今回は少し堅い話だが、
先日ある証券会社の「株式投資実践セミナー」なるものを受講してきました。
実践セミンーと銘を打つからにはと少し期待していたが、かなりはっきりと方向性を明示していて大変参考になった。
内容を少しかい摘んで説明すると
・現状は不確実性が強まっている・・・しかしチャンスの時でもある
その要素は
「地政学的リスク」・・武力衝突、テロ、政治的混乱・・・等々
又、更に他のリスクとして、よくウオッチしなければ行けないものに
・米国の金利の金利上昇加速
・EU離脱の影響
・中国危機の再燃は
・トランプ大統領の暴走
・東アジア特に北朝鮮の動向
などが挙げられるが、
そんな中でも現状は
・世界の景況感は底堅く推移している (図-1)
・世界市場で「業績期待」根強い
米国、世界の株式は年々上昇している
・日本株式の業績見通しは改善傾向
・日経平均の予想PERは「割安圏」にある (図-2)
・為替動向ー日米金利差は拡大に向かう (図-3)

図-1

図-2

図-3
そして、この様な状況の中で中期的な株式投資戦略としての狙いは?
1.IT業界の急拡大
情報技術分野の業界が急拡大している。
日々の暮らしの中でもよく耳にするようになったキーワードで
「ビッグデータ、IOT,AI,ロボテックス、半導体、SHS,電気自動車、スマホ、ゲーム機・・・」等々華々しい。
益々拡大を続ける業界だ。
特に最近大きな話題になっている電気自動車関連は急激な社会変化をもたらすものであり格段の注視が必要である。

図-4
2.インド経済の高成長期待
インドの人口は2025年には中国を上回るが(米国勢調査局の調べで2025年にはインドの人口は13億9600万人、中国は13億9460万人)一人当たりの所得は成長余地が大きく、特に近年富裕層の拡大が大きく消費拡大につながる。

図-5
図-6

ということで発展するインドへの関連する企業が狙いとか
3.ビューティー業界の優勢
ビューティー指数が急拡大している。
世界の主要な化粧品銘柄で構成される「ビューティー指数」は新興国の中間所得層拡大で、女性を中心としたビューティー需要は着実に成長しており、さらなる成長が見込まれるという。
化粧品や美容業界に注目とのこと。

図-7
という中期的展望より注目すべき業界の説明があり、後半もこの流れの中で更に具体的な業種、企業が紹介された。
今回ここではその業種、企業などの具体的な記述はさけるが、そこの中で特に注目されたのは、新聞紙上等で毎日のようにニュース飛びかって大きく報道され、今回のセミナーでも取り上げらている、今後急速に、躍進、拡大するという電気自動車(EV)関連である。
各国、そして企業達が、ゾクゾクと内燃機関使用の自動車は”走らせない”、”つくらない”などと宣言し始めている。
が、しかし、ただ熱に浮かされ様に誰彼もが闇雲に、「◯◯年からは”ガソリン”をやめて”電気”にするのだ」と言うような簡単な問題でないと思う。
なにせ、車が誕生して100年。
この間多々の人々、企業などの努力を重ね、日々の生活、企業活動の手足となり、世界の津々浦々へ普及し、一日たりとも無くてはならなくなっている車に、ハイ!、”ガソリン”をやめて”電気”にしますと言われても・・・。
将来を見据えて本当に”電気”なのか?の検証もなく、燃料切替への車自体の開発、改良も必要で、更にインフラの整備はどんな規模で、何時までに、その費用は・・・・問題は山積みだ。
燃料転換が必要ならば、国や企業が中心になって転換への開発やインフラ準備、各種の問題の解決策・・・等々へのロードマップを作って一丸となって勧めるべき問題だと思うのだが。
とは言えど、この辺の状況を新聞等での断片的な知識しかないので、いい機会と思い私なりに今回少し調べてみたいと思います。
まず各国の動きであるが
●カリフォルニアのZEV(Zero Emission Vehicle:排ガスを出さないクルマ)規制(一定以上エコカーの販売をメーカーに義務付ける)で2018年より中堅メーカまで対照とする。
●EUでは、自動車メーカーの企業平均(その自動車メーカーで販売している全部のクルマの加重平均値)となるCO2排出量規制は、2020年には95g/kmとする規制が始まる。
●2017年6月 インド政府は国内で販売する自動車を2030年までに全て電気自動車に限定するとの野心的な政策を明らかにした。
環境問題が厳しくなるインドで「すべて電気自動車」を打ち出した。
●2017年7月 イギリスやフランスが2040年までに内燃機関の車の新車販売を全廃プランを発表。ドイツも2030年全廃すると発表。
人口の少ない国ではもっとラディカルなプランもある。
例えば、ノルウェーは内燃機関全廃ではないが、2025年までに販売車両のすべてを純EVもしくは充電可能なPHEVにするとし、オランダもそれに似た政策を推進している。
●中国政府は9月28日、2019年に自動車メーカーに10%の新エネルギー車(NEV)の製造・販売を義務付ける規則を導入すると発表した。
ガソリン車やディーゼル車の製造・販売を禁止する検討にも着手しており、新規則で電気自動車(EV)を中心とするNEVの普及を後押しする。
こう見ると規制を強化しようとしているのは自国の都市部の大気汚染が悪化してていることが大きな要因だが政治的意図も見え見えだ。
EUではテロや移民問題で政府は舵取りが難しくなっている中で、求心力を強めるため急進的な環境団体への阿る施策に出ている。
中国は共産党への市民の不満防止への大気汚染対策でもあるが、国策として進めてきた製造業の自立化が半導体と自動車が外国勢に大きく負けているため、スタートラインを新たに設けて巻き返しを図ろうとしている。
欧州からいきなり持ち上がった空前の“EV化”と内燃機関車終結宣言。
日本が進める究極のエコカーと言われているFCV(水素燃料電池車)への是非の決着もなくEV化だ。
あまりにも独りよがりで、環境改善を打ち出すなら、本当に将来の地球にとってどんな策が最善なのか、一国の政治、企業の都合で決めるのでなく、もっと世界的な規模で検討すべきと思う。
それでは、このEV(電気自動車)の現状の問題点として
1.搭載するリチウム電池は1充電で走行距離300kmがやっと。
普通充電に12時間以上、急速充電でも1時間半(日産リーフクラス)
充電のための電力不足が心配、インフラの整備が必至
2.寒冷地での使用は更に2,3割走行距離が落ちる
3.長時間充電が基本使用となる(自宅充電)
4.バッテリーが高温、低温使用に弱いため常に(駐車中も)温度制御
装置を作動させておく必要がある
5.長距離移動には充電ポイントの位置を頭に入れておく必要がある
充電時間もかかり気ままにドライブというわけにはいかない
6.ガソリン税が徴収出来ない。
現在ガソリン税53.8円/Lで2016年渡の徴収額は2兆3940億円
電気代にかけるとしても他の電力使用量区別が必要
等々ちょっと考えただけでも解決すべき課題が浮かんでくる。
中でもやはり、バッテリー本体およびその充電、更にそのため電力確保等の技術開発、インフラ整備が大きい問題だ。
まずリチウムバッテリー本体について
バッテリーの容量アップ並びに充電時間短縮へ切り札として全固体電池が注目されており ・電池容量アップ ・短時間充電 ・短時間充電 等の優れた性能があるが電池密度が低く大型となる欠点がある。

