展「生命大躍進」を見てきましたのでその内容を書きます。


 


同展は昨年7月に東京展を皮切りに名古屋、四国と開催され、関西では大阪市自然史博物館で416日から619日まで開催され、その後岡山に移り9月まで開催されるものである。



40億年の進化を語る、太古の生物がやってくる。 日本初公開!!アノマロカリス実物化石」 というのがこの特別展のキャッチフレーズで地球歴史好きとしてはたまらなく魅力的で即にも行きたいのだが、開催間近やゴールデンウィーク中は混むであろうと、敢えて5月中旬まで待ったのだがこれが全くの正解であった。



連休中は70分もの入場待ちがあったと聞くが私が行った時は全くのガラガラで誰にも邪魔されずゆっくりと見ることが出来た。



宇宙誕生138億年前、地球は46億年前と言われるが、地球に生物が誕生したのは以外と早い時期だ。


 


グリーランドの37億年前の地層から生命の痕跡(生物由来とされる炭素)が発見されたことにより、37億年前の海には既にバクテリアのような生物(1mmの1/100の小さい)が存在していた事が明らかにされている。


 


爾来、地球上の生命はおよそ40億年という進化の過程で繁栄と絶滅を繰り返して、現在の姿を獲得して来た。


 


生物の進化の中でも”生物の大躍進”とも言うべき、例えば「目の獲得」「顎の獲得」「海からの上陸」「胎盤の獲得」などの生命進化のエポック的歴史が化石によって裏付けられている。


 


今回の展覧会は世界各地の研究機関の協力により、生命進化の各時代を代表する極めて重要な実物化石54100万年前(カンブリア紀)の“バージェス頁岩動物群”の実物化石や、4700万年前(始新世)の“奇跡”の霊長類化石「イーダ」など、をに一堂に会するとともに、これらの貴重な化石にDNAに関する最新の研究成果を織り交ぜ、精巧な復元模型や4K映像を活用しながら、脊椎動物が歩んできた壮大な進化のみちのりを説明しようとするものだ。


 


青々した緑に囲まれた博物館の玄関を入り2階に進むと「生物大進化」展のすぐ入り口だが、私以外客は居らず受付はちょっと手持ち無沙汰な様子だった。
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                        緑に囲まれた静かな大阪市立自然史博物館入口

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                         博物館のカタログ
 

1300円の入場料金と音声ガイドレンタル料520円を払って入り口を入るとすぐ目に付くのが「エディアカラ動物群」と待望の門外不出、日本初公開の「バージェス頁岩動物群」の化石だ。



65000万年前、地球の表面は厚さ1キロメートルもの氷に覆われる「全球凍結」が1000万年も続く極寒の時代を生物は氷の中で冬眠したり、火山の周辺でひっそり生きていた。



火山活動などで凍結が終わると温暖化や酸素の増加により生物は急激な進化を遂げた。


オーストラリア南部、フリンダーズ山脈の北部にあるエディアカラ丘陵に58000万年~55000万年前という先カンブリア時代の地層が堆積しており、そこに大型の生物化石が多数発見された。


これらの生物は「エディアカラ動物群」と呼ばれるのだが、今までと全く違った姿をしており、種類も多かった。


しかし大きな特徴として、豊富な酸素を利用して、今までの単細胞生物は細胞と細胞を結合する働きをもつコラーゲンというタンパク質を生成するようになり、多細胞化し大型化したという。


しかし、「エディアカラ動物群」は急激な温度変化に対応できなかったのか僅か3000万年ほどで終わってしまった。



この後に52000万年前、カンブリア紀にコラーゲンを得て多細胞、大型化した生物が爆発的に増え、現在知られている動物門が全て地球上に姿を現したのだ。


それも地球生物史から見てほんの一瞬の2000万年ぐらで一挙に誕生したという。


 


この生物史の大事件を「カンブリア大爆発」といい、これらの生物の化石がカナディアン・ロッキーの高地バージェス山付近のバージェス頁岩塁層から大量に発見された。


 


これらの動物を化石が発見された場所の名にちなんで「バージェス頁岩動物群」というが、本当に今までの常識から外れ、衝撃的な奇妙奇天烈な形をしている。
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カンブリア大爆発で出現した奇妙な形の生物
中央の大きな生物がアノマロカリス


今回の展覧会の私の主目的はこの時代の奇天烈な姿の動物をじっくり見ることであった。



なぜ、こうも短期間に様々なグループの生物が同時期に出現したのだろうか?



それはこの時代に初めて生物は「眼」を持ったからだという説が有力だという。



眼を持つことは他の生物を発見しやすくなり、このことは食うか食われるかの「生存競争」がより激しくなることを意味する。


そのため、生き残りをかけた急激な進化がおき、形の変化や機敏な動作のための筋肉や力をかける骨格(殻)などをつけるようになった生物が爆発的に増えたのだという。


 


私の今回の目的はまさにこの「奇妙奇天烈動物群」の中でもひときわ目立つアノマロカリスを見ることだ。
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上:展示されていたアノマロカリスの模型
中:想像図 丸い口が下向きにある
下:発見された一体の化石


この”奇妙な海老”という名を持つ生物はバラバラの化石がまず発見されたのでひとつの動物とは考えられておらず、触手は海老の腹部、口はクラゲの仲間、胴体はなまことして判断され別々の名を持っていた。



その後全体の化石が発見され、さらに1994年には中国で体長2mにもなるものが発見されその巨大さと異様な姿に古代生物ファンを驚かせ、狂喜乱舞させた生物なのだ。

 


カンブリア時代の生物は小さなものが多く、このアノマロカリスはこの時代の最大でかつ食物連鎖の頂点に立つ生物であった。



頭部についた大きな複眼、トゲがついた2本の触手、11対以上の胴体についたヒレ、本体の末端にある3対の尾などが特徴だ。


口はパイナップルを輪切りにしたような形で下向きについている。


 
何度見ても吃驚させられる。


 

このカンブリア紀にはまだまだおもしろい?形をした生物が多く現れている。


 


5個の眼と、長く伸びた口吻を持つオパピア。


頭には2対の棘があり、大きな棘は体幅の2倍くらいまで広がり、後部の棘は体の後端まで伸びているマルレラ。


人類の祖先だと言われる脊椎に似た頭索をもつうなぎのようなピカイア。


・・


上げていったらきりがない、本当に生物が爆発的に誕生し、大繁栄したのだが残念なことにカンブリア型動物群は44300万年前のオルビドス紀末の大絶滅、37000万年前のデポン紀後期の大絶滅などを経て絶滅してしまった。


 


カンブリア紀以降のオルドビス紀に入っても生物の激変は続き、生物の種を激増させるだけでなく大型化して、デポン紀には動物は陸上へ進出し、その後期に最初の両生類が出現し、脊椎動物が陸上進出を果たした。


魚類は「顎」を獲得し、いままで口で吸い込む効率の悪い栄養補給であったが、顎を獲得したため栄養補給が飛躍的に効率が上昇し大型化していった。



サメやエイなども含め全ての魚類がで揃った次期でもあった。


 


この時代の代表的なものはなんといってもダンクルオステウスである。


古代の海に君臨したダンクルオステウスは頭部が硬い板皮(兜のような)でおおわれており、強烈な顎を持ち個体の最大なものは10mにもなったという。 


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ダンクルオステウスの模型 体長10mにもなった
中央に頭部の化石がある


さらにウミサソリの仲間でプテリゴトゥスは体長2.5mにもなる大型種で強力なハサミで獲物を捉えていた肉食種。

 

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                    ウミサソリの模型


もともとサメの仲間は多様性があり面白い姿のものが多いが、この時期に出現したヘリコプリオンはぐるぐる巻きになった歯を持っている。


どのようにして使うのか、どのようなメリットがあるのかよくわからない。

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上:ヘリコプリオンの想像図
下:下側の渦巻く歯


25200万年前、古世代に終止符を打つ地球史上最大のペルム紀末の大量絶滅の後、哺乳類の祖先グループである原始的な単弓類が大いに繁栄していた。



三畳紀後期に出現した恐竜が地上を支配するようになると、ほぼ同時に出現した真の哺乳類は、その陰に隠れるような目立たない存在となっていた。


 


しかし、中国で発見された私達の祖先ジュラマイア(トガリネズミのような小さな生き物)に生物進化の大躍進の一つである生物の繁殖を激変させる進化が起こっていた。

 

中国で発見された完全に近い化石によると、ジュラマイアは子供をお腹の中で育てる臓器胎盤を持つ動物であることがわかた。

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              ジュラマイアの想像図と化石


現在、この世に存在する胎盤をもつ動物はすべてこのジュラマイアの子孫だという。


 


小さなネズミみたいな動物が我々の遠い遠い先祖だというから吃驚だ。


 


胎盤を持ち母親の胎内で子を育てることが出来るようになることは小さな動物には生き残るために重要な意味を持つことであった。

 


住む場所の選択肢が増え、ある程度大きくなってから生まれるため子供の生存率が飛躍的に高まるなど小生物にとって画期的なことであったのだ。



そんな画期的な進化の切掛を作ったのがさまざまな病気を引き起こすレトロウィルスであるというからさらに驚きだ。


 
私達の祖先ジュラマイアの体内に入ったレトロウィルスのDNAは、自らのDNAを祖先のDNAの一部に組み込み込んだのだ。


これこそが後に胎盤を生み出すことになるPEG10遺伝子なのである。


これ以降、脈々と続く子孫にPEG10遺伝子が受け継がれるようになったという。


 


更に、展示物のもう一つの大きな目玉でもある「イーダ」と呼ばれる化石は、4700万年前に現在のドイツに生息していた霊長類で、学名はダーウィニウス・マシラエという、現生のキツネザルなどに似たアダピス類に含まれ、私たち人間の直接の祖先ではないが、この「イーダ」の化石が非常に状態が良く、実に美しいので評判が高いのだ。


 尻尾から頭、指の先まで、全身の95パーセントが残っており、よくこんなにきれいに残っていたものだと関心する、ただし、残念なのは東京展だけが本物の化石で、後はレプリカだという。
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                  「イーダ」の完全な化石

今回の展覧会のテーマが”生物の大躍進”であるが、この大躍進に地球上の大変化による生物の絶滅そして繁栄の繰り返しが大きく作用しているが、生物側から見ると「目の獲得」「顎の獲得」「海からの上陸」「胎盤の獲得」などのエポックが生命進化に大きく寄与していることが分かった。


 


化石を通じて生物の進化の展覧会のためかイラスト、模型そして4Kの明細な動画などを多用して理解を深められような工夫されており、又空いていたこともあり、4時間ばかりじっくりと眺めさせてもらい貴重な時間を過ごすことが出来た。