今週(417日~23日)の株価の動きを見るとやっと本年初めよりの大きな下落傾向にやっと歯止めがかかったようにも思える(そうあって欲しいと切に望みたい・・・)。
 
昨年末からの中国経済不安による世界規模の株の急激な乱高下にこの4ヶ月は振り回され放しであった。
 
年明けの波乱の中、予定されていた1月中旬から月末までメキシコ・キューバのダイビングに行ってきたが、通信状況が悪いキューバでヤキモキさせられ、帰国したら更に急激な日本株の下落が待っており冷や汗タラタラの毎日であった。
 
 
日経平均は2月12日、15千円の大台を割り込み(14,865円)、年初来下落は4000円を超え、下落率は21%と、景気や政策への不信感が強まる中国の上海株(22%)と並ぶ大きさで、28日~12日だけでも下げ幅1866円にもなった。
 
この間、ドイツ銀行の財務の健全性を不安視され、世界株安の一因となった金融システム信用不安を招いた欧州の株価下落は15%で、利上げの決定をしたがその後の景気減速感が警戒視され始めた米国株が8%の下落であった。
 
独歩安であった日本株もやっと明るさが見えてきたのか?
 
422日付け日経新聞に
株式市場にマネー回帰 米独、今年の高値圏 日本は業績懸念で出遅れ
なる記事があった。
 
それによると
「世界の株式市場に投資マネーが回帰している。米国やドイツの株価指数は20日に年初来高値を付け、新興国も回復してきた。原油安の一服やドル高是正で投資家がリスクを取りやすくなったからだ。日経平均株価は21日、約3週間ぶりに1万7000円を回復したが、業績悪化懸念が重荷となり戻りは鈍い。」
 
とあった。
 
22日には更に208円上昇して17,572円となり底硬さを示してきている。
 
日本株だけでなく、記事によると
「米ダウ工業株30種平均は18日に約9カ月ぶりの高値を付け、20日終値は1万8096ドルと昨年5月の史上最高値(1万8312ドル)が射程圏に入った。独DAX20日まで連日で今年の高値を更新した。
先進国の株価動向を示すMSCIワールド指数は20日時点で昨年末より1%高い。落ち込みが大きかったMSCI新興国指数は1月中旬の底値から2割近く上昇した。
株高の流れをつくった要因は原油価格の反転。一時は1バレル30ドルを下回っていた原油価格は40ドル台を回復した。(中略)
もう一つはドル独歩高の修正だ。幅広い通貨に対するドルの実力を示す実効為替レート(日経通貨インデックス)は1月に131を超え、14年ぶりのドル高水準を記録した。それが米利上げ回数が年4回から2回に減るとの観測が広まるとドルへの資金流入が緩和。実効為替レートは足元で122台に低下している。」
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                       世界株指数と昨年比の主要株価騰落率(日経新聞より)
とある。
やっと明るさが見えたのか・・・
 
でも振り返ってみると、何か危機が、それも日本発でなく、発生すると日本株が人一倍激しく反応して独歩安となり、そして回復時は一番遅いといういつものパターンに今回もピッタリと当てはまるようだ。
 
なんとかこの自虐的なパターンから抜けだして欲しいものだが、国民性なのか、世界の投資機関のいいカモにされているのか・・・。
 
 
世界の株価に明るさが見え始めた中で先週末突然
「「豪次期潜水艦 日本が脱落か 入札で「熱意が欠けていた」」
と地元メディア発として各日本のメディアが発信した。
 
20日の産経新聞の記事によると
 

「オーストラリア公共放送(ABC)は20日、主要閣僚らで構成する国家安全保障会議(NSC)が、次期潜水艦調達計画の共同開発相手をドイツとフランスに絞り込み、日本を除外する決定を下したもようだと伝えた。同放送は、決定内容は来週にも発表されるとしている。

 同放送は、19日夜に開催されたNSCのこの決定が、「最終判断かは不明」ともしている。日本が脱落した根拠として、豪州政府担当者らが、入札で日本側に「熱意が欠けていた」ことを懸念したとした。」

 
とある。
 
オーストラリア次期潜水艦調達計画は豪政府が今年2月にまとめた国防白書で、
「台頭する中国は地域でさらなる影響力拡大を模索する」と指摘し、次期潜水艦を12隻調達する正式計画を示したもので、建造費500億豪ドル(約4兆円)超と豪史上最大の防衛装備品調達となるものである。
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           豪コリンズ型潜水艦 2020年後半に退役予定 (インターネットより)

豪次期潜水艦計画は経済的なビッグプロジェクトであると言うだけでなく国際法を無視した強引で無謀な現状変更を試みる中国を牽制するためにもアジア全体の安全保障に関わる今後半世紀における最も大きな計画なのだ。
 
 
日本は豪政府の要請を受け、次期潜水艦の選定手続きに関し、三菱重工業と川崎重工業が建造する「そうりゅう」型をベースにした事業計画案を昨年11月に提出しており、親日派とされたアボット前首相や米国が安全保障の面で日本の「そうりゅう」型を支持し、本命視されてきた。
だが、独仏が豪州国内建造比率引き上げでアピールし、巻き返しを図っていた。
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           日本海上自衛隊 そうりゅう型潜水艦 (インターネットより)

そんな中、入札で「熱意が欠けていた」という理由で日本落脱との報道である。
 
こんな世界規模の経済や安全保障に影響を与えるプロジェクトが「熱意が欠けていた」との理由で決まるものであるはずがなく大きな政治的力が働いていることは言うまでもない。
 
 
豪政府は今月末(29日?)には正式決定を報告すると言っているが、大きな決定の前に衝撃をやわらげる意味において事前にちょっと情報をリークすることはよく使われる手段であること、報道された情報では独または仏優勢との両方があることを考えると日本が脱落したということは事実なのかもしれない。
 
 
豪政府は中国の南シナ海における国際法無視の強引な現状変更に懸念を表し、日本とともに安全保障を共同で強化していくことを表明しているのだが、一方では201510月にオーストラリア北部の軍事・商事的にも重要で米軍も拠点を置くダーウイン港を北部準州政府(豪政府ではない)が56百万ドルで中国の"民間企業 「嵐橋集団 Landbridge」 に99年間 リースする契約してしまうほどであるから何が起きるかわからないところもある。
 
 
本件も色々調べてみると各国のあからさま思惑が見えてくる。
 
今回のプロジェクトで日本が圧倒的に優位とされる理由としてインターネットの記事によると、元海自潜水艦艦長の山内敏秀氏は、が必要とする航続距離、静粛性などの能力は「そうりゅう型」にしかない。
「豪海軍の目的は、南シナ海からインド洋に至る中国のシーレーン確保戦略の拠点を監視・偵察すること。この広大な海域をカバーする航続距離、高い静粛性、武器や食料などの搭載能力は、日本の『そうりゅう型』にしかない」と説明する。
 
又、軍事評論家の菊池征男氏は、すでに運用実績のある「そうりゅう型」に対し、独仏は実物のないペーパープランで「ドイツの潜水艦は問題が多発、フランスは原潜の動力機関をディーゼルに置き換えるというが、カタログ通りの性能を発揮できるとは思えない」と指摘している。
 
今回日本が提案している潜水艦は、三菱重工業などが建造する水中排出量4200トンの「そうりゅう」がベースで、ディーゼル機関の通常動力型で、世界最高水準の静粛性を誇りかつ、非大気依存推進(AIP)を搭載し、2週間の長期潜航も可能という。
また、その「そうりゅう型」潜水艦は水深700900mまで潜航でき、そこから魚雷を発射することができるが、中国の潜水艦は水深300400mまでしか潜れず、魚雷も水深400mで圧潰するという。
水深300m以上ある南シナ海に核ミサイル搭載潜水艦を展開している中国にとって中国潜水艦から攻撃されずに、一方的に攻撃できる「そうりゅう型」潜水艦」は最大の脅威なのだ。
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そうりゅうに採用されているスターリングエンジンの概念図(インターネットより)
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豪次期潜水艦への日独仏比較(インターネットより)
 

米政府筋は、日本の「そうりゅう型」ベース案を支持しているという。その理由は
1)海洋進出する中国への対抗上、最も性能が高い
2)最も相互運用性がある
3)日米豪の戦略的協力が加速される
4)日本の敗北は中国の外交、戦略的勝利を意味する
しているおり、もしドイツが選択された場合、中国の産業スパイなどから機密情報を守りきれる技術があるのか、という疑念から米国の最新鋭の戦闘システムの技術提供を拒否する姿勢を示しているとも言われている。
 
本音は日本と豪が中国より優れた潜水艦で、米国の中国の海洋侵出の脅威への対応を担ってくれるものと期待してのことと思うが・・。
 
 
中国は豪の「そうりゅう型」潜水艦の採用は自らの海軍力の脅威に繋がるためとまた、中国は核抑止力を失う可能性があり、どうしても阻止しなければならず、豪政府に色々圧力をかけている。
日本落としの理由に技術差のことは言えないのでお得意の変な屁理屈で豪に”脅し”をかけている。
 
豪の最大の貿易相手国である中国の王毅外相は2月、豪州側に
「日本は第二次大戦の敗戦国(独も敗戦国だが・・?)」と歴史を持ち出し、戦後の武器輸出は日本の平和憲法や法律の厳しい制約を受けているといい、かつ「日本との軍事協力では歴史的な背景を考慮し、アジア各国(中国、韓国だけだが)の国民感情に配慮してほしい」と牽制した。
太平洋戦争の旧敵国から武器を買うなどもってのほか、と言わんばかりだ。
 
裏では、日本の「そうりゅう型」潜水艦を採用した場合、貿易面での”ムチ”と欧州勢を採用した時の”アメ”を事細かく羅列しているのではないかと勘ぐってしまう。
 
 
欧州の独、仏は自国の大型武器輸出の豊富な経験と豪が重視する現地での雇用の確保のための高い現地生産率をアピールするとともに、欧州のメーカーであれば中国からイチャモンがつく”チャイナリスク”はありませんよと売り込んでいるという。
 
 
豪では親日派のトニー・アボット首相は次期潜水艦計画は中国の脅威に対抗するためにも国内雇用よりも性能を優先する姿勢だったが、昨年9月に行われた与党・自由党の党首選挙に敗れ首相を退任することになり、勝利したマルコム・ターンブル前通信相がオーストラリアの29代首相になることが決まった。


ターンブル氏は内閣就任式の後 「注意深く、バランスの取れた外交が必要だ」と語り次期潜水艦は性能だけでなく国内の雇用問題も大きく判断基準になると窺わせる発言をしている。

又、「中国の台頭が地域の安全保障や調和をかき乱すことがないようにすべきだ」と強調する反面、「広島に原爆が落とされて70年だ。広島と長崎で25万人が亡くなったが、第2次世界大戦では1000万人の中国人が亡くなった」と指摘し、「豪州と中国が対日戦争で同盟国だったことを忘れないことが大切だ」と言明するなど中国の歓心を得ることも忘れていない。
 
 
経済面だけを重視する欧州勢、アジアにあまり傾注したくない米国、不況回復のための雇用重視と中国の海洋侵出に脅威を感じるが中国に睨まれたくない豪。
そして、「そうりゅう」を契機として大型武器輸出の足がかりを作りたいが、豪経由で中国に機密が漏れ「新幹線」の二の舞いを踏みたくない日本。
 
さあ、どうなる。
中国に一矢を報いるか?、中国の巨大市場ひれ伏すか?
今月29日頃最終結論が出るという。
いずれにしても今後のアジアの安全保障に関して大きな変化点になることは事実だ。
 
 
さらに、中国の傲慢で身勝手な行動に国際社会が鉄槌を下すべき事案が5月にもある。
中国の南シナ海における領有権問題でフィリピンが中国を相手取って起こした仲裁手続きについて、常設仲裁裁判所が最終的な裁定を下す予定なのだ。
フィリピンに有利な裁定であれば中国は外交・司法面での強い圧力にさらされる可能性があるのだ。
又、日本が世界初の原子爆弾の被爆地となった広島に「非核化」や「平和」についてのメッセージを伝えるため、世界の首脳を招聘していることに関して、中国は「戦争を起こした国である日本を被害者扱いし、日本の過去の侵略の歴史に免罪符を与えかねない」とかの理屈をこね反対しているが、近く米国オバマ大統領が伊勢サミットのおり広島を訪問するか最終判断がされるとのこと。
 
オバマ大統領の訪問が決まれば強く反対していた中国の面子が潰れ世界に孤立する。
 
南シナ海の問題に関しては別途詳しく調査してみることにしたい。