リチウム電池と全固体電池の構造

リチウムイオン電池電解質は有機溶媒で可燃性があり、漏出リスクなど安全性に課題を持つが、全固体電池は電解質を固体材料に置き換えたことで安全性を高めた。
が、基本的な性能であるエネルギー密度や出力密度が既存のリチウムイオン電池より低く開発中である。
充電に関しては現リチウム電池であれば12時間も必要で自宅充電が基本となる。
この自宅充電の場合、充電装置及駐車場所が確保できるかが問題だ。
総務省統計局平成25年の調べでは
一戸建てが2800万戸、集合住宅が2200万戸で自宅に充電装置が設置できない戸数が4割以上で更に、会社などに駐車している商用車を含めると、半数以上が導入対象者となれないことになる。
充電スタンドを利用するにしても急速充電で1時間半もかかるのではとても多人数相手では不可能である。
そして、さらに、充電するための電力量はどんな感じになるのか?
ざっくり推定してみると、
・EVは日産リーフ並でモーター30Kw、1充電走行距離250Kmと仮定
・現在の日本の自動車保有台数は約8000万台、その半分の4000万台がEVにシフト
・年間の平均走行距離を10000kmとした場合、10000Km/250Km=年40回の充電
・(40回x4000万台)/360日X24時間=18.5万台/1時間 の充電が発生する
・18.5万台X30Kw=555Kwh つまり、平均でも毎時、555Kwの電力が充電に消費
・休日、祭日のピークを考えれば2000万Kwhに達することもあり得る考える
どうする!!2000万Kwhの発電と言うと、原子力発電の20基分だ。
環境保護、化石燃料枯渇化からEV化が提起されたならば、原子力発電に反対する人が多いとすると、水力も可能性がないとしたら、残された道は自然エネルギーの利用だ。
代表的な太陽光発電を考えると大規模なメガソーラ(900Kwh以上)を見ると既に
3776箇所に設置されて、合計発電量は1129万Kwhである。

メガソーッラ発電所設置地図

関東周辺のメガソーラ発電所設置地図

メガソーラ発電開始件数推移
電気自動車の充電に必要な2000万Kwhと言うと現在のメガソーラ発電所の二倍の規模が必要で、勿論夜間に発電できないから夜間用に蓄電池を設置して発電規模も大きくしなければならない。
2017年以降メガソーラの発電開始事例がないことを見ると、コストが会わないのか、設置場所が見つからないのか・・
以上のようなざっくりの検討で、ディーゼルもガソリンもすべてEVに切り替えるなんて事は荒唐無稽で無責任な話だ。
如何に今回の欧州のEV化の話が政治的背景からのみ出てきたものと判断できる。
最後に8月8日付けのダイヤモンド・オンラインに「ガソリン・ディーゼル車全廃が欧州で急に宣言された真の事情」
の記事に欧州のある自動車メーカの幹部の談話が載っていたので記載する。
「電動化について一番合理的で冷静なのは、日本の自動車メーカーだと私は思っています。『電気が一番素晴らしいんだ』とヒステリックに叫ぶのではなく、エンジン車を含め、全部の技術についていいところと悪いところをきちんと見て、何をどう良くできるのかを考えながら少しずつ変わろうとしている。技術もちゃんと蓄積している。あくまでこれは私個人の考えなのですが、EVは間違いなく増えていくものの、自動車用の内燃機関は2040年になってもなくせないと思う。」
日本の車やさん頑張れ、欧州や中国の主導権争いに巻き込まれないでじっくり地球の将来姿をしっかり見据えて、技術、経済、需要など推し量り賢い判断をして下さい。