6月にトカラ列島にそして5月にモーリシャスとセーシェルにダイビングに行きましたが、この2つのダイビングに共通している私にとってのキーワードは”火山” である。
 
ダイビングの楽しいところは、未知で神秘なる巨大な海の、ほんの僅かな一部分であるが、その神秘さを体で感じ見る事ができることであろう。
他にも、遠く他国などにも行き、そこの風土、季節、人々、食べ物、生活・・などに触れられる楽しみもある。
 
が、私とって別な面での楽しみが”火山”だ。
 
ダイビングで行くような外洋に浮かぶ島々は火山由来で誕生したものが多く、その島々の誕生の歴史を紐解いていくと、悠久でダイナミックで且つ、ロマン溢れる地球誕生の歴史まで遡ることが出来る。
いつもその現場に立つと、まさにダイナミックに活動中の地球の入り口に立っているような感じで背筋がヒヤっとしワクワクするのだ。
 
5月に訪れたモーリシャス&セーシェルも地球がダイナミックに活動していることを克明に残している”証拠”の一つである。
 
18千年前、地球は超大陸バンゲゲアとして結合したが、1億7千万年前に北半球のローラシア大陸と南半球のゴンドワナ大陸に二分され、さらにゴンドワナ大陸はその後1億2千万年頃アフリカ大陸と南アメリカ大陸が分離、かつインド、南極、オーストラリアが分離し移動し始めたという。

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これらの大陸の分離、移動する原動力は、大陸がまとまることでマントルの温度が高まり超巨大な火山が想像しがたいほどの巨大噴火を起こすからだという。
確かに、過去、大陸が分離する接点では超巨大火山が大噴火している。

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モーリシャスはモーリシャスの西にある現在のレユニオン島の下にあるホットスポットが900万年ほどに造った火山島で、このホットスポットは、過去、6700万年ほど前に日本の国土より広い範囲に溶岩を噴出したインドのデカン高原、モルジブ諸島などを造り、また、これらを、ユーラシア大陸まで運び、衝突させる原動力となっている。

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セーシェルは12000万年、南アフリカの超火山の噴火よりアフリカ大陸から、インド、南極、オーストラリア大陸が分離され、さらに9000万年前、マダカスカル超火山の噴火で、インド大陸からもマダカスカル島ともに分離し、その後インド大陸だけが大陸移動で、現在のインドまで移動したが、マダカスカル島やセーシェルは分離した位置に取り残された。



現在、アフリカ大陸の東側に共に並ぶモーリシャスとセーシェルであるが、その形成の違いを色濃く島の景色にも残している。
 
モーリシャスは火山島らしく、海岸は絶壁が多く、高い山岳部に深く刻まれた渓谷などがあるが、セーシェルは白いビーチに囲まれ、大陸の由来の花崗岩が丸く滑らかに海蝕され奇岩が多く見かけられる。

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さて、6月に行ったトカラ列島であるが、鹿児島県本土から南へ60kmの屋久島と約 380kmの奄美大島の間に点在する12個の島々(7つの有人島と5つの無人島)からなる列島で、最も大きな島である中之島でも、面積が約35平方キロメートル(周長30km)で人口が158人。


日本の活火山と言われる111山のうち、口之永良部島、口之島、中之島そして諏訪之瀬島4島に活火山があり、黒石島、横当島は活火山と認められていない。
トカラ列島はれきっとした火山により形成された島々だ。

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日本の火山は、先程のモーリシャスやハワイのホットスポットによる火山と違って、インドネシアやフィリッピンと同じ海洋プレートの沈み込み境界では地下深くで「揮発性成分によるマントルの部分融解」によるマグマが作り出されて地表へ供給されることによるもので、特徴として沈み込み境界線に沿って数多くの火山が造られることである。

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トカラ列島の火山島もフィリッピンプレートがユーラシアプレートに沈み込む事により形成された火山郡で、沈み込みの境界線に沿って綺麗に一列に並んでいる。

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今回トカラ列島で訪れた島々は口永良部島、口之島、中之島、臥蛇島で上陸し宿泊したのは口之島、中之島だった。

トカラ列島に属する多くの火山島は、急峻な海食崖に囲まれることが多く、直立した柱のような岩をよく見かける。

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トカラ列島海域は、潮の流れが速く、その変化も激しく、昔から七島灘(しちとうなだ)と云われた航海の難所であるが、ダイビングとしては大型の回遊魚の群れに遭遇することが出来、ワイド派には垂涎のサイトである。
しかし、流れは半端でなく、強い流れが瞬時に変わり洗濯機の中に居るような時もあり、且つ、アップカレントやダウンカレントも強く全く気が抜けなく、何よりも体力とスキルを要するダイビングである。

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更に今回はトカラ列島には属さないが、トカラ列島の北側の薩摩硫黄島(東京都の硫黄島と区別するためこの名称を使用する)に寄港し、且つ島の近辺で潜ったのだ。
 
薩摩硫黄島は正に活火山そのものだ。
島に近づくと噴煙を上げる海抜703m硫黄岳が見え、更に近づくと硫黄の臭いがツーンと鼻をつき、港は港底に火山の湧出物で真っ赤、山麓には有名な強酸性の天然温泉”東温泉”がある。
この温泉,源泉は触れないほど高温で透明であるが、浴槽に生息するシアノバクテリアにより緑色に見え、温泉水は海に流れ込むと、成分であるアルミニウムなどと海水との反応により乳白色に変色する不思議な野趣に富んだ温泉である。





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ここでのダイビングは流れは大変強いが、海中の壁には溶岩が冷却されたときに出来た大きな六角形柱(柱状節理)が林立し、所々、テラスみたいなところもあり、ここに腰掛け通り過ぎる回遊魚を眺めるという大変乙なダイビングを楽しめる。


ダイビングで体も心も興奮し疲れた身体を、噴煙を履く雄大な硫黄岳を眺め、海の波音を聞きながら、地球の偉大なる恵みの、日本名湯百選にも選ばれている名泉に、浸かりながら地球との一体感を味合う贅沢をここでは満喫できるのだ。

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さて、後白河法皇の側近であった俊寛が安元3年(1177年)平氏打倒の陰謀に加わったとして藤原成経・平康頼と共に鬼界ヶ島(薩摩国)へ島流されたという。(鹿ケ谷の陰謀)
この鬼界ヶ島がどの島を指すのかは諸説あるらしいが、「平家物語」には鬼界ヶ島のことを硫黄を産し、噴煙がなびく高い山あると記述され、また薩摩硫黄島は島の周辺の海が黄色く変色していることより”黃海島”と呼ばれることもあり、鬼界ヶ島は薩摩硫黄島のことだと言われている。
 
この薩摩硫黄島と東隣の竹島を北縁の外輪山とする直径20kmもの海底に沈む、鬼界島に因んで名付けられた巨大な「鬼界カルデラ」がある。

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この巨大カルデラは薩摩硫黄島が7300年前(縄文時代)に大噴火を起こしたあとに出来たもので、この噴火で飛び散ったアカホヤと言われる火山灰は遠く東北地方にも達し、またこの時発生した火砕流は海を渡って南九州を襲い、縄文文化を壊滅させたと言われている。

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火山の恵みなる温泉に浸かりながら、地球誕生への悠久の歴史にロマンを感じていられる間は良いのだが、火山が一度噴火すると大災害がもたらされる。
特にカルデラ噴火は「破局噴火」とも呼ばれ、局地的な文明を絶滅させる自然現象としては、彗星や小惑星の衝突と並ぶほどの災害をもたらす可能性がありうる。


過去に大爆発し、ひとたび噴火すれば世界を滅ぼす可能性のあるという超巨大火山(スーパーボルケーノ)7つあるという。

その中に日本の「鬼界カルデラ」もある。


1.イタリア・セージア渓谷
2.米国イエローストーン
3.鬼界カルデラ
4.インドネシア・トバ火山
5.ニュージーランド北島のカルデラ群
6.シャツキー海台
7.オントンジャワ海台 

(地球の記録 http://119110.seesaa.net/article/137567375.html より)
 
超巨大火山の噴火に関して、オーストラリアのモナシュ大学地球科学学部のレイ・キャス教授は次のようなことを言っていたと、にあります。


「キャス教授は「スーパー噴火が起こった場合、膨大な量の岩石と灰が放出され、二百キロ四方に有毒ガスが拡散する。死者は数十万から数百万人に達し、気候や食料生産に深刻な影響を及ぼす」と主張する。可能性がある地域として挙げられたのは、ナポリやニュージーランド、インドネシア、南米および北米。インドネシアではトバ山だという。同教授は「これを上回る脅威は小惑星の地球衝突くらいだ」とも話す。」

 
ここで火山の爆発規模をVEI(火山爆発指数)として、火山の爆発力ではなく、流れ出てた噴出物の体積でもって区分している。
VEIは噴火の規模をわかりやすく8段階に区分して表現して、リストアップされた7つの火山のほとんどは、VEI8レベルの噴火を起こしている。
このVEI8レベルの噴火は破局噴火やカルデラ噴火とも呼ばれていて、世界規模の気候変動を引き起こし、全世界を破滅に追い込むパワーを持っているという。
 
リストに掲げた火山の詳細は記載したURLから見ていただくことにし、ここでは「鬼界カルデラ」について転記しておきます。
 

薩摩硫黄島(鬼界カルデラ)
場所:日本・鹿児島県
最後の大噴火:約7300年前
噴火の規模 :雲仙普賢岳の1回の火砕流噴の数十万倍
噴火によって:到達範囲は、半径100キロにも及び、鹿児島県では、屋久島、種子島、大隅半島では鹿屋市、薩摩半島では鹿児島市くらいまでを瞬時に埋め立て、焼きつくした。

 
こんな超巨大火山は1万年に一回ほどで、めったに起こるものではないというが・・・
少なくとも今年に入って世界各地で火山の活動が活発化していると情報が発信されているが、大きな災害に発展しないことを祈るばかりだ。
 
 
今年に入って新聞で報告された世界の火山の活動
 
2018/1/22
フィリッピン マヨン山が噴火 大規模の恐れも
 
2018/1/23
草津白根山噴火
 
2018/2/12
神戸大学海洋底探査センター、鬼界カルデラ地下 マグマだまり成長か
 
2018/2/19
スマトラ島でシナブン山噴火 インドネシア、噴煙5000メートル

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2018/5/11
霧島連山 新燃岳・硫黄山、相次ぎ噴火 数十年単位で警戒必要

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2018/5/31 
ハワイ・キラウエア火山 粘り気低く、流れる溶岩
マグマ減ると爆発的噴火も

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2018/6/3 

グアテマラのフエゴ火山噴火で犠牲者が99人に達した


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2018/7/5
インドネシア バリ島アグン山が再び大爆発 先月28日以来 活発化
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2018/7/5
インドネシア火山島アナック・クラカタウが爆発!20分毎に溶岩噴出

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この中でやはり鬼界カルデラに関する最近の神戸大学の調査報告では
海底からの高さが600メートルにもなる巨大な「溶岩ドーム」が、カルデラの内側で確認された。この溶岩ドームは、現在も熱水を噴き出して活動を続けている可能性があるという。
鬼界カルデラの縁で現在も噴煙を上げている薩摩硫黄島・硫黄岳などの溶岩と似ており、7300年前の大噴火による溶岩の成分とは異なっており、この溶岩ドームは、カルデラができた後に、新しいマグマの活動によってつくられたと推定できるという。

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新しいエネルギーが急激に膨張している様に思えるのだが、今後の詳細な調査をそしてなんとか沈静化してもらいたいものだ。
 
更に、リストにある、過去地球規模の巨大噴火を起こしたというインドネシア火山島アナック・クラカタウが今年の7月に噴火しているのだ。
 
ダイビング主体の話が火山の話となってしまったが、火山の歴史を紐解くことは地球の悠久たる生い立ちを想うことで大変ロマンを感じることであるが、どうか今後、火山の邪悪で荒々しい姿を見せることなく、ゆったりとロマンを末永く感じさせて頂きたいものだ